国家プロジェクトとも言うべき原子力発電に対して、これほどまでに危機管理能力が無いことが分かった以上、原発は廃止すべきです。今のまま運用を続ければ、また重大な事故が起こるのは目に見えています。
しかし、脱原発のデモや市民運動が高まっても、実際にそうするのは難しいのが現実でしょう。事故原因の究明や責任者の処分が済まない内に、休止中の原発を再稼働させ、従来通りの原発推進をしていこうという動きが出てきています。この原因をネットゲリラさんが見事に喝破しています。
■引用開始(赤字は引用者)
大事なコトなので何度でも書くんだが、「原子力」とか「流域下水道」とかいう巨大なシステムを作って国民を中央集権的に管理する事で、役人とか政治家というのは自分の「仕事」というか「縄張り」を形成してきたわけだ。そういう集中型の施設でないと、お上が管理しきれない。あちこちで勝手に発電したり、下水処理されては、役人の出番も税金の出番もない。
でも、問題は、消費者にとって安いとか高いとか、そういう事じゃない。個人の屋根のうえで発電されたんでは、税金も取れないし、天下りも出来ないw 今までは、電気は東電経由で役人や政治家のフトコロを潤し、それにガソリン代で税金取りまくっていたのが、みんなパーです。自分ちの屋根のうえで発電した電気で電気自動車動かされては、ガソリンで取っていた膨大な税金も取れないし、これ以上太陽光発電のコストが安くなれば、都会でマンションに住んでいる人以外はみんな、生活にかかるエネルギー・コストが途方もなく安くなる。
■引用終了
上記の指摘は本質を衝いていると思います。しかし、そういう本質があるにしても、原発には、夢のエネルギーとして推進されてきた表向きの理由がちゃんとあります。発電費用の安さと安全性です。
前者については、原発の1 キロワット時(kWh)あたりの費用は、火力の半分以下であり、水力と比べても安いと算出されています(※1参照)。廃炉までの放射性物質の処理費用や事故処理費用を考慮していないという批判があり、実際にはもっと多額の費用がかかるでしょう。しかし、そういった負の側面を勘定しなければ費用は他の発電方式に比べて安いのです。
後者の安全性についても、原料の採掘から始まる電力供給のライフサイクル全体で見ると、テラワット時当たりの死傷者数は桁違いに原子力が小さいという試算があります(※2)。これも、チェルノブイリや今回の事故によってもたらされた被害を参入すれば、こんなに小さくて済む筈はないと思います。しかし、逆に、原料となる石炭や石油を大量に採掘・輸送しなければならない火力発電が多数の犠牲の上に成り立っているのも厳しい現実です。費用の問題を別にして、脱原発で火力発電量を増やすのも手放しでは喜べないのです。
また、代替エネルギーとして期待される風力発電や太陽光発電にも、供給が安定しないとか、発電できる場所が限られるといった課題があり、急速な置換えは難しいだろうと思います。
しかし、常温核融合技術による発電によって事情は一変します。なぜなら、発電費用が他の方式に比べて圧倒的に安く、しかも安全性も高いからです。(※3)
E-Catの発電費用は、1キロワット時当たり1セント(約1円)と主張されており、これは、安いと言われる原子力発電の5分の1の価格です。今のE-Catが本当にこれだけの低価格を実現できるのかについて、まだ信頼できる根拠は出ていません。しかし、以下のHank Mills氏の記事が示すように、原材料はニッケルパウダーの加工品、秘密の触媒と水素です。加工と触媒にかかる費用も原材料費の10%以下と言われており、いずれ安い価格に落ちていくのは確実だと思います。ちなみに、核反応は化学反応よりも、質量あたりの発生エネルギーが10万~100万倍大きいので、火力発電等に比べると、まさに「桁違い」に効率が良く、原材料が少なくて済むのです。(これは原発の発電費用が小さくなる要因でもあります)
さらに、E-Catに用いられた技術は非常に安全です。簡単に遮蔽できる程度のガンマ線しか観測されておらず、放射性廃棄物も出ません。石炭・石油のような煤煙も発生しません。原材料の量も少ないので、石炭・石油の採掘・輸送のような危険な作業も少なくて済みます。
これだけ見ても常温核融合による発電の優位は明らかです。そして、もう一つ、決定的な要素があります。E-Catのように「小型化できる」、という事です。E-Catのモジュールは、下の写真のように人間が手で持てるほどの大きさです。これを並列に沢山並べることで、大容量のエネルギーを発生させようとしています。
ネットゲリラさんが指摘されているように、従来、発電事業は膨大なインフラ(発電設備・送電網など)を必要とするために、一部の(準)公共企業に独占されてきました。しかし、常温核融合発電が実用化すれば、今のコジェネレーションシステムのような形で、地域や企業といった単位で小さな発電所を運営できるようになっていくと思います。
この世界では、もはや東電のような巨大企業は不必要です。電力の「中央集権」は崩壊していくでしょう。インドや中国のように、人口に比して電力インフラが整っていない国々では、各家庭が小さな発電機を持つようになるかもしれません。下の写真はホンダのエネポですが、この中身が常温核融合発電装置になれば、半年間燃料交換不要で発電を続け、燃料費も激安という製品が実用化されるのではないでしょうか。
長々と書いてきましたが、常温核融合技術は、世界のエネルギーインフラを変えます。
普及が進めば、世界中の原発は自然に停止に追い込まれるでしょう。理由は簡単です。利用者は安くて安全なものを求めるという単純な経済原則に従ってそうなるのです。
日本のみなさん、早く、この革命的な技術と、その意味に気がついてください。この技術によって、危険な原発も、馬鹿馬鹿しい電力利権も葬ることができるのです。
最後に、PES Networkに載っていた「Hitler Panics Over Rossi's Energy Catalyzer」というパロディ動画を紹介します。これは、「ヒトラー 最後の12日間」という名作映画の中で追い込まれたヒトラーが激昂するシーンに、E-Catに追い込まれている既存エネルギー産業という想定のセリフを英語字幕でかぶせたものです。元のシーンは深刻なのですが、このパロディは思わず笑ってしまいます。私が一番笑ったのは、以下のセリフです。
Woman comforting crying girl - "Don't worry, you still have time to sell your shares in Exxon-Mobile..."
(泣いている女性を慰める・・・「心配しないで。まだあなたのエクソンモービルの株を売る時間はあるわよ」)
【※1】発電方式別の発電コストの比較
【※2】発電方式別の死者数の比較
安全性については、実は原子力が最も人命の犠牲が少ないと見られている事が、「金融日記」というブログに指摘されています。今回の福島原発事故のような大規模災害の長期被害を参入すると、原子力の犠牲者数は跳ね上がる可能性があると思いますが、かといって、他の発電方式の犠牲者数が下がる訳ではありません。
■引用開始
火力や水力と比べて原子力ははるかに人命の犠牲が少ない発電方法で、そのことはエネルギー政策担当者の間では常識なんですけど、知らない人が意外と多いようなので今日は各エネルギー源でどれぐらいの人が死ぬのかを簡単に計算したいと思います。実は原子力は、風力やソーラーよりも死ななければいけない人の数が少ないんです。
■引用終了
この「テラワット時当たりの死傷者数」については、以下のサイトにデータが載っています。
ちなみに、世界のエネルギー供給量の内訳を見ると、実は圧倒的に石油・石炭・天然ガスが多く、原子力はわずか6%に過ぎません。
金融日記:原子力で命を守りたい via kwout
【※3】常温核融合と他のエネルギー源の比較
Jed Rothwell氏の「未来を築く常温核融合」からの引用です。