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プロホロフ一般物理研究所マクロキネティクス非平衡プロセス実験所のゲオルギー・シャフェエフ所長率いる同研究所のチームは最近、一部の放射性元素は、特殊溶液中でレーザーに露光すると、すばやくかつ簡単に中性化することを発見。つまり、特定の化学的環境...
Posted by ロシアNOW on 2015年7月16日
この記事は、おそらく、「Shafeev博士のレーザー照射による半減期短縮実験(セシウム137)」で紹介した論文に示された実験を取り上げています。セシウム137塩の水溶液の中で、金のナノ粒子を標的にして、波長510.6nmと578.2nm、パルス幅15nsのレーザを2時間照射したら、セシウム137の放射線強度が70%削減された、というものです。
ロシアNOWの記事は、若干日本語として意味が通じにくい部分があります。特に気になった点は以下の通りです。
- 「放射能を中和」: 「放射性物質を無害化」と書いた方が良かったと思います。「中和」とは全く別の事象なので。
- 「一部の放射性元素は、特殊溶液中でレーザーに露光すると、すばやくかつ簡単に中性化することが判明した」: これも「中性化」ではなく、「無害化」または「非放射性元素へと変換できることが判明した」と書いた方が良かったと思います。
- 「中性バリウム」: おそらく非放射性のバリウムのことだと思います。セシウム137は、ベータ線とガンマ線を出して、バリウム137に変化します。
- 「物質の減衰速度は化学的環境すなわちその原子の外殻電子に依存する。ナノ粒子が局所的にレーザー電磁場を強化できるおかげで、我々が電子配置を変えられることは明らか」: これは意味が分かりません。「局所的にレーザー電磁場を強化できる」は、おそらく局在表面プラズモン共鳴を言ってるのだと予想しますが、他の主張が良く分かりません。
- 「土壌へのレーザー浸透力はマイクロメーターで測定されるため、これを使ってチェルノブイリなどの陸上で放射線を中和させることはなかなかできないだろう。」: おそらく、「土壌へのレーザーの浸透力はマイクロメーターレベルに限定されるので、これで陸上の放射能を低減させることは難しいだろう」と言いたかったのだと思います。
今回の記事には、以下のような私が理解していなかった(知らなかった)話が幾つか書いてあり、たいへん興味深く読みました。
- 「ゲオルギー・シャフェエフ所長」
⇒ Shafeev博士を「シャフェエフ博士」と読めば良いことが分かって助かりました。 - 「発見は実験所でレーザー照射によるナノ粒子生成の実験が行われていた時に、偶然起こった。溶液中の金属から、ナノ粒子は文字通り叩き出される。研究者はさまざまな金属と溶液で実験した。研究チームが放射性トリウム232の溶液中に金を浸したところ、溶液はナノ粒子の生成とともに、放射線を放出しなくなった。」
⇒ この現象を発見した経緯が明らかにされています。どうやら、金属のナノ粒子を生成する実験をしていた時に、たまたま放射性物質の溶液を使った際に、放射線低減が起こったのがキッカケのようです。 - 「福島原発事故で知られているセシウム137の半減期は30年だが、整えられた条件のもとでは、1時間以内に中性バリウムに変わる。」
⇒ 論文には、セシウム137の放射線が低減した後の元素分析結果は書かれていなかったと思うのですが、どうやら非放射性のバリウムが検出されているようですね。 - 「シャフェエフ所長のチームは現在、ドゥブナ合同原子核研究所の結果検証を待っている。超高純度ゲルマニウムをベースにした敏感型ガンマ線スペクトロメータを物理学実験所に持ち込む。これによって、プロセスをリアルタイムで観察できるようになる。対照実験はセシウム137で行われる。」
⇒ これは重要なニュースでした。現状、Shafeev博士のチーム以外での追試は出ていないと思いますので、このドゥブナ合同原子核研究所での実験結果が待たれます。 - 「ドゥブナ合同原子核研究所核反応実験室の上級研究員であるサルキス・カラミャン氏はこう話す。「このプロセスを自分の目で見ないと、説明探しができない。私は実験核物理分野で50年以上仕事をしているが、レーザー光または特定の化学的環境のもとで核の崩壊が急に加速するとは信じ難い」」
⇒ 実に真っ当な意見だと思います。そして、こんな現象が起こるとは信じ難い、と思いながらも、実際に追試を実行する姿勢が素晴らしいと思います。 - 「「もちろん、土壌を集めて、ろ過することは可能。だが、溶液の方が作業しやすい。つまり、タンクからトリチウムやセシウムを含む汚染水が流出し続けている福島で、この開発が多くを是正するかもしれない」とシャフェエフ所長。」
⇒ 福島第一原発で増え続ける汚染水の処理にShafeev博士が着目していると分かりました。
以上
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