相変わらず余裕の無い状態は続いていますが、少し気を取り直してブログをボチボチと再開したいと思います。
さて、再開の一回目ですが、いわゆる「ナノ銀除染」について、研究会で専門家による実験結果の発表があり、非常に重要だと思うのでまとめます。
去る2月5日〜7日に、つくば市の高エネルギー加速器研究機構で「放射線検出器とその応用」と題した研究会が開かれました。
研究会のアブストラクトは以下のURLで公開されています。
http://rcwww.kek.jp/rdetconf/rd2013-abstracts.pdf
この研究会の中で、非常に興味深い発表がありました。アブストラクトのP69〜P70に掲載されている「ナノスケール純銀担持体の放射性セシウム減弱効果の検証測定」という報告です。
これは、単純に言うと、以下のような驚くべき実験結果を報告しています。
- 放射性のセシウムを含む屋根洗浄回収水や土壌に、ナノ銀(ナノスケールの大きさの銀の粒)を付着させた骨炭やコラーゲン溶液を混ぜると、放射強度が弱くなる。
- 放射強度の弱くなり方は、「半減期20日」に相当する。
【追記2013年3月19日 漏れがあったため下線部を追加しました】
1.はじめに報告者である岩崎信博士は、元東北大学教授で核計測学を専門にしておられたようなので、まさしく報告内容についてはプロの研究者なのだと思います。そして、以下の文面にあるように、この実験結果が従来の常識からみて異常である事は良くご認識されています。
飲料水浄化やホタル育成環境改善に有効なナノスケール(4〜5nm)純銀(ナノ銀)担持体(骨炭+白御影石)が,福島県を中心に降下残留している放射性セシウムの減弱効果も有するとの実地試験の示唆(仮説)を受け,実験室レベルで調べてきている.家屋除染水にナノ純銀担持骨炭あるいは同白御影石,土壌にはナノ銀担持コラーゲン液の組み合わせで,U9容器に試料(一部は密封)を作り,Csl(T1)検出器+512ch.MCAで対照試料なども組み合わせながら,試料内の不均一(偏在),試料自己遮へい,揮発等の影響を極力小さくする試料検体準備,測定幾何配置等に注意を払い,残留放射能γ線スペクトルを長期にわたり測定し,これらの不確かさの大きさにも注意を払いながら分析し,ほぼ"半減期"が約1~2カ月程度の減弱効果が存在するとの結論を得つつある.途上だが現状報告する.
2.これまでの経緯
もとより,放射性崩壊強度を人工的に変化させることはごく一部の特殊例1)を除けば常識外れである.当効果("阿部効果"と仮称)は,第二著者:阿部により,事故後,ナノ銀担持櫨材のホタル生態環境保全の高い能力から,もしやホタル館周辺の放射能低減もとの発想から11年6月頃線量軽減試行過程で偶然発見された2).その後,阿部グループが「被災地福島にホタルを再び」活動の延長線上で同年後半より複数の市町村の家屋除染水,土壌,焼却灰等の現場試験が実施され,その度にセシウムγ線量減弱傾向が示唆された.しかし,現場での線量計測値や,計測業者依頼の一時点のゲルマ計測値だけでは,学術的背景不足を理由に除染審査専門家から断られた 3).
極めて偶然の共通知人の仲介で12年3月から第1著者が核工学・放射線計測学の立場から支援的に合流し,同グループの強い「福島を救う」思いに共感し,共同で"阿部効果"の検証を進めてきた.しかし,あまりにも複雑な試料検体と未経験事象で半年暗中模索だったが,同年11月頃から系統的データ取得が可能となった.検証の健は「適切なナノ銀とその担持体が真に有意な減少をもたらす; "効果"が真なら鍵物質はナノ銀で,これが欠けると事象が起らない」の二項目を高い再現性で示せるかであった.試料(対照試料を含む)準備,測定幾何体系,検出器系安定陸,周囲測定環境,データ処理過程等々に忍び込む種々の系統的外乱・錯誤・思い込み要因に注意を払った 4).
測定の方法については、以下のように述べられています。
3.試料検体と測定体系
ここでは,除染水+パウダー状骨炭ナノ銀担持体での阿部効果実験を中心に2ケースを説明する.
屋根洗浄回収水(土埃等を含む)+ナノ銀担持体: ふるいで細かいパウダー状ナノ銀坦持骨炭を得た.試料と測定: 対照試料の非担持骨炭(A)と上記(B)をそれぞれ6gずつ用意.回収水を撹拌した後,10ccをそれぞれU9容器に入れて測定.さらにA, Bをそれぞれの容器に入れて混ぜ暫く置き測定.その後容器の蓋を開け自然乾燥させ骨炭を別容器に移して長期測定試料(共に6g)とした.
各試料は毎回測定直前に匙で良く撹拌した後,全体を一定圧力で押し固め,厚さ一定(約4mm)の試料とした.検出器と遮蔽体系試料容器と測定幾何体系: クリアパルス社Csl(T1)検出器(Mrガンマ2700)を20cm角箱状鉛遮蔽体(壁厚1cm~3cm)内底部に上向き水平に設置し,十字印上を中心に空U8容器(高さ6.6cm)を挟んで上記U9試料を置いた.γ線スペクトルは512chMCAで得た.通常計測時間は3h/1試料,またはその倍数(24hまで)とした.「試料無し」等バックグラウンド(BG)など補助的データも何度も入念に取得した.
土壌+ナノ銀担持コラーゲン液試料(C試料): U9容器内土壌(25g)に20ppmナノ銀担持コラーゲン液を(2.5cc)滴下密封したもの.まず10月30日汚染土壌のみ測定(配置はA,Bと同じ),31日ナノ純銀添加後撹拌密閉して初期測定,その後2カ月間据え置き翌年測定再開し1月15日まで継続.
そして、肝心の実験結果については、以下のように記載されています(赤字は引用者による)。色々と分からない点はあるのですが、放射線強度の減少は明確に現れており、非常に重要な結果だと思います。
4.長期測定の簡易解析結果とまとめ
B試料: B試料の分離可能な3ピーク群 (3P: Cs-134の604keV他; Cs-137の661.6keV; Cs-134:795.7keV他)の計数和と3ピークの下の連続成分(LC)計数和からそれぞれBG分を差し引いた時間変化が図1.
これらの初期減衰の"半減期"は~20日で,一昨年12月に阿部が測定した回収水処理機の骨炭+白御影石濾材の処理後の残留放射能の線量値変化と概ね整合する.一方,対照実験のナノ銀非担持A試料は初期変動(~10%)を除いて期間中安定しており,B試料の種々の系統的不確かさの目安(約5%弱)を与えている.また,B試料の大きな変化が止まったところで,24日日(1月14日)に純水0.6ccを加え撹拌して測定をすると再び大きく減少し始めた.同スペクトルの経時変化:各ピークの相対変化をみると,未確認だが2核種間に若干差がありそうである.
C試料: 上記3Pの計数和の相対強度は,密封後の10月31日測定値を1.0として,翌年1月4日に0.667±0.007,同15日に0.472±0.005に変化した.なお,この2ヶ月半の2核種の放射性崩壊滅衰率はまとめて1月15日で概略0.96と見積もられる.
他の実験結果も踏まえて,現在の所,B試料やC試料の変化は担持しているナノ銀の働きによると判断する.今後も再現性を含め検証を継続する.上下反転可能で小容量の薄型円筒容器入りの試料について最初から最後まで完全密封を保つ究極的体系でも対照実験を進めている.講演ではメカニズムについても可能なコメントをする.高感度測定器を用いた精密な追試を歓迎する.
「日本一新の会」のブログにこの時の講演の様子が少しだけ記載されていますが、岩崎信博士は「常温核融合を起こしている可能性がある」と示唆されたそうです。岩崎信博士が言われるように、是非、追試が現れる事を祈ります。
岩崎信博士は2012年8月9日に「放射能浄化勉強会」で講演されており、その時の記録を載せてくれているブログがありました。
岩崎信博士は2012年8月9日に「放射能浄化勉強会」で講演されており、その時の記録を載せてくれているブログがありました。
ここでの発言もたいへん興味惹かれるものでした
【追記:2013年3月19日 全文を引くのは引用としてはやりすぎでした。著作者の岩崎博士にお詫びすると共に、問題の文章を削除します】
以上
【参考リンク】
■ナノ銀除染の信奉者とそれに対する批判との一連のツィート
http://togetter.com/li/345118
ナノ銀除染を主張する阿部宣男博士の「ホタルは0.5μSv/hの放射線を浴びると光らなくなる」は根拠がない疑惑が指摘されており、私はそれを質問したつもり。残念ながら阿部博士から回答はいただけてません。この時も「データを出して欲しい」というのが私の希望だったのですが、まさにそれが上記の発表で実現した訳です。関係者の皆様に感謝したいと思います。
【参考リンク】
■ナノ銀除染の信奉者とそれに対する批判との一連のツィート
http://togetter.com/li/345118
ナノ銀除染を主張する阿部宣男博士の「ホタルは0.5μSv/hの放射線を浴びると光らなくなる」は根拠がない疑惑が指摘されており、私はそれを質問したつもり。残念ながら阿部博士から回答はいただけてません。この時も「データを出して欲しい」というのが私の希望だったのですが、まさにそれが上記の発表で実現した訳です。関係者の皆様に感謝したいと思います。
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