2012年3月18日日曜日

常温核融合技術が次世代のエネルギーを作る

福島原発の事故をうけ、もはや原発はすべて廃炉にするしかないでしょう。今の政府や電力会社に原発を安全に運用できる技量がないと示されたのですからやむを得ません。
問題は、原発をなくした後、代替となるエネルギー源をどう確保できるかです。しかし、3〜4年先を考えれば、この問題に対する答えは明らかです〜常温核融合技術がその答えです。

常温核融合は少量の燃料(水素やニッケル)から多量のエネルギーを取り出せます。この性質は、従来の原子力(核分裂・核融合)と同じですが、有害な核廃棄物や中性子線は発生せず、発熱モジュールを小型化できる点が今までとは全く異なります。常温核融合技術の登場で、エネルギーコストが従来の十分の一以下に下がり、どの国でも燃料を得られる状態になれば、我々の世界は今とは全く違ったものになるでしょう。

日本にとって問題なのは常温核融合が認知されるまでのこの1〜2年だと思います。常温核融合が認知されれば、それだけで原油の価格は下がるでしょう。なぜなら、誰も石油の枯渇を心配しなくなり、いずれE-Catと同程度のコスト競争力を持つ価格に下がると購買者が期待するからです。一日でも早い認知拡大が日本の国益にもかなうのではないでしょうか。

常温核融合は、今では、低エネルギー核反応(LENR: Low Energy Nuclear Reactions)や凝集系核科学(Condensed Matter Nuclear Science)と呼ばれています。
1989年に、マーティン・フライシュマン博士とスタンレー・ポンズ博士が、この現象を発見したと発表しましたが、追試の失敗が続いたことから発見は間違いだったというの­が一般的な見解となりました。
しかし、この不思議な現象に魅せられた一部の科学者(日本・米国・イタリア・ロシア等)は研究を続け、実験の再現性や理論仮説の精度を高めてきました。今日では3000本­以上の論文・レポート等が集積され、 研究者の間では「常温核融合現象に定性的な再現性はある」とされています。日本でも高橋亮人博士、小島英夫博士、水野忠彦博士、荒田吉明博士、北村晃博士など著名な研究者が活躍されて­おり、工学社から書籍も発刊されています。

とはいえ、2010年末までは、まだまだ実験室レベルで再現性を検証している状況でした。ところが、2011年1月に米国在住のイタリア人エンジニアであるアンドレア・ロッシ氏が、ニッケルと水素を反応させる常温核融合装置「E-Cat」のデモをイタリアのボローニャ大学で行­ったことで状況は大きく変わりました。これは数キロワット以上の熱を発生できる「実用的な」常温核融合装置だったのです。

ロッシ氏は、2012年末には家庭用のヒーターとして商用化し、大量に販売すると宣言しています。ギリシアでは、当初ロッシ氏と提携していたデフカリオン社が同じ方式に基づくと思われるHyperionという名前の常温核融合装置を商用化しようとしています。他にもライバル企業が現れる兆しも出てきています。

ECATの公式ホームページである http://ecat.com/ に今冬発売開始予定のECAT Homeの開発状況が公開されています。少し抜粋して紹介します。
http://ecat.com/news/andrea-rossi-ecat-march-update

  • ロッシ氏は家庭用のECAT Homeを新しいデザインで再設計しており、大きさは33cm x 33cm x 6cmで縦置きも横置きも可能。重量は10 kg。
  • ECAT Homeは、2つの単純な接続インターフェースを持っている:水の入力と出力だ。入力エネルギー(電力)の6倍のエネルギー(熱)を取り出せる。
  • 法律に従い購入者は満足しなければ60日間は返品できる。レオナルド社は法律で要求される保証を提供する。
  • 建設中の新工場の生産能力は、年間100万台である。
  • 水素のための容器は不要になった。安全上の理由から水素は固形材の中に格納される。
  • UL認証を取得中。
  • 放射線はECATの外部では検出されていない。
  • ECATの販売ライセンスは既にライセンシーに提供されているが、まだ公開していない。いずれライセンシーの全ネットワークを公開する予定。

また、E-Catは1MWの熱を発生するプラントを既に商品化して、昨年11月末に初出荷しています(ロッシ氏によると)。このプラントは52台の小型E-Catを1台のコンテナに集積したもので、その写真が以下に公開されています。既に軍事関係の顧客から10台以上の追加注文を受けていると言われています。
http://ecat.com/ecat-products/ecat-1-mw



ギリシアのデフカリオン社は、より詳しい情報を提供しています。以下がHyperionのプレ商用版のデータシートで、昨年11月にデフカリオン社のホームページに公開されました。
http://www.defkalion-energy.com/files/HyperionSpecsSheetNovember2011.pdf
HYPERION KW SERIES SPECIFICATION DATA SHEET- PRELIMINARY

以下、このスペック表からの抜粋です。1モジュールで5kWの発熱を行い、温度は185〜285度。効率は25倍以上で、燃料交換は半年に一回といった大まかな仕様が読み取れます。
Thermal source: Chemically Assisted Low Energy Nuclear Reaction (CALENuR) Ni-H
Thermal power (measured at external heat exchanger outlet)

  • Range: 5-11kW
  • Max Output temperatures (measured at external heat 
  • exchanger outlet) 
  • Series A: 285度
  • Series C: 185度
  • Hyperion Weight ≈19,5 kg
  • Maximum electric energy consumption per hour at ON 
  • mode <200Wh
  • Hydrogen can recharge every 6 months
  • Powders renewal every 6 months
  • COP Better than 1:25


残念ながら、Hyperionについては、まだ公開実験や第三者検証が実施されたことがありません。要は実働することが証明されていないのです。これに対して、デフカリオン社は去る1月23日に第三者検証者を公募すると発表しました。プレスリリースは以下にあります。
http://www.defkalion-energy.com/files/2012-01-23_Independent_Testing_on_Hyperion_Reactors.pdf

この後、Pure Energy Systems NetworkをやっているSterling Allanさんのデフカリオン社訪問記事が掲載されました。
http://pesn.com/2012/02/13/9602039_Hope_from_Athens_found_in_Cold_Fusion/

この記事でデフカリオン社の言葉を伝えているのですが、それによると、先ほどの第三者検証では少なくとも7つの組織が検証を予定しているとのこと。最初の18社とのライセンス契約を近々発表予定で、ライセンスコストは40.5Mユーロ(約40億円)だとも言っています。ライセンス契約を結んだ会社は年間30万台のユニットを生産する工場を設立する所が多いそうです。
更に、デフカリオン社はこの第三者検証を2月24日から開始し、一番手はギリシア政府とも言っていました。その後、とてもポジティブな結果を得たとの速報が2月28日にフォーラムに投稿されました。
http://www.e-catworld.com/2012/02/defkalion-reports-successful-conclusion-of-tests-with-government-officials/

残念ながら、その後、デフカリオン社はフォーラムでの情報発信をやめ、正式な広報のみにすると宣言。他のグループによる第三者検証が続いている筈ですが、残念ながら、その後の情報は得られていません。

デフカリオン社の言葉を信じるならば、この強烈なコストパフォーマンスを持った発熱装置の生産ラインが世界中に揃いつつあることになります。


常温核融合が実現されれば、我々の社会や生活に大きな変革が訪れます。本当に変革は始まるのか否か、認識を深めたいと思う方は是非調べてみてください。

【参考文献】
http://www.lenr-canr.org/BookBlurb.htm
http://lenr-canr.org/acrobat/RothwellJmiraiokizu.pdf
未来を築く常温核融合
Jed Rothwell著
常温核融合関連論文の図書館とも言うべき http://www.lenr-canr.org/ を管理されているJed Rothwellさんによる常温核融合の解説書です。常温核融合を知る上では必読書といえるでしょう。


http://jcfrs.org/file/CFfrontier2011.pdf
常温核融合フロンティア 2011
高橋 亮人(大阪大学名誉教授、(株)テクノバ)著
常温核融合研究全体の最新状況を専門的に解説した本です。非常に専門的で難しい内容ですが、素人にも雰囲気は味わえるかと思います。

http://www.youtube.com/watch?v=-j2dLk4g5ZY&cc_load_policy=1
常温核融合がもたらす5つの利点を簡潔にまとめた動画に日本語字幕をつけました。科学技術の話題よりも、その社会的な影響に重点があります。

http://www.facebook.com/groups/209258969132018/
Facebookの「常温核融合グループ」です。素人が集まって議論していますので、興味のある方は是非ご参加ください。



以上

Cold Fusion Five −世界を変える常温核融合の5つの利点−

仕事が忙しくて前回の投稿から2ヶ月以上がたってしまいました。この間にも常温核融合関連のニュースは色々と報じられており、一部については、Facebookの常温核融合グループでピックアップされていますので、興味のある方はどうぞご参加ください。

さて、「世界を変革する常温核融合の5つの利点」でご紹介したCold Fusion Now作成の常温核融合紹介ビデオCold Fusion Fiveに日本語の字幕をつけてみました。以下から再生できますので、一度ご覧いただければと思います。
YouTubeの動画に字幕をつけるには、字幕の現れるタイミングとテキストを記述したファイルをアップロードするだけです。作者のRubyさんに許可を取り、元の動画をダウンロードして、それを私の動画として投稿し、以下のファイルをアップロードしました。このファイルの作成には結構手間がかかりますが、Universal Subtitlesというページで提供されている字幕作成ツールを使いました(作成した字幕をファイルとしてダウンロードできます)。


■字幕ファイル開始

0:00:01.312,0:00:04.135
コールドフュージョン(常温核融合)ファイブ

0:00:04.320,0:00:07.942
世界を変える常温核融合の5つの利点

0:00:08.695,0:00:11.027
新しいタイプのエネルギーが

0:00:11.150,0:00:15.813
基礎研究から実用技術へと飛び立とうとしています

0:00:17.367,0:00:18.312
安全で

0:00:18.481,0:00:19.350
クリーンで

0:00:19.535,0:00:22.529
地球上の全ての人々にとって

0:00:23.021,0:00:25.150
平和に持続して生活していく

0:00:25.355,0:00:28.155
第二のチャンスを提供します

0:00:29.126,0:00:31.488
常温核融合の始まりは

0:00:31.580,0:00:33.803
フライシュマン博士とポンズ博士が

0:00:33.880,0:00:35.419
発表を行った1989年でした

0:00:35.659,0:00:37.712
その後も研究は続き

0:00:37.712,0:00:39.920
水素を使う入手容易な

0:00:39.920,0:00:42.232
エネルギー源となりました

0:00:42.686,0:00:45.671
この技術はなぜ革命的なのでしょうか?

0:00:45.809,0:00:50.218
常温核融合(冷たい核融合)が再び熱くなっています

0:00:51.018,0:00:54.554
#1 常温核融合は非常にクリーンです

0:00:54.554,0:01:00.140
危険な放射性物質は使われません

0:01:00.140,0:01:08.219
現在の危険な原発は放射性物質を使って

0:01:08.219,0:01:12.171
蒸気を作っているのです

0:01:12.171,0:01:15.075
クリーンな常温核融合技術で

0:01:15.075,0:01:18.483
これを安全な発電へと置き換えられます

0:01:18.483,0:01:24.085
常温核融合のもう一つの効果は核種の変換です

0:01:26.546,0:01:30.337
研究が進めば、何千トンもの核廃棄物を

0:01:30.506,0:01:37.053
安全な物質へ変換する技術に繋がるかもしれません

0:01:37.576,0:01:40.613
燃料となる水素は

0:01:40.613,0:01:44.165
化石燃料のような二酸化炭素を発生しません

0:01:44.919,0:01:48.671
常温核融合の反応は金属の表面で起こり

0:01:48.912,0:01:51.889
その金属は回収できます

0:01:52.395,0:01:59.137
金属は必要ですが採鉱は管理できます

0:01:59.722,0:02:05.441
#2 燃料が豊富にある

0:02:05.441,0:02:08.314
水素は宇宙の中で最も豊富な元素です

0:02:08.314,0:02:13.869
星間物質の75%は水素なのです

0:02:14.315,0:02:19.464
水素は宇宙でも絶え間なく供給される

0:02:19.464,0:02:24.182
無限のリソースです

0:02:24.890,0:02:31.110
水素は気体や液体として利用されます

0:02:31.248,0:02:44.050
僅かな水素で数千年分の燃料を賄えます

0:02:44.050,0:02:47.192
常温核融合は金属を使います

0:02:47.192,0:02:50.898
ニッケル、パラジウム、プラチナなどです

0:02:50.898,0:02:55.295
ニッケルは地球上で5番目に多い元素です

0:02:55.295,0:03:00.327
これらの金属は月や小惑星や

0:03:00.327,0:03:03.180
他の天体でも見つかっています

0:03:03.180,0:03:06.495
火星探査機オポチュニティの側には

0:03:06.495,0:03:12.495
鉄やニッケルからなる岩石がありました

0:03:13.325,0:03:17.658
#3 高いエネルギー密度

0:03:17.658,0:03:21.851
ほんの少量の燃料が

0:03:21.851,0:03:23.961
多量のエネルギーを生み出します

0:03:24.453,0:03:27.777
水素の核融合現象は同じ量のガソリンの

0:03:27.777,0:03:36.278
35万倍のエネルギーを生み出します

0:03:38.401,0:03:41.182
常温核融合の最初の商用装置は

0:03:41.182,0:03:43.723
ニッケルと水素を使って

0:03:43.723,0:03:46.379
テーブルの上に乗る位の大きさで

0:03:46.549,0:03:50.917
数百ドルで製造できます

0:03:50.917,0:03:54.462
100グラム程度のニッケルパウダーが

0:03:54.462,0:04:01.169
6ヶ月以上も10kWの熱を発生し続けます

0:04:01.169,0:04:06.036
しかも9割以上のニッケルパウダーは

0:04:06.328,0:04:09.248
また再利用できます

0:04:09.295,0:04:14.857
#4 新エネルギーが生み出す新しい経済パラダイム

0:04:15.057,0:04:17.981
常温核融合技術は革命的で

0:04:18.165,0:04:21.484
「新しい火」と呼ぶにふさわしい

0:04:21.668,0:04:25.614
最初の商用装置はほんの手始めに過ぎません

0:04:25.968,0:04:33.543
効率の向上や応用の機会が広がるでしょう

0:04:33.543,0:04:36.702
蒸気を使って発電機もできるでしょう

0:04:36.702,0:04:39.379
新しいタイプのエンジンが作られ

0:04:39.379,0:04:42.366
地上や空や宇宙の輸送に用いられるでしょう

0:04:42.366,0:04:46.600
電力源を小さくできるので

0:04:46.600,0:04:51.434
様々な個人用デジタル機器が開発されるでしょう

0:04:51.434,0:04:54.666
これによって新しい仕事と

0:04:54.666,0:04:57.050
新しい役割が生み出されるでしょう

0:04:57.050,0:04:59.135
常温核融合関連の研究、開発、

0:04:59.135,0:05:03.694
デザイン、工業化は

0:05:03.694,0:05:06.470
社会のあらゆる階層の人たちの

0:05:06.470,0:05:08.463
参画を必要とするでしょう

0:05:09.540,0:05:13.817
電力コストが今日の何分の一かに減少したら

0:05:13.817,0:05:16.726
人々は新しい生き方を

0:05:16.726,0:05:20.750
模索し始めるかもしれません

0:05:21.073,0:05:26.638
#5 常温核融合はコミュニティを元気にする

0:05:27.330,0:05:30.182
エネルギー源が水素になれば

0:05:30.182,0:05:33.728
水と同じように簡単に入手できます

0:05:33.728,0:05:37.866
化石燃料を独占する国や組織から

0:05:37.866,0:05:41.184
権力は去っていきます

0:05:41.184,0:05:44.261
資源の偏在による争いは

0:05:44.261,0:05:47.341
過去の笑い話となるでしょう

0:05:47.895,0:05:52.788
「新しい火」は送電網を必要としません

0:05:53.234,0:05:57.941
地域のコミュニティはエネルギー選択の自由を得て

0:05:57.941,0:05:59.747
ずっと自律的になるでしょう

0:06:00.432,0:06:03.268
エネルギー会社に依存する必要性は

0:06:03.268,0:06:05.038
個人にとってもなくなります

0:06:05.796,0:06:07.758
クリーンな飲料水

0:06:07.758,0:06:11.364
廃棄物の安価なリサイクル

0:06:11.364,0:06:13.659
低コストな輸送

0:06:13.659,0:06:18.295
水力発電ダムの除去

0:06:18.449,0:06:23.242
河川や森や野生の回復

0:06:23.242,0:06:25.711
すべて可能になります

0:06:25.711,0:06:27.688
これらは常温核融合技術がもたらす

0:06:27.703,0:06:29.726
恩恵のほんの一例に過ぎません

0:06:29.986,0:06:32.425
もっと常温核融合を学びましょう

0:06:32.456,0:06:36.850
そしてあなたがエネルギー源を選んでください

0:06:36.942,0:06:39.880
それから語り始めましょう

0:06:39.880,0:06:41.656
政治家に言うのです

0:06:41.656,0:06:45.995
私は常温核融合をエネルギー源に選ぶのだと

0:06:47.675,0:06:50.528
制作とナレーション:Ruby Carat、編集:Eli Elliott

0:06:50.678,0:06:53.437
音楽:Fog Action  Steve Craigに謝意を表します

0:06:53.621,0:06:58.587
和訳:浅学俊郎 協力:Facebook常温核融合グループ
■字幕ファイル終了


以上