2014年12月31日水曜日

雷雲から検出されるガンマ線

今回は常温核融合研究と関係がありそうですが、別分野の記事を取り上げます。
Scientific Americanに載った以下の記事によると、雷が起こっている時には、実はX線やγ線も放出されているとのこと。観測機器の精度が上がって来て、どうやら多くの雷で起こっている現象だと分かってきたそうです。水野忠彦博士がグロー放電を使った過剰熱生成の実験を思い出してしまいますね。


この現象についての詳しい解説記事を日経サイエンスからダウンロード購入することができます。


有償の記事なので、以下に二箇所からごく一部を引用します。研究していくと様々な予想外の現象が発見されて、理論仮設の修正が続いているようです。自然界には解明できていない現象がまだまだ多いのですね。興味のある方はご購入ください。
2010年にはノルウェーのベルゲン 大学でデータの再解析が行われ,測定機器の飽和現象による影響を考慮する と,発生源の高度はより低いと考えら れることが明らかになった。結局,地球ガンマ線発生源の推定高度は2年足らずで50km以上も下降した。これほど急激なパラダイムシフトが起こるのは科学の世界では珍しい。
10年前に私たちがこの分野に足を踏み入れた当時,スプライトは大気中で高エネルギーの放射線を発生させる存在として一躍脚光を浴びていた。それが今では雷雲や様々な種類の大気発光,はたまた実験室で起こるスパーク現象まで,ほとんど何もかもが検出可能なレベルのガンマ線を出しているら しいと判明したのに,スプライトがそ の仲間に入っていないというのは皮肉な話だ。スプライトが放射できるエネルギーは低く,地球ガンマ線とは無関係というのが現在の定説になっている。
地球ガンマ線の研究は,雷鳴轟く嵐の中で凧を揚げて雷が放電現象であることを証明したといわれるフランクリ ン(Benjamin Franklin)の仕事を引 き継いでいるといえる。驚いたことに,フランクリンの凧揚げ実験から2世紀半がたった現在でも,雷雲からガンマ 線が出ている原因はおろか,通常の稲妻がどのようにして発生するのかさえ完全にはわかっていない。 
以上

ナノ銀担持骨炭によるヨウ素の除去実験

ナノ銀による放射線低減実験は、主として阿部宣男博士と岩崎信博士によって複数回実施報告が出されています(実験報告へのインデックスはここにあります)。今回紹介するのは、2011年に東京都水道局によって実施されたヨウ素の除去実験です。レポートを見るまでは、「放射性ヨウ素」を対象とした放射線の低減実験だと誤解していたのですが、実態は、非放射性ヨウ素の除去(吸着)実験でした。そして、ナノ銀担持牛骨炭が高いヨウ素除去性能を持っているとの結果が得られていました(但し、ナノ銀や牛骨炭の役割は分かっていません)。

今回、関係者から東京都水道局の出したレポート(以下)を見せていただいたので、私見を含めてまとめてみます。


1. 目的

「ナノ純銀粒子を担持した牛骨炭や御影石のヨウ素の除去性について検証した」とあります。
放射性ヨウ素の放射線の減衰を検証しようとしたのではなく、水道の原水からのヨウ素の「除去性」を検証目的として挙げている点に要注意です。水道局の関心がそこにあったのは当然だと思うのですが、私の期待とは少し違っていました。

2. 予備実験結果

このレポートには、「予備実験」と「本実験」の2つの実験結果が書かれています。
まず予備実験では、浄水場の原水に放射性ヨウ素を加えてヨウ素が減るかどうかを、高周波誘導結合型プラズマ質量分析計で確かめています。ここで、「放射性ヨウ素」を使っているのは以下の2つの理由によると考えます。
  • 実験の観点がヨウ素の除去性の評価にある。
  • 放射性ヨウ素は放射性物質の研究施設でなければ扱えない。
結果は以下の図に示されています。説明文を引用します。
御影石では約15%、牛骨炭では約60%の除去率であった。ナノ純銀粒子を担持させても、その支持体によって除去性が異なることが分かった。牛骨炭で除去率が高かった原因として、フッ素の除去方法である骨炭法と同様に、主にイオン交換により除去されると推測される。

どうやら、ナノ銀の関与は不明ながら、「ナノ銀担持牛骨炭」のヨウ素除去性能が高いようです。ちなみに、「骨炭法」を検索してみると、例えば、「生物系産業廃棄物からの活性炭製造と水処理への応用」といった報告が出てきます。骨炭がフッ素除去に効果があると述べられています。参考までに要旨を引用します。
現在,骨炭の国内での工業的な使用は製糖工場における糖液の脱色に限られているが,海外ではフッ素沈着病の予防法として飲料水中のフッ素除去に使われ始めている.一方,国内では半導体工場等から排出されるフッ素の問題が起きており,今後早急な除去対策が必要であると考えられる.従来のカルシウム沈殿法では新しい法規制値を満足させることが難しいため,フルオロアパタイト (FAP) 生成法に準じた方法として骨炭を選び,作製条件およびフッ素除去に関する検討を行った.
その結果,同一作製条件であっても骨の部位によっては大きな比表面積を持つものが得られ,特に肋骨から作製した骨炭は市販骨炭と同等のフッ素吸着能力を示した.

3. 本実験結果

本実験は、「流水中」での除去性確認を目的としたようです。ここでも、「放射性ヨウ素を定量した」とあります。結局、放射線低減効果については検証されなかったようです。

結果は以下の図に示されています。説明文を引用します。
牛骨炭で約50%、粒状活性炭新炭で約60%の除去率であり、その他の材料の除去率は低かった。牛骨炭は、主にイオン交換によりヨウ素を除去すると考えられることから、イオン交換能がなくなった後は再生処理(1%苛性ソーダ溶液を通水するなど)が効果を持つと見られる。

ここで最も効果の高かった「新炭」が何者なのかを知りたくなります。しかし、報告書本文に「粒状活性炭新炭」という記載がある他は組成についての記述がありません。阿部宣男博士に当時の事情を伺ったところ、詳細は不明ながら、当時水道局が持っていた濾過用の活性炭にナノ銀担持御影石やナノ銀担持牛骨炭を全部混ぜた「全部入り」濾過材だという話を聞いたとのことでした。そうだとすると、ヨウ素除去の主役はナノ銀担持骨炭だった可能性もあります。

4. まとめ

この実験結果について以下のように言えるでしょう。
  • 放射線低減の実験であると期待していたが、そうではなかった(放射性ヨウ素を使っておらず、放射線測定もしていない)。
  • 原水からのヨウ素の除去性を確認するための実験であり、効果を確認できた素材があった。
  • ナノ銀の関与は不明だが、ナノ銀担持牛骨炭はヨウ素の高い除去性を持つ素材のようだ。
放射線低減について分からなかったのは残念ですが、ナノ銀担持牛骨炭がヨウ素除去に役立つと分かったのは大きな成果ではないかと思います。今後、ナノ銀の関与や放射線への効果も含めて、この素材が原発事故時の飲料水の浄化に役立つかどうか検証が進むことを期待します。

以上

MFMPがFrancesco Piantelli博士との協調を発表

12月に発表されたもう一つのコラボレーションは、マーチンフライシュマン記念プロジェクト(MFMP)が著名な常温核融合研究者であるFrancesco Piantelli博士と協力するというものです。クリスマスの日にプロジェクト名 Project /Fedora\ として発表されました(半角の逆スラッシュが文字化けするので全角文字に変更してます)。


Piantelli博士は、ニッケル・水素系の常温核融合研究の先駆者として知られており、Lenr-Canr.orgのライブラリを検索すると多数のレポート・論文がヒットします。

site:lenr-canr.org/acrobat piantelli - Google 検索
https://www.google.co.jp/search?q=site%3Alenr-canr.org%2Facrobat+Piantelli

ニッケル・水素系の技術を使うロッシ氏とは特許取得を競う関係であり、Piantelli博士自身もNickenergy社というベンチャー企業を設立して事業化に取り組むように見えていました(下はNickenergy社の研究発表の様子です)。今回の発表を見ると、Piantelli博士は自分のノウハウをライブ・オープン・サイエンスを掲げるMFMPに伝授しようとしているようで、事業化よりも科学の発展に舵を切り直したのかもしれません。そうだとすれば、たいへん素晴らしいことだと思います。



Piantelli博士は以下のような立派な研究室を持っておられるようで、ここから生み出された常温核融合のノウハウがMFMPで活用されるのが楽しみです。



以上

Open Power AssociationがFrancesco Celani博士との協調を発表

12月に常温核融合研究の領域で大きなコラボレーションの発表が2つありました。
イタリアのUgo Abundo氏が率いるOpen Power AssociationがFrancesco Celani博士との研究協調を発表したのが一つ目です。

公式サイトは ここ にあり、発表文は ここ にあるのですが、イタリア語で書かれていて翻訳がたいへんなので、Cold Fusion Now!に掲載された英語翻訳記事を参照しています。


この発表文には以下のような記載があります(赤字は引用者による)。
In other words, it is as if you were in the presence of a new form / method (apart from the well-known Seebeck effect and / or Thompson) DIRECT CONVERSION from Heat to Electricity. From the point of view of scientific speculation, the role of Hydrogen understood as mono-atomic and / or even proton is a truly challenging idea. Obviously we’re just starting, though recent (December 15, 15:00) results show that the ignition temperature is not 150° C but only (about) 55° C. Some suggestions on the issue of “abnormal current” were provided to Francesco Celani also by some researchers, collaborators Open Power.
Open Power Associationは、2014年3月に以下のような写真を掲載しており、常温核融合装置Hydrobetatronから直接電力を取り出す試みをしているように見えました。上記の記載を見ると、従来からのゼーベック効果に対して何らかの付加ができると考えているようです(これは私の誤読かもしれませんが)。Celani博士が加わったことで研究が加速されると良いですね。



以上


2014年12月29日月曜日

Alexander G. Parkhomov博士のE-Catの独立追試

驚きのクリスマスプレゼントがロシアから届きました。
E-Cat Worldに報じられたところでは、ロシアの物理学者であるAlexander G. Parkhomov博士がE-Catと同じような装置での過剰熱検出に成功したレポートを12月25日に公開しました。過剰熱を検出しており、最大の入出力比(COP)は2.58を記録しています。また、実験の最後に加熱用の電気ヒーターが焼き切れてしまった後、8分間は1200℃程度の温度を保っており、もしかすると常温核融合現象の特長である「死後の熱(heat after death)」発生だったのかもしれません。

Parkhomov博士のリアクターの稼働写真

この追試は以下の点で非常に重要な意味を持つと思います。
  • ロッシ氏のE-Catを使ったのではなく、E-Catの構造を推測して独自にリアクターを作成して追試を行っている。MFMPなど、E-Catの追試を目指している人たちにとって、大きな励みとなる。
  • 実験に使った素材や方法は全て公開されている。ロッシ氏は商用化の権利問題から、実現方法を隠蔽しているため、今回公開された価値は大きい。
  • Parkhomov博士は、常温核融合研究者としては今まで知られていなかった。新たな研究者の参画なのかもしれない。
常温核融合ウォッチャーの間ではこの話題が急速に盛り上がっており、早速、元のロシア語資料を英訳する試みがスタートしました。Parkhomov博士はこの状況を見て、自身で英訳した文書をE-Cat Worldを通じて公開してくれました。とても興味深いレポートなので、私もこれを和訳してみました。PDFで以下に公開しましたので、もし何か問題があればコメント欄ででも教えていただけると幸いです。


以上

祝 30万ページビュー突破

ふとページビュー数を見たら、合計で30万ページビューを超えていました。
弱小ブログを見てくださっている読者の方々に感謝します。
常温核融合が認知され、世界に良い効果をもたらす日まで、倦まず弛まず続けて行きたいと思います。

以上

2014年12月23日火曜日

LENR-Citiesの常温核融合イベントが1月10日~11日に英国オックスフォードで開催

LENR-Citiesという常温核融合ベンチャーが、2015年1月10日~11日に英国のオックスフォードで常温核融合関連のイベントを開催します。



LENR-Citiesは、常温核融合に関するエコシステム構築の場を提供するベンチャーです。多くのベンチャーは常温核融合装置の開発を目指していますが、LENR-Citiesは常温核融合技術を核とした様々な技術・組織との連携に着目しているのです。今回のイベントで興味深いのは、スピーカーとして、エアバス社が参加している事です(以下の図の右端にエアバス社の名前が見えます)。いよいよ、エアバス社も常温核融合技術の重要性に気がついたのでしょうか。


また、注目したいのは、プログラムの中に「Nuclear transmutations & nuclear waste management(核変換と核廃棄物管理)」「Bio-remediation of radionuclied-contaminated waters(放射能汚染水の生物除染)」というテーマがある点です(和訳は引用者による)。これは、LENR-Citiesが、常温核融合のエネルギー源としての活用だけでなく、放射能除染への活用を視野に入れている事を示しています。スピーカーと講義内容に期待しましょう。


以上

Cold Fusion 101が来年1月20日から米国MITで開催される

今年に引き続き、2015年も常温核融合の学習コース「Cold Fusion 101」が米国MITで開催されます。開催期間は2015年1月20日~23日の4日間です。


主催するのは、MITのPeter Hagelstein教授とJET Energy社のMitchell Swartz博士です。Hagelstein教授はとても小型の常温核融合装置NANORを開発した事で有名です(Cold Fusion Now!に掲載されている以下の図は、NANORの過剰熱発生を記録したグラフです)。



昨年のCold Fusioin 101の講義の様子は、Cold Fusion Now!のJeremy Rys氏によってビデオ撮影されており、以下のページで見ることができます。

http://coldfusionnow.org/interviews/2014-cold-fusion-101/


以上




2014年12月16日火曜日

国際常温核融合学会 第19回大会 をイタリア政府が強力に支援

2015年4月にイタリアのパドヴァで開かれる国際常温核融合学会の第19回大会(通称ICCF-19)について、LENR Forumにてイタリア政府が強力に支援するとの発表があったと報じられました。


この件については、E-Cat Worldにも取り上げられており、プログラムのページに貼られた以下のマークが、イタリア政府からのスポンサーシップを示すものだと説明してくれています。


ここに来て、常温核融合の研究を政府が公式に後押しするようになってきました。常温核融合への認知が高まってきた証左だと言えるでしょう。

以上

2014年12月7日日曜日

水野忠彦博士の常温核融合実験の熱量測定検証

Cold Fusion Now!のJCF-15のレポートにも少し触れられていたのですが、水野忠彦博士が開発している常温核融合装置について、その熱量測定の方法を詳細に記したJed Rothwell氏のレポートが公開されました。
http://lenr-canr.org/acrobat/RothwellJreportonmi.pdf

中身を読む能力と気力がないので、写真だけをパラパラと見ただけですが、それだけでも面白いので、興味のある方は是非ご覧ください。例えば、以下のような装置の写真が載っています。
常温核融合を調べるまでは、熱量の正確な測定がこんなにも注意深く行う必要のあるものだとは思ってもいませんでした。奥の深さに驚いてしまいます。


レポートの中にリンクが記載されていますが、測定の生データやグラフもExcelシートとして公開されています。データが公開されるのは、素晴らしいことだと思います。
http://LENR-CANR.org/Mizuno/Mizuno2014-10-16.xlsx
http://LENR-CANR.org/Mizuno/Mizuno2014-10-20.xlsx
http://LENR-CANR.org/Mizuno/Mizuno2014-10-21.xlsx
http://LENR-CANR.org/Mizuno/Mizuno2014-10-22.xlsx
http://LENR-CANR.org/Mizuno/Mizuno2014-10-24.xlsx
http://LENR-CANR.org/Mizuno/Mizuno2014-11-20.xlsx

以上

11月に札幌で開催されたJCF-15のレポート

日本の常温核融合研究会の第15回年会(通称JCF-15)が去る11月1日~2日に札幌で開催されました。プログラムとアブストラクトは既に公開されています。今回の主催者は常温核融合研究者として著名な水野忠彦博士でしたが、共同主催者として、クリーンプラネット社の創設者である吉野英樹氏が名を連ねているのが、昨年までと大きく変わった点でしょう。この会議の様子がCold Fusion Now!にレポートされました。



ちなみに、吉野氏のプロフィールはクリーンプラネット社のホームページに載っています。


吉野氏によると、協調への機運が高まっていて、実証試験の可能性についてのヒントも色々と出てきているそうです。国内では常温核融合はいまだにニセ科学だと扱われる事が多くて残念なのですが、日本はグローバルに見て最も常温核融合研究が盛んな国の一つです。しかし、米国のインダストリアルヒート社が商用化に向けて大規模な投資に乗り出していたり、ビル・ゲイツ氏が常温核融合に投資するのではないかと見られている今日では、研究者の熱意にのみ頼っていたのでは取り残されてしまいます。日本でも早くこの科学技術への認知が進むことを願います。

クリーンプラネット社のギャラリーのページには、今回のJCF-15の写真が掲載されています。和気あいあいとしながらも、厳しい議論が戦わされた感じが伝わってくる写真だと思います。是非ご覧いただければと思います。


以上

2014年12月2日火曜日

岩村康弘博士の元素変換記事がIsotope Newsに掲載される

日本アイソトープ協会の広報誌であるIsotope News〔No.728〕2014年12月号の「展望」というセクションに、元素変換実験で有名な三菱重工業の岩村康弘博士の原稿が載りました。

論文ではなく一般向けの科学記事として、これまでの元素変換実験の結果を5ページに圧縮してまとめてあるので、オススメです。PDFとして無料でダウンロードできます。科学の世界でメジャーな広報誌に常温核融合の肯定的な実験結果が載るのは素晴らしいことだと思います。

http://www.jrias.or.jp/books/cat3/2014/728.html
Isotope News 〔No.728〕2014年12月号目次
展望
ナノ構造金属において重水素透過によって観測される“元素変換”現象について
岩村 康弘
この記事の最後の方で、MITの講演でも報告されていた元素変換反応の収量の格段の増加に触れられています(以下に引用します)。マイクログラムオーダーまで収量は増加しているようで、たいへん素晴らしい進展だと思います。
4 収量増大への取り組み
 これまでの反応収量は通常数ng〜数十ng オーダーに留まっており,実用化のためには,反応収量の増大が必要である。そのため,最近は実用化を目指した,変換量の増大研究に取り組んでいる。実験結果から,以下の要因が変換反応に重要であるという仮説を立てて研究を進めている。
 1)表面の重水素密度
 2)Pd 表面層の電子状態
 1)の重水素密度が高い方場合に変換量が増大することは重水素透過実験から確認できている。ただし,ガス透過法では付加できる圧力には限界があり,収率の飛躍的向上は困難と判断し,以降の重水素透過は電気化学的手法を採用し,等価的に高い重水素圧力を Pd 表面に加えることで重水素密度の向上を図った。図 8 は重水素のガス透過法と電気化学的手法を用いて透過的に重水素を高圧で透過させる手法の比較を示している。両者は重水素を透過させるという意味において同じであるが,表面の重水素密度が異なる。図 9 はこの両者の実験による元素変換反応の収量の違いをまとめたものである。このように従来 ng オーダーであった収量が電気化学的重水素透過法により 2〜3 桁程度増大していることが分かる。
以上



2014年12月1日月曜日

常温核融合時代に向けてリスクヘッジを考えるエネルギー大国ノルウェー

この件が話題になるまで知らなかったのですが、ノルウェーはたいへんエネルギーに恵まれた国で、2012年の「ノルウェーのエネルギー事情」という資料には以下のように特長がまとめられています。
  1. ノルウェーはエネルギーの輸出国。国内エネルギー需要の6~7倍相当分を輸出。
  2. ノルウェーは,世界第2位の天然ガス輸出国,世界第7位の石油輸出国。
    石油・天然ガス生産は,推定可採埋蔵量(約 131億石油換算立方メートル)のうち既に約44%を生産済み。生産は,2020年頃から今世紀半ばに向け減少の見込み。
  3. ノルウェーは世界第6位の水力発電国。発電可能な水資源の約60%を開発済み。電力生産量の約95%は水力発電。
  4. 水力発電以外の再生可能エネルギー生産は限定的であるが,風力の開発を推進,助成。 

各国の輸出に占める石油の割合を解りやすくまとめたサイトにも、中東諸国と並んで、ノルウェーの以下のようなグラフが出てきます。



さて、常温核融合関連の雑誌としては老舗のInfinite Energy誌のサイトに、米国SRIの常温核融合研究者として有名なMcKubre博士のノルウェー訪問記が掲載されました(原文は以下)。
http://www.infinite-energy.com/iemagazine/issue119/norway.html


驚いたことに、ノルウェーから、常温核融合セミナーの発表者の一人としてMcKubre博士を招聘したのです。エネルギー大国のノルウェーは、常温核融合の登場によって、エネルギー産業がどのような影響を被るのかを予想し、リスクヘッジをするために常温核融合の研究チームを起こそうとしているようです。科学者と政府が、たとえ見たくない事実であってもきちんと調査・認識して、未来へ向けての対処を考えていると知って、羨ましく思いました。官民挙げて滅び行く原発にしがみついている日本とはたいへんな違いです。

とても興味深い訪問記でしたので、勝手ながら日本語に意訳してみました。もし、不十分な点に気づかれましたら、遠慮なくご指摘ください。