応用光研工業株式会社の出しているFNF-401というかなり精度の高い測定器を使用して2012年11月8日に計測された実験結果を阿部宣男博士からいただいたので以下にまとめます。
FNF-401の設置写真
測定は以下の2ステップで行われました。
- 二本松市の一般のご家庭から採取したセシウム汚染土壌25gの放射線量を測定
- この汚染土壌25gにナノ銀を担持させたコラーゲン溶液40cc(約40g)を添加し、計65gとなった試料の放射線量を測定
https://dl.dropboxusercontent.com/u/95398078/SPViewer/spviewer.html
2つの測定結果の比較
上記のデータから、1回目と2回目で試料の質量が変わっている事に注意して、それぞれの試料に含まれていたセシウムのベクレル数を比較してみます。
1回目:汚染土壌25g
日時:2012/11/08 10:15:39質量:25g
測定時間:1800秒
Cs-134: 121912Bq/kg
Cs-137: 232378Bq/kg
したがって、25gの試料全体に含まれるセシウム量は、
Cs-134: 121912 Bq/kg × 0.025 kg = 3048 Bq
Cs-137: 232378 Bq/kg × 0.025 kg = 5809 Bq
2回目: 汚染土壌25g + ナノ銀コラーゲン液40cc(40g)
2012/11/08 11:27:32質量:65g (ナノ銀溶液40gを付加)
測定時間:1800秒
Cs-134: 42055Bq/kg
Cs-137: 79941Bq/kg
したがって、65gの試料全体に含まれるセシウム量は、
Cs-134: 42055 Bq/kg × 0.065 kg = 2734 Bq
Cs-137: 79941 Bq/kg × 0.065 kg = 5196 Bq
したがって、2回の間のセシウムの減少率は以下の通り。(時間間隔は1時間12分)
Cs-134の減少率: 2734/3048 = 89.7%
Cs-137の減少率: 5196/5809 = 89.4%
10時15分から11時27分まで1時間余りしか経っていないにも関わらず、89.7%や89.4%といった率でベクレル数が減少するのは、何か異常な現象が起こっていると思われます。また、Cs-134とCs-137という異なる同位体が同じような率で減少しているのも非常に興味深い現象です・・・ナノ銀は特定の放射性同位体に選択的に効果を及ぼすのではなく、複数の放射性同位体に同じように効果を及ぼしているように見えます。
FNF-401のような精度の高い測定器があると、減少率を継続的に計測するなど、様々な検証が可能になりそうです。もし、FNF-401をお持ちの研究室があれば、是非、追試に取り組んでいただきたいと思います。
ちなみに、FNF-401の説明書には以下のような利点が記されています。強力な遮蔽によってバックグラウンドの影響を抑えている点が素晴らしいと思います。
- 検出限界値が低い(1kg の試料を 1000 秒測定した場合 10Bq/kg まで測定出来る)
- シンチレータが大きい(φ3 インチ×3 インチ) (精度を上げる為の部品選定。効率が良い測定が出来る)
- 鉛遮へいが厚い(5cm) (バックグラウンドが低いので、より正確な測定が出来る)
- 上部から下部まで鉛で遮へいされている (バックグラウンドが低いので、より正確な測定が出来る)
以上
浅学様
返信削除>したがって、2回の間のセシウムの減少率は以下の通り。(時間間隔は1時間12分)
>Cs-134の減少率: 2734/3048 = 89.7%
> Cs-137の減少率: 5196/5809 = 89.4%
> 10時15分から11時27分まで1時間余りしか経っていないにも関わらず、89.7%や89.4%>といった率でベクレル数が減少するのは、何か異常な現象が起こっていると思われます。
これは全く話が逆ではないですか?
減少率は正しくは
Cs-134の減少率: (3048-2734)/3048 = 10.3%
Cs-137の減少率: (5809-5196)/5809 = 10.6%
であり、10%程度の減少率は水が添加されたためガンマ吸収が増えたと解釈するのが
妥当でしょう。
ご指摘ありがとうございます。
削除「減少率」という言葉は不適切でしたね。ご指摘の通り10%ほどが減った率だと認識しています(90%ほどが残っている率)。数字を示しているので誤解は少ないかと思いますが、表現を考え直そうと思います。
また、水による遮蔽効果は十分に小さいと思って書いたのですが、調べて見ると意外に大きいようなので、計算してみます。今回、気づきましたが、セシウムに対する水の半価層の値はインターネットで検索すると色々違う値が出てきますね。正しい評価をご存知でしたらご教授いただければ幸いです。
阿部博士にヒアリングして、だいぶ実験の詳細を理解できました。今更ながらに理解不足でした。質問をありがとうございました。
削除結論から言うと以下です。
・ できるだけ溶液による遮蔽効果を少なくする工夫がされている。
・ 溶液の遮蔽効果がどの程度であったかはまだ見積もれていません(もう少し考えてみます)。
少しずつ書いて行きます。
まず、FNF-401という測定器のシンチレーターは、測定する場所の底部に組み込まれています。したがって、溶液の遮蔽を少なくするためには、検体と底部との間にできるだけ溶液が入り込まない工夫が必要です。
ベクレル分析測定装置(NaI検出器)FNF-401S 【セシウム測定 ヨウ素測定】|関谷理化株式会社
http://www.sekiyarika.com/labo-ware/chemical-apparatus/products/FNF-401S/FNF-401S.html
試料を入れた容器はU-9です。以下によると口内径は50mmです。
削除【ASKUL】アズワン ねじ口U式容器 Uー9 1箱(100本入) 5-093-01 (取寄品) 通販 - アスクル(法人向け)
http://www.askul.co.jp/p/3818281/
土壌試料はU-9及びU-8専用押し込み棒(アクリル製)を使用して、均一に圧をかけました(1Kgの重りを使用)。
ナノ銀担持コラーゲン溶液は上から入れ、土壌は攪拌せず、針で数カ所穴を開け溶液を浸透させる方法を取りました。計測機器のセンサー中心の上に、U-9の上蓋を挟んで試料を乗せました。計測機器の空間上これが高さの限界でした。土壌よりもナノ銀担持コラーゲン溶液の表面が上にありました。
上記のように、おそらく土壌の高さを変えずに、土壌の中に溶液を浸透させた状況を作ったという事だと思います。
さて、問題なのは、最初の土壌と、ナノ銀担持コラーゲン溶液を浸透させた土壌で、溶液による遮蔽効果はどの程度あり得るか? という評価だと思います。
削除実は私もまだ計算できないので、まずは予備知識を整理したいと思いますが・・・今日は遅くなりましたので、とりあえずここまでにさせていただきます。
仕事が忙しくて時間が経ってしまいました。すみません。この週末に溶液による減衰の見積もりを書こうと思います。
削除最初に、ナノ銀担持コラーゲン溶液によってどの程度の放射線の減衰があるか、という基本についてです。
放射線の減衰は、遮蔽物の密度によってだいたい決まるそうです。ここで、ナノ銀担持コラーゲン溶液の密度はだいたい水の密度に等しいだろうと想定します。元の原液を水で割って濃度調整してあるので、それほど外れた想定ではないでしょう。
さて、放射線の遮蔽の強さを表す指標として「線減弱係数[cm-1]」があります。ある遮蔽物を放射線が通過したとき、どれだけの放射線が通り抜けるかは以下の式で求められるそうです。
通過する放射線 = 元の放射線 × exp(-線減弱係数×厚さ)
この線減弱係数は、主として遮蔽物の密度と放射線のエネルギー量によって決まるとのこと。水の線減弱係数が以下のページに載っています。
XCOMでの線減弱係数の調べ方 — Memo
http://shinaji.bitbucket.org/2014/09/03/XCOM.html
この資料によると0.511MeVのガンマ線に対する水(20℃)の線減弱係数は0.09581 [cm-1] です。0.511MeVは、だいたいCs-137の崩壊時に出るガンマ線のエネルギー量に合っているので、この値を使います。
さっきの公式に当てはめてみると、遮蔽物の厚さ[cm]を変えた時の透過率は以下のようになります。
距離[cm] 透過率
0.1 0.990
0.2 0.981
0.3 0.972
0.4 0.962
0.5 0.953
0.6 0.944
0.7 0.935
例えば、1mm(0.1cm)だと99%透過しますが、5mm(0.5cm)だと95%透過です。
したがって、ナノ銀担持コラーゲン溶液が、何ミリメートル分、土壌に浸透したかが分かれば、溶液による減衰率が見積もれるでしょう。
続く
さて、土壌に染み込んだナノ銀担持コラーゲン溶液による放射線遮蔽の影響を見積もってみます。
削除今回の実験では、容器に土壌を入れて1Kgの重しで押し込んだ上で、ナノ銀担持コラーゲン溶液40ccを容器の上から入れ、土壌は攪拌せず、針で数カ所穴を開け溶液を浸透させる方法を取りました。そのため、下に土壌があり、その上にナノ銀担持コラーゲン溶液があるような二層の構造が容器の中にできていました。
この実験に使われたU-9容器の仕様は以下のようになっています。
http://www.askul.co.jp/p/3818281/
【商品の特徴】
容量(mL):50、径×高さ(mm):φ56×39
【商品仕様】
材質:本体・フタ/PS(ポリスチレン)
容量:容積:50ml
型番:U-9
径×高さ(mm):φ56×39
口内径:φ50mm
実は、上記の値を信じて計算すると、どうも辻褄が合わなくて困っていました。そこで、阿部博士に実験に使ったのと同じU-9容器(上記のアズワン製品)の寸法を測ってもらったところ、以下のように上記仕様とは全く異なる値でした。
外径(蓋無し状態):51 [㎜]、
内径:47.3 [㎜]、
内側高さ:30.04 [㎜]
内径が47.3 [mm]なので、半径は以下になります。
半径: 47.3 [mm] / 2 = 23.65 [mm]
したがって、40cc = 40 [cm3] の溶液をU-9に入れた時の高さは以下になります。
40 [cm3] / (2.365 [cm] × 2.365 [cm] × 3.14) = 2.28 [cm] = 22.8 [mm]
土壌の高さの実測値が7.5 [mm] だったので、溶液と土壌が完全に分離した状態で積み重なった場合の高さは以下になります。
22.8 + 7.5 = 30.3 [mm]
容器の内側の高さは 30.04 [mm] でしたから、土壌の中に染み込んだ溶液の高さは以下になります。
染込んだ溶液の高さ: 30.3 - 30.04 = 約 0.3 [mm]
意外だったのですが、0.3 [mm] という、たいへん小さな染込みしかなかったと思われます。
前に計算したように、0.3 [mm] 程度の厚さの水では、放射線を1%程度も減衰させません。
距離[mm] 透過率
1.0 0.990
2.0 0.981
つまり、ナノ銀担持コラーゲン溶液を施して生じた約10%の減衰は、おそらく9割以上、溶液による減衰とは別の要因によるものと思われます。
「できるだけ溶液による遮蔽効果を少なくする工夫がされている」というのはあいまいですね。ナノ銀溶液が何らかの効果をおよぼしているなら、汚染物質の粒子のまわりを溶液の粒子が覆うはずです。それだけで水による放射線遮蔽効果が生じると考えるのが自然です。仮に何らかの核反応(原子核の崩壊)が起きているなら、放射線は減るのではなく、増えなければならず、この実験結果は別の原因を考えるべきかもしれません。
返信削除コメントありがとうございました。
削除>ナノ銀溶液が何らかの効果をおよぼしているなら、汚染物質の粒子のまわりを溶液の粒子が覆うはずです。
このような想定は証明されていません。もしかすると、溶液が通過しただけかもしれません。
この実験結果だけから仕組みを想定するのはかなり難しいと思います。
>それだけで水による放射線遮蔽効果が生じると考えるのが自然です。
水による遮蔽効果はありますが、その効果は十分に小さいと見積もれるだろうと考えています。
(別項で、どの程度の水が浸透したかを見積もるつもりです)
ちなみに、他の実験結果では、コラーゲン溶液だけを入れた対照系との有意差は出ています。
http://amateur-lenr.blogspot.jp/2014/02/blog-post_3453.html
「
その上で、ナノ銀担持あり・なしのコラーゲン液滴下による対照試料実験にて有意な差を確認した。
」
>仮に何らかの核反応(原子核の崩壊)が起きているなら、放射線は減るのではなく、増えなければならず、
いま分かっているのは、放射線が減った、という事実だけです。
ある瞬間に放射線が増えたあとに減ったかもしれませんが、それは観測に成功していません。