2014年7月26日土曜日

水野忠彦博士のフェナントレンを使った実験での過剰熱・γ線検出

Jedさんが、日本の水野忠彦博士と大森唯義博士の昔の論文3件をLENR-CANRのライブラリに登録してくれました。
以下のページにアクセスすると、ライブラリへの新着論文が見られます。
http://lenr-canr.org/wordpress/?page_id=1097

1つ目は、最近メーリングリストで話題になっているプロトン伝導体を使って過剰熱を検出したもののようです。尤も、なぜプロトン伝導体が話題になっているのか良く分かっていませんが(笑)。
Mizuno, T., et al.,
Anomalous heat evolution from a solid-state electrolyte under alternating current in high-temperature D2 gas.
Fusion Technol., 1996. 29: p. 385.

Abstract    
A coin-shaped proton conductor made from metal oxides of strontium and cerium can be charged in a hot D2 gas atmosphere to produce excess heat. Anomalous heat evolution was observed from the proton conductors charged with alternating current at 5 to 45 V at temperatures ranging from 400 to 700℃.
The anomalous heat produced temperature increases as much as 50℃. Excess heat was estimated as a few watts in most cases, totaling up to several kilojoules.
2つ目は、大森博士が7日間にわたって電気分解をした時に、電極表面に鉄の発生を検出したというもののようです。
Ohmori, T., et al.,
Transmutation in the electrolysis of lightwater - excess energy and iron production in a gold electrode.
Fusion Technol., 1997. 31: p. 210.

Abstract    
The identification of some reaction products possibly produced during the generation of excess energy is attempted. Electrolysis is performed for 7 days with a constant current intensity of 1 A.
The electrolytes used are Na2SO4, K2SO4, K2CO3, and KOH. After the electrolysis, the elements in the electrode near the surface are analyzed by Auger electron spectroscopy and electron probe microanalysis. In every case, a notable amount of iron atoms in the range of 1.0 x 10^16 to 1.8 x 10^17 atom/cm2 (true area) are detected together with the generation of a certain amount of excess energy evolution. The isotopic abundance of iron atoms, which are 6.5, 77.5, and 14.5% for 54Fe, 56Fe, and 57Fe, respectively, and are obviously different from the natural isotopic abundance, are measured at the top surface of a gold electrode by secondary ion mass spectrometry. The content of 57Fe tends to increase up to 25% in the more inner layers of the electrode.

3つ目は、水野博士によるもので、フェナントレン(化学式C14H10の多環芳香族炭化水素)に水素ガスを高温高圧で接触させると過剰熱とγ線が観測されたというものです。
Mizuno, T.,
Heat and Radiation Generation during Hydrogenation of CH Compound.
J. Environ. Sci. Eng., 2011. 5(8): p. 1017.

Abstract:
Securing new sources of energy has become a major concern, because fossil fuels are expected to be depleted within several decades. In some of the major wars of the 20th century, control of oil was either a proximate cause or a decisive factor in the outcome. Especially in Japan and Germany, a great deal of research was devoted to making liquid fuels from coal. In one such experiment, a large amount of excess heat was observed. The present study was devoted to replicating and controlling that excess heat effect. The reactant is phenanthrene, a heavy oil fraction, which is subjected to high pressure and high heat in the presence of a metal catalyst. This results in the production of excess heat and strong penetrating electromagnetic radiation. After the reaction, an analysis of residual gas reveals a variety of hydrocarbons, but it seems unlikely that these products can explain the excess heat. Most of them form endothermically, and furthermore heat
production reached 60 W. Overall heat production exceeded any conceivable chemical reaction by two orders of magnitude.
この実験での発見は、日本でも一部の雑誌に掲載され(下記)、ICCF-15でも発表されています。殆どの実験では、常温核融合現象を発生させる素材として、パラジウムやニッケル等の水素吸蔵金属が使われています。この実験では、フェナントレンという炭素化合物でも核変換現象と思われる反応が観測されたのが重要です。ICCF-15の発表のあと、どうなったのか気になっていたのですが、論文にまとまっていて良かったです。


以上

東京都知事選でアピールされかかったナノ銀除染

今年5月に発売された『月刊『紙の爆弾』2014年6月号』にナノ銀除染に関して興味深い記事が出ていました。「自民党内「反安倍」勢力、小泉&細川新法人設立 「保守系反原発」に期待すべきか」という題名の記事で、著者は山田厚俊氏です。


政治家の平野貞夫氏がナノ銀による放射線低減効果の研究を支持しており、常温核融合(LENR)を重要視されている事は、これまで何度も表明されてきました。平野貞夫氏は、小沢一郎氏のブレーンとしても知られていますが、細川護煕氏からも信頼されているとのこと。その細川氏が東京都知事選出馬に際して、平野氏に連絡を取ったそうです。そして、平野氏が脱原発の秘策として用意していたのが、実は「ナノ銀除染」だったと記されています。以下、記事より引用します。
実は、細川氏が出馬した都知事選においても、このナノ純銀の除染処理方法は訴えられようとした。その”幻のアピール文”の要旨がある。「東京都に は、福島原発事故問題を解決すべき責任がある。と同時に、その『知恵』を持っている。」と題されたA4用紙二枚に、ナノ純銀の”効果”が記されている。
それによると、東京都は電力の大消費地であり、福島第一原発の電力に依存して豊かな生活を享受することができた”恩恵”がある以上、原発事故に苦しむ人を救済し、諸問題を解決しなければならない責任があると道義的、倫理的な問題提起がはじめに書かれ、ナノ純銀の効果や研究経緯が記されている。
そして、<今後は直接的証拠の確認のために、諸研究機関等での追試・検証が待たれる。>としながらも、<昨年来、『追試』を求めて各方面に働きかけてきたが、政府機関・学会等からは無視され続けている現状がある。><この技術を認めようとしない理由は、「核分裂」に拘る原子力村にとっても「高熱高圧核融合」の研究グループにとっても、【死活問題】となりうる研究><板橋区に住む下村文科大臣は、野党時代には強い関心を示していたが、大臣就任と同時に無関心になった。>と、一刀両断。最後には、<放射能の低減化、無害化を世界に先駆けて『東京』で挑戦し、東京オリンピックまでに『新しい技術』を完成させることが、我々に課せられた新しい使命ではないか。>と締めくくる。
準備不足や選対事務所のゴタゴタにより、表面には出ずに終わったが、この要旨をまとめたのも当然のことながら、平野氏だった。つまり、平野氏は細川氏、小泉氏が掲げる「脱原発」を具現化するための最重要人物だというのである。
東京都知事選でアピールされていたら、研究を進める上で非常に大きな力になっていたであろうと思うと、細川氏陣営の準備不足が残念でなりません。ナノ銀除染以外にも、振動攪拌による核変換現象微生物による放射線低減など、放射性廃棄物や放射能汚染を軽減できるかも知れない様々な技術が提案されています。福島原発災害を引き起こしてしまった日本こそ、常識に囚われず、実験事実を冷静に見て、こういった新たな研究へ取り組むべきだと思います。

以上

2014年7月20日日曜日

日本ウォータージェット学会で小島英夫博士が特別講演

小島英夫博士が主宰されている常温核融合研究所の「CFRL ニュース No. 86 (2014. 07. 01)」が発行されていました。その記事の中で、「日本ウォータージェット学会 2014年度総会」で「常温核融合現象の科学」という演題で小島博士が特別講演を実施されたと知りました。


総会の開催案内から引用します。
開催日 :平成26 年5 月23日(金)10:00~16:30 技術年次報告会および講演会
開催場所 :鹿島技術研究所本館大会議室(地下1階)
〒182-0036 東京都調布市飛田給2-19-1

【特別講演】
14:15~15:15
演題:常温核融合現象の科学
講師:小島 英夫 静岡大学名誉教授
このような形で様々な分野の研究者や技術者に興味を持ってもらえるのはとても良いことだと思います。それにしても、ウォータージェット学会がどのような経緯でこの特別講演を企画したのか興味深いですね。

以上

2014年7月13日日曜日

ナノ銀による放射線低減実験(2)初期の低減実験結果

第51回アイソトープ・放射線 研究発表会では、以下のポスター発表も行われました。
ポスター発表 7月7日(月)11:30 〜 7月8日(火) 11:00
ⅠP-18 4-5nm粒径銀粒子による土壌中セシウム放射線低減現象
−その発見と初期の線量計データを中心に−
(元東京都板橋区ホタル生態環境館)○阿部宜男、
(個人)坂本圭磯、綾部斗清、望月將地、
(東北工大・共通教育セ)岩崎信
このポスター発表では、ナノ銀による放射線低減効果を示す初期の実験結果が紹介されました。以下に発表内容をまとめます。

端緒

発表者の阿部宣男博士は、2011年3月末にナノ銀担持コラーゲン液を板橋区ホタル生態環境館の敷地や土壌に噴霧・滴下した。その結果、残留ガンマ線量がかなりの程度低減した。この結果を受けて、2011年5月から、5つの土壌試料を用いた系統的線量計測を開始した。

系統的線量測定

1)4種の土壌を使った計測結果

  • 測定方法
    4種の土壌を市販のポリエチレン製の円筒容器(外形54mm、高さ35mm)に入れ、初期値を測定後、ナノ銀溶液を噴霧して蓋を閉めて測定開始。その後、毎日、測定を行った。
  • 土壌
    A: ホタル生態環境館の雨樋下で採取した土壌 2011-05-01(2ヶ月間)
    B: 福島県内1 家庭からの採取土壌 2011-07-01(45日間)
    C: 福島県内2 家庭からの採取土壌 2011-08-01(2ヶ月間)
    D: 福島県内3 家庭からの採取土壌 2011-09-01(11日間)
  • 噴霧したナノ銀溶液
    A, B, D: 20 ppm ナノ銀担持コラーゲン液を噴霧
    C: ナノ銀担持タルク水を噴霧
  • 計測環境
    A: 実験机の上で線量計を使用
    B, C, D: 四角く薄い携帯用鉛遮蔽体(下図)
  • 留意点
    この時の実験では、いずれもバックグラウンド放射線(BG)を計測していない。
  • 計測結果
    4土壌の線量値の変化を以下のグラフに示す。概ね指数関数的な減衰である。但し、初期に鋭い減衰が存在する。概ね40日以降はBGレベルの線量となっている。

2)ホタル生態環境館の雨樋下の土壌を使った対照実験

  • 測定方法
    ホタル生態環境館の雨樋下で採取した土壌を18 g と19 g 取り、一方(A')には 20 ppm ナノ銀担持コラーゲン液を噴霧、他方は対照試料とした。
    日立アロカ線量計により、初期値測定後、時間を置いて3回測定した。
  • 測定器
    日立アロカ線量計
  • 測定結果
    以下のグラフに示す。初期に鋭い減衰が見られる。

補足(使用されているナノ銀)

この実験で使用されているナノ銀担持コラーゲン液とナノ銀担持タルク(パウダー)は、UFS-REFINE株式会社が提供しているものです。ナノ銀担持コラーゲン液については、原液を純水で希釈して20 ppm等の濃度のものを作っているとの事です。
以下はUFS-REFINE株式会社にホームページに載っている製品の紹介です。いずれも、この会社の特許技術で作った4ナノメートルから5ナノメートルのナノ銀を担持させているのが特長です(一般に売られている他社の製品では10ナノメートル以上のものが多いようです)。




発表資料の中の写真では、ナノ銀を担持させたコラーゲン液(左)と、ただのコラーゲン液(右)の色の違いを示されていました。
以上

2014年7月8日火曜日

ナノ銀による放射線低減実験(1)カリウム40への適用

第51回アイソトープ・放射線 研究発表会が東大弥生講堂および教室を使って開催されました。プログラムは ここ に、正誤表は ここ に掲載されています。


この中で、ナノ銀による放射線低減実験についての口頭発表とポスター発表が行われました(発表者はそれぞれ岩崎信博士と阿部宣男博士)。

口頭発表 7月7日(月)
放射線効果(1) 10:00〜11:00 
座長 鷲尾方一(早大・理工研)
1a-III-01 4-5nm銀粒子の土壌中の134Csと137Csおよび加理肥料中の40K放射能低減効果(東北工大・共通教育セ)○岩崎信、
(元東京都板橋区ホタル生態環境館)阿部宜男、
(個人)坂本圭磯、綾部斗清、望月將地
⇒ 口頭発表の様子は、ツイキャスの動画で見る事ができます。

ポスター発表 7月7日(月)11:30 〜 7月8日(火) 11:00
ⅠP-18 4-5nm粒径銀粒子による土壌中セシウム放射線低減現象 −その発見と初期の線量計データを中心に−(元東京都板橋区ホタル生態環境館)○阿部宜男、
(個人)坂本圭磯、綾部斗清、望月將地、
(東北工大・共通教育セ)岩崎信

興味深い内容が盛りだくさんなので、何回かに分けて報告しようと思います。

これまでも、放射性セシウムを含む土壌に対してナノ銀を混ぜると、土壌の放射線強度が低下したという実験結果が発表されていました。今回の発表では、その具体的な実験方法やこれまでの経緯が説明された他、放射性カリウム(40K)に対してもナノ銀による放射線低減現象が起こった事が報告されました。

この結果は以下の点で非常に重要だと思います。
  • ナノ銀による放射線低減効果が、放射性セシウム以外の放射性物質(40K)に対しても有効である事が示された。
    従来の実験で、セシウム134とセシウム137の両方に対して低減効果がある事が分かっていたので、他の放射性物質に対しても効果があるのではないかと思われていましたが、少なくとも40Kに対して効果があると判明しました。
  • 実験に使用された試料は誰でも購入できるカリウム肥料。使用しているナノ銀もUFS-REFINE社で販売されている。そのため、両者を組み合わせた今回の実験の追試はかなり容易になると期待できる。
予稿集から読み取れる実験の要点部分は以下の通りです。
  • 40Kは天然に存在する放射性物質で、存在比0.01%、T1/2=12億年。
  • 用いているスペクトロメータ(クリアパルス社A2702)の有感体積が小さいため、測定には大量のカリウムが必須。そのため、U9標準容器にカリウム肥料を目一杯(76.7g)入れたものを試料とした。
  • 鉛遮蔽箱の底に上記検出器を平らに置き上に試料を直接置く配置(「表」)と、試料を底に置き試料容器の蓋の上に検出器を伏せて置く配置(「裏」)の二測定を一組とし(各12時間)、これらの平均値を求めた。
  • 実験は2013年2月12日にシリーズIを開始。
    初期値測定後、容器を開けて中を確認し、カリウムをバットに一旦戻し、ナノ銀担持タルク粉300ppm 5gを均一に混ぜ、更にナノ銀担持コラーゲン液160 ppm 10ccを注入。全体を丁寧に混ぜたあと容器に詰め、テープで蓋の併せ目部分を封じ,ナノ銀滴下後一連の測定を8月9日まで8回実施。
  • この間バックグラウンド(BG)を何度も測定(各12時間)。
  • 内2回で「裏」測定が抜けたので6回の結果を示す。
    [(40Kの光電ピーク領域の総計数)-(同領域のBG) ]値の「表/裏」平均値の初期値に対する相対値:
    初期値 2月13日表/14日裏 1.00;
    15日/16日 0.83; 
    17日/18日 0.87; 
    4月8日/ 9日 0.81; 
    5月5日/6日 0.79; 
    6月27日/27日 0.80; 
    7月24日/25日 0.77; 
    8月9日/9日 0.80
  • 上記の通り、この期間で約20%の減衰率となった
  • なお、「表/裏」差を考慮した各平均値の不確かさの大きさは概ね3%~12%(内統計的変動は2.5%弱)と推定された。  
  • 9月10日に上記の試料を開封し中を点検して試料の中間部に注射器でナノ銀コラーゲン液20ppm 5ccを追加注入し、容器を封じて一日経過してからシリーズⅡを開始し、今も継続中。似た結果を得ている。
カリウムにナノ銀(を担持したコラーゲン液とタルク)を混ぜただけで、放射線の強度が20%もの減衰を示しています。仕組みは未解明ですが、何らかの核変換を想定せざるを得ないのではないかと思います。これからの除染や核廃棄物処理にとって極めて重要な結果であり、是非、様々な科学者の追試をお願いしたいと思います。

以上