今回、阿部博士からデータを見せていただいたので以下にまとめます。初期に行われた屋外でのフィールドワークなので実験の厳密性には欠けると思われますが、それでも明らかに線量が低減しています。放射性物質が濾材に吸着したため汚染水の線量が低減した可能性を疑いましたが、その後、濾材の線量も低減しています。まるで放射性物質がどこかに消えてしまったかのようです。
常温環境で自然の半減期を上回る速度で放射性物質の線量が低減する筈がない・・・のですが、この実験では低減しているように見えます。これは非常に重要な実験結果です。是非、他の研究者の方々の追試を期待したいと思います。
1. 実験概要
2011年12月10日、郡山市のある保育園にて、屋根の除染工事と同時にナノ銀による放射線低減実験を行った。通称「ルーシー」と呼ばれている濾過装置は、ナノ銀坦持骨炭+白御影石を濾材とする4段の装置で水を濾過する。このルーシーを使って合計3回の濾過を行い、各段階で採取された水の汚染度をゲルマニウム検出器によって測定した(測定は専門業者による)。
その結果、濾過によって除染水の放射性物質濃度は初期値に比べて1/10にまで低下した。さらに、この濾材の一部の線量を8日間測定したところ、ほぼ初期の50%以下に低減した。
2. 実験の様子
【保育園での実験の様子を収めた動画】【濾材の放射線測定の様子を収めた動画】
3. 実験結果
専門業者による測定結果は以下の通り。値は、除染水の放射性物質の濃度(Bq/L)を示す。時間的な制約により3回目で濾過処理を終了した。(Bq/L) | 原水 | 1回目 | 2回目 | 3回目 |
Cs-134 | 13300 | 1840 | 1350 | 1340 |
Cs-137 | 18800 | 2490 | 1910 | 1830 |
4段構成の濾過装置の2段目の濾材の放射線の線量を8日間測定した結果を以下に示す。数値は線量(μSv/時)を示す。全段の濾材の平均で見ても最終的な線量は12月11日時点の線量の50%以下に低減した。
測定日(yyyy-mm-dd) | 放射線(μSv/H) |
2011-12-11 | 0.56 |
2011-12-12 | 0.35 |
2011-12-13 | 0.36 |
2011-12-14 | 0.37 |
2011-12-15 | 0.29 |
2011-12-16 | 0.23 |
2011-12-17 | 0.24 |
2011-12-22 | 0.22 |
郡山での作業日は12月10日であり、濾材はこの日に除染水と接触していた。上記の各数値は12月11日からのデータであり、12月10日作業直後の線量はもっと高かったと推定される。また、バックグラウンド線量が測定されていないので、これを差し引いてない。これらを考慮すると実際の減衰率はもっと高かったものと推定される。
以上
【修正】この記事を書いた時に測定場所をホタル館と勝手に解釈していましたが、確認していないので場所の記述を削除しました。
常温核融合現象(CFP)の研究において、常温で固体中での核変換が起こることが観測されています。CFP自体が非常に複雑な様相を呈しているので、核変換をどのように説明するかは、議論の分かれるところですが、ナノ粒子の表面に吸着された放射性核がCFPで核変換を起こして放射能に変化をもたらすことは、ありえることだと思います。
返信削除CFRL小島
小島先生、コメントありがとうございます。
返信削除素人ながら、調べれば調べるほど、常温核融合の可能性がある多様な現象があるような気がしております。本件についても大きな可能性があると思っており、まず何よりも追試結果が出ないかと心待ちにしています。