英語版は、Lessons from cold fusion archives and from history から、
日本語版は、常温核融合の文献と歴史からの教訓 からダウンロードできます。
15ページの文献ですが、常温核融合について非常に興味深いエピソードが沢山つめ込まれています。私が興味を惹かれたのは、再現に失敗した例として挙げられたカミオカンデの実験例です。何が失敗の原因なのか知りたいと思っていたのですが、その答えが書いてありました。(興味のある方は上記の日本語版をお読みください)
この手の失敗は常温核融合の歴史の中で繰り返されてきたようです。初期の電気分解方式の常温核融合の研究には、少なくとも核物理と電気化学の知識が必要でした。でも、両方の知識を兼ね備えた科学者はおらず、片方について生半可な知識しかもたずに実験を行うと失敗します。常温核融合の研究には、複数の異なる分野の専門家の協力が不可欠なのです。
発表の模様は以下の動画で見ることができます。
最後に要約を引用します。
常温核融合の文献と歴史からの教訓
要約
常温核融合の研究分野はやや混沌とした状態である。実験結果は一貫性がない場合もあれば、まったく矛盾した結果の場合もある。いろいろな理論が提案されているが一般に受け入れられているものがない。しかし、歴史を顧みると、新発見の研究分野に起こるこういう混乱は問題ではなくて、むしろ健全な証拠だと言える。プラズマ核融合などの定着した分野は幅広い合意としっかりした理論的基礎があるにも関わらず、あまり進展がない。私たちは、混沌を受け入れ、喜ぶべきである。混乱とした状況にもかかわらず、論文や報告には、常温核融合が本物であることの証拠が示されており、再現する方法も説明されている。
文献には失敗に終わった実験が数多く掲載されている。その失敗には二種類ある: 素人の単純ミスと勇敢な試みである。カミオカンデの地下観測装置で行った実験で はパラジウムを素手で持ち出したりして、多くの単純なミスを起こした。こんな間 違いを避けるためには、まず教科書を読むことと、LENR-CANR.org に収録された 過去の論文や報告を読むこと、電気化学者の助言を得ることである。勇敢な試みの 例としてスリニバサン(Srinivasan)の報告を挙げよう。スリニバサンはミルズが報 告したニッケルで発生する過剰熱をインドの BARC 国立核エネルギー研究所で再現 した。BARC で得た結果をもう一度 SRI で再現しようとして 6 か月苦労した挙句、 有意な結果を得られなかった。そのため、BARC で得られた前の結果も問い直すべ きだと判断した。これこそ本当の探究心の現われだ。こんな失敗のおかげで成功が 生まれるだろう。
最後に、研究には警戒すべきことがある。それは広く信じられている根拠のない仮定に捕まってしまうことだ。誰でもその仮定が当たり前のことだと思い込んでいるから、疑問に思わないわけだ。間違いだと気が付かない。最後の章で遺伝学の歴史からの例をあげる。我々は、常温核融合研究の進歩が、そのような仮定によって遅れないことを望む。
以上
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