ネット上ではよく「ナノ銀除染」という言葉で表現されていますが、これが何を指すのかについて説明しようと思います。
「ナノ銀除染」とは、正確には「ナノ銀による放射線低減効果の研究」と言うのが妥当だと思います。この研究についてはまだ原著論文が出ていないので、今のところ、研究会の発表要旨や発表内容を見るのが良いでしょう。この研究の周辺には、様々な人が関与した実践的な除染実験もありますが、科学実験としての精度から見ると、過去3回報告された研究会発表が最も情報源として適しています。
2013年2月の研究発表
最初は、2013年2月に高エネルギー加速器研究機構で開かれた研究会「放射線検出器とその応用」(第29回)での発表です。発表要旨は以下にあります。この発表要旨の中で、放射性セシウム等で汚染された水に、パウダー状のナノ銀担持骨炭を混ぜたものの放射線強度を測ったグラフが示されています。このグラフを見ると、数日の間に放射線強度が20%程度下がっています。対照系との比較からも、明らかに激しい低下が観測されており、さすがに計測ミスとは考えにくく、本当に放射線が低減しているのではないかと思えます。
ちなみに、この研究会では全部の要旨資料が研究会のWebサイトでPDFとして公開されていました。該当部分を抜き出して別にしたのが上記の資料です。ただ、その後、全体の要旨資料はアクセスできなくなりました。また、その後のアイソトープ学会での発表では、要旨は紙媒体で配布されるだけで、PDF公開されていませんので、他の発表については、要旨や発表内容から情報を抜き出して私のブログで紹介しています。
2014年7月の研究発表
2014年7月に行われた2回目の研究会発表の内容についてはブログ記事で紹介しました。この時はカリウム40に対する適用結果が出され、不確かさ概ね3%~12%に対し、約20%の減衰率だと提示されました。実験の要点は以下にまとめてあります。ナノ銀による放射線低減効果が、放射性セシウム以外の放射性物質(40K)に対しても発現していると思われる結果です。実験に使用された試料は誰でも購入できるカリウム肥料であり、かつ、ナノ銀もUFS-REFINE社で販売されているものなので、両者を組み合わせた追試はかなり容易になる筈です。
また、この研究発表では、セシウム汚染土壌に対するより精緻な実験結果も示されました。ナノ銀コラーゲン液を使ったB試料に対して、唯のコラーゲン液を使った対照実験用にA試料を用意し、放射線低減を比較しています。この点については、発表時に投影された資料を元に以下のブログ記事に載せました。
さて、2014年7月の研究発表ではポスターも出されてます。ポスターでは、2011年5月から行われた初期の実験結果が示されました。バックグラウンドを計測していない等、不備な点もありますが、初期の減衰の大きさを示す点でたいへん貴重な実験だと思います。
2016年7月の研究発表
最後は2016年7月に行われた研究発表の内容です。これについてはごく簡単に以下のブログ記事で述べました。この発表で最も印象に残ったのは、過去の実験データを精査した結果、Cs-134とCs-137の放射線の減衰の仕方に相違がある事が分かった、という話です。これは初期の実験結果を見た時からの疑問の一つでした。Cs-134とCs-137は異なる元素ですから、全く同じように減衰するとは思えません。しかし、少し見ただけでは同様な減衰に見えていたのです。相違が分かって一つスッキリしました。
発表要旨資料の在り処
上述した2014年と2016年の研究発表の要旨資料は、以下に登録されています。たぶん複写依頼できると思います(やってみた事はありませんが)。以上
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