2015年4月5日日曜日

Clean Energy Research LabとImPACTの関係

東北大学電子光理学研究センターとクリーンプラネット社が凝縮系核反応研究部門設立」という記事で、Clean Energy Research Labの設立をお伝えしました。その時に出たクリーンプラネット社のプレスリリースの中に、電子光理学研究センターの核廃棄物除染研究プロジェクトに日本政府がファンディングという形で支援を行うだろうとの記載がありました。このプロジェクトは、内閣府の進める革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)のテーマの一つである「Reduction and Resource Recycle of High Level Radioactive Wastes with Nuclear Transformation」だと述べられています。

http://cleanplanet.co.jp/news/en/15.03.30%20Clean%20Planet%20-%20Press%20release.pdf
Additionally, the government of Japan will provide support in the form of funding for the nuclear waste decontamination research project at the Electron Photon Science of Tohoku University. The project named “Reduction and Resource Recycle of High Level Radioactive Wastes with Nuclear Transformation”, will be funded and supported by the ImPACT Program, which is a Japanese national research program.
革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)については以下にまとめられており、一覧にこのプロジェクトが載っています(日本語名は「核変換による高レベル放射性廃棄物の大幅な低減・資源化」)。
http://www8.cao.go.jp/cstp/sentan/about-kakushin.html

このプロジェクトのプロジェクトマネージャーは、日本原子力学会の会長である藤田玲子博士で、以下にプロジェクトの概略が記載されています。



計画書は以下に登録されています。
日本語: http://www8.cao.go.jp/cstp/sentan/kakushintekikenkyu/siryo/plan08_fujita.pdf
英語: http://www8.cao.go.jp/cstp/sentan/kakushintekikenkyu/siryo/gaiyouen08_fujita.pdf

この中の「克服すべき課題⽬標の達成アプローチ」は以下のように述べています(赤字は引用者による)。

  • LLFPを高レベル廃棄物から回収する有望な技術を分離回収性能や二次廃棄物発生量、経済性を評価して選定し、データをプロジェクト5のプロセス概念検討に提供。(プロジェクト1: 分離回収技術開発)
  • RIビームファクトリー(RIBF)を占有し中性⼦ノックアウト反応や高速中性子核破砕反応等による物理実験を行い、世界初の核反応データを取得。また、得られた核反応データを基に全く新しい核反応制御法の開発に挑戦する。(プロジェクト2: 核反応データ取得及び新核反応制御法)
  • 反応理論・構造理論により実験から得られる核反応データを補うと共に、核変換のための核反応標準モデルを整備する。また核反応データベースを整備し、システム開発のためのシミュレーションを行う。(プロジェクト3: 反応理論モデルとシミュレーション)
  • 合理的なコスト及びエネルギー収支を実現できるLLFP専用核変換システムを検討する。ビーム種・強度・エネルギー・標的性能・FP標的材などを俯瞰し、プロジェクト1,2,3,5と連携を取り要素技術開発を進める。(プロジェクト4: 核変換システム評価と要素技術開発)
  • 高レベル放射性廃液とガラス固化体から半減期の長い核種を取り出し、核変換により半減期の短い核種または安定核種に変換する合理的なプロセス概念を検討する。(プロジェクト5: プロセス概念検討)

そして、「研究開発プログラム全体構成」の「新しい核反応制御法の提案」の中に、課題の例として「凝縮系核融合(Transmutation in condensed matter)」が挙げられています。

ここからは私の想像です。「核変換による高レベル放射性廃棄物の大幅な低減・資源化」プロジェクトでは、放射性廃棄物に中性子を照射することで、放射性物質の崩壊を加速し、結果として放射性物質を低減させる方式を考えているようです。本方式の重要ポイントの一つは、安価でかつ容易に制御できる形で中性子を発生する方式でしょう。

ここで思い浮かぶのが、「水野忠彦博士のグロー放電による新しい常温核融合炉の特許」で述べた、水野博士とクリーンプラネット社の特許です。この特許には、中性子発生を制御できる常温核融合炉の作り方が書いてあります。この炉を中性子発生源として使うならば、もしかすると、非常に実用的な核変換が可能になるかもしれません。今後の展開が非常に楽しみです。

以上

2 件のコメント:

  1.  東北大学とCleanPlanetが常温核融合の研究に本格的に参入することは大いに喜ばしいことです。
     しかし日本原子力研究開発機構とか原子力学会とかには何の幻想も期待も抱いてはいけません。彼らは常温核融合に興味を持って研究するような精神構造を初めから持ち合わせておりません。せいぜい、核変換の特殊な例として多少の資源を割りふっておいてもいいかな、ぐらいの気持ちであり、本気で注目しているわけではありません。
     そもそも常温核融合現象においては中性子は主役ではないのです。中性子のふるまいに関心を持つことは既存核科学のパラダイムから出ないことを意味します。

    返信削除
    返信
    1. コメントありがとうございます。長い間気付かなくてすみません。
      ご指摘のように既存の原子力研究組織には過剰な期待は抱かないようにします。原子力産業をぶっ潰すテクノロジーですから、そう簡単に注力はしてくれないと思っています。

      また、中性子は主役ではない、というご指摘もありがとうございます。この点については余り理解できていません。W&L理論のように超低速中性子を主役と考える理論もあると思っており、まだまだ本当の理解には道のりが遠いと自覚しております。

      削除