2010年3月6日土曜日

水トリーと常温での核反応の関係

常温核融合は本当だった! その13」に水トリーと呼ばれる電力ケーブルの特異な劣化現象が常温での核反応起源のものではないかとの仮説を検討している研究の話が出ています。検索してみたら、日本原子力学会での発表論文の抄録が見つかりましたので、まとめて引用させていただきます。


■引用開始
2009/9/20                   < 水トリー >
電力ケーブルに発生する水トリーという特異な現象がありますが、その水トリーを中部電力・熊澤孝夫氏らは常温核融合の視点から研究しています。熊澤氏の研究は当HPでこれまで何度も紹介してきました。
Tさんによると、なんと先日の東北大学で開催された原子力学会で熊澤氏らが新しい発表を行ったとのことです!
日本原子力学会「2009年秋の大会」 東北大学 青葉山キャンパス 9/16~9/18
中部電力の熊澤孝夫氏と大阪府立大学の谷口良一氏の共同研究であり、「水トリー発生に伴う放射線の計測」というタイトルで2人がそれぞれ発表されています。
Tさんによれば、その発表は
水トリー生成後(生成中の抜き打ち測定も実施)の試料から、測定開始直後に鉛とビスマス特有のガンマ線放出が観測されたこと、最大でバックグラウンドの1.5倍に及ぶそうですが生成源は特定できていないこと、時にバースト状にガンマ線放出が起こることもあった。
という内容であったそうで、実験は1000時間にもおよぶ連続実験でおおがかりなものであったようです。
水トリーとは架橋ポリエチレン(XLPE)を絶縁体に用いた電力ケーブルで起こる特異な劣化現象のことです。
この発生原因はまだよくわかっておらず様々な説が出され決定打のないまま来ているわけですが(例えば-->こちら)、熊澤氏と谷口氏はそれを従来とは異なった視点、つまりCold Fusion的な視点から研究されていて、ユニークな成果を発表されつづけています。
聴講者から批判も出たようですが、それでも実験で水トリーを発生させたサンプルからガンマー線などの放射線が観測されたという結果は注目に値します。常識的な電力研究者なら、放射線が発生するなど夢にも思わない!となるでしょうから。
水トリーは常温核融合とほんとうにつながっているのでしょうか?
それとも放射線発生は別のものからなのか・・?
今後の研究に期待したいところです。
■引用終了


以下、日本原子力学会の発表論文の抄録から、谷口良一氏と熊澤孝夫氏のものを抜き出してみました。2003年以前から研究は始まっているようで、段々と検証が具体化されている様子が分かります。ただ、水トリー発生の規模と核反応現象の間に明確な相関は見い出せていないとの事で、まだ謎の解明には時間がかかりそうです。


日本原子力学会 2003年秋の大会

http://www.jstage.jst.go.jp/article/aesj/2003f/0/2003f_070/_article/-char/ja/
水トリー発生に伴う放射線の計測(2)
谷口 良一1), *熊澤 孝夫2)
1) 大阪府立大学
2) 中部電力
Abstract  電力ケーブルの絶縁破壊を引き起こす水トリーの発生と微弱な放射線の発生の関係を精密に検討した。その結果、水トリーの発生・進展時に、放射線の発生を伴う未知の物理的もしくは電気化学的な現象を伴っている可能性を示唆するデータが得られた。


http://www.jstage.jst.go.jp/article/aesj/2003f/0/2003f_071/_article/-char/ja/
水トリー発生に伴う放射線の計測(3)
*谷口 良一1), 熊澤 孝夫2)
1) 大阪府立大学
2) 中部電力
Abstract  架橋ポリエチレン絶縁体中の水トリー発生に伴う微弱な放射線の発生の観測を行った。低バックグランド環境で人為的に水トリーを発生させ、中性子およびγ線を観測した結果、バースト状のγ線と思われる放射線の発生の兆候が見られた。


日本原子力学会 2005年秋の大会 

http://www.jstage.jst.go.jp/article/aesj/2005f/0/2005f_75/_article/-char/ja/
水トリー発生に伴う放射線の計測 (4)
*熊澤 孝夫2), 谷口 良一1)
1) 大阪府立大学放射線研究センター
2) 中部電力電力技術研究所 
Abstract  電力ケーブルの絶縁破壊を引き起こす水トリーの発生と微弱な放射線、電磁波等の発生の関係を精密に検討した。その結果、水トリーの発生時に放射線を伴う物理的もしくは電気化学的な現象を伴っている可能性が示唆された。


日本原子力学会 2006年春の年会 

http://www.jstage.jst.go.jp/article/aesj/2006s/0/2006s_75/_article/-char/ja/
水トリー発生に伴う放射線の計測 (5)
水トリー劣化試料中の微弱放射性核種の測定
*熊澤 孝夫1), 谷口 良一2)
1) 中部電力
2) 大阪府立大学
Abstract  CVケーブルの主要な劣化形態である水トリーの発生・進展にともなって放出される微弱な放射線の計測を行った。課電後(水トリー劣化後)の試料に着目して微弱放射線測定を行った結果、明確な核種は同定されなかったが、陽電子消滅によると見られるγ線のピークの僅かな増加が観測された。


日本原子力学会 2007年秋の大会 

http://www.jstage.jst.go.jp/article/aesj/2007f/0/2007f_90/_article/-char/ja/
水トリー発生に伴う放射線の計測 (6)
*熊澤 孝夫1), 谷口 良一2)
1) 中部電力、電力技術研究所
2) 大阪府立大学、放射線研究センター
Abstract  電力ケーブルの絶縁破壊を引き起こす水トリーの発生に伴う微弱な放射線(中性子、γ線)、残留放射線、電磁波等の発生を精密に測定した。実験では、中性子検出器、X線検出器等を複数並べ同時計数を行った。電極試料に課電中(2.6kV,2kHe)、バックグランド時では見られない、低エネルギーのγ線もしくは電磁ノイズと思われる応答が幾つか観測された。ただし、水トリーの発生数、規模と放射線計数値の関係は単純ではない。


日本原子力学会 2008年秋の大会 

http://www.jstage.jst.go.jp/article/aesj/2008f/0/2008f_128/_article/-char/ja/
水トリー発生に伴う放射線の計測
(7)放射線の精密測定と残留放射線測定
*熊澤 孝夫1), 谷口 良一2)
1) 中部電力 電力技術研究所
2) 大阪府立大学 放射線研究センター
Abstract  電力ケーブルの絶縁破壊を引き起こす水トリーの発生に伴う微弱な放射線(中性子、γ線)、残留放射線、電磁波等の発生を精密に測定した。実験では、中性子検出器、X線検出器等を複数並べ同時計数を行った。電極試料に課電中(2.6kV,2kHe)、バックグランド時では見られない、低エネルギーのγ線と思われる応答が幾つか観測された。また、課電終了後の試料電極に、短寿命の放射線発生核種が異常に存在する場合があることが明らかとなった。


http://www.jstage.jst.go.jp/article/aesj/2008f/0/2008f_129/_article/-char/ja/
水トリー発生に伴う放射線の計測
(8)残留放射線の核種同定
*谷口 良一1), 熊澤 孝夫2)
1) 大阪府立大学放射線研究センター
2) 中部電力、電力技術研究所
Abstract  電力ケーブルの絶縁破壊を引き起こす水トリーの発生実験を数週間行った後、電極部分に短寿命の放射性核種が残留していることを見出した。これは、10分オーダーの半減期であり、数時間後には測定できない程度に減衰していた。Ge検出器のスペクトルを精密に解析した結果、発生源は、鉛とビスマスの短寿命核種であることが確実となったが、どのような理由でこれらの核種が、発生したのか、あるいは集積したかについて明確な説明はできていない。



日本原子力学会 2009年秋の大会 

http://www.jstage.jst.go.jp/article/aesj/2009f/0/2009f_98/_article/-char/ja/
水トリー発生に伴う放射線の計測
(9) 残留放射線現象の再現性
*熊澤 孝夫1), 谷口 良一2)
1) 中部電力(株)電力技術研究所
2) 大阪府立大学 放射線研究センター
Abstract  電力ケーブルの絶縁破壊を引き起こす水トリーの発生に伴う微弱な放射線(中性子、γ線)、残留放射線、電磁波等の発生を精密に測定した。特に、前回報告した、課電終了後の電極試料に、短寿命の放射性核種が異常に存在する現象の追試の結果について重点的に報告したい。4回の課電実験の結果では、3回の実験で前回と同様の残留放射線が見られた。ただ、その規模には大きな違いがあり、最大のものでも前回報告の1/3程度であった。ただし、この現象と水トリー発生の規模との間に明確な相関が見られない。残留放射線の起源となる現象がバースト状である可能性を含め、この2つの現象の間には、さらなる未知の要素が介在していることが推測される。

http://www.jstage.jst.go.jp/article/aesj/2009f/0/2009f_99/_article/-char/ja/
水トリー発生に伴う放射線の計測
(10) 残留放射線スペクトルの解析
*谷口 良一1), 熊澤 孝夫2)
1) 大阪府立大学放射線研究センター
2) 中部電力、電力技術研究所
Abstract  電力ケーブルの絶縁破壊を引き起こす水トリーの発生実験を数週間行った後、電極部分に半減期10分程度の短寿命の放射性核種が残留していることを見出した。数回の実験においてGe検出器で計測したガンマ線スペクトルを精密に解析した結果を報告する。ピーク形状からは、主として鉛とビスマスの短寿命核種であることが確実であるが、低エネルギーの白色成分にも異常な増加が観測されており、さらに他の核種/反応が介在している可能性もある。


【追記】
電気学会論文誌にも論文が出ていたほか、小島英夫博士が設立されたCFRL (常温核融合研究所)の論文リストにも関連論文が掲載されていました。以下、引用させていただきます。


http://www.jstage.jst.go.jp/article/ieejfms/127/2/127_89/_article/-char/ja

電気学会論文誌A(基礎・材料・共通部門誌)
Vol. 127 (2007) , No. 2 pp.89-96
水トリーの発生・進展に伴う微弱放射線の検出
熊澤 孝夫1), 谷口 良一2)
1) 中部電力(株)技術開発本部 電力技術研究所
2) 大阪府立大学 放射線研究センター
(受付日 November 25, 2005)
(再受付日 October 23, 2006)
Abstract:  It is well known that generation and progress of water tree in XLPE cable are remarkably influenced by inorganic impurities. We have investigated the behavior of them in water tree and reported the experimental results as follows: i) the anomalous increase or decrease in several kinds of inorganic elements was observed in water treed XLPE samples, ii) a distinctive relationship was found for the mass numbers for the elements, iii) the isotopic content of the elements such as Zn deviated over 6% from the natural abundance. These results suggest that water tree is concerned with unknown phenomena e.g., cold fusion or nuclear transmutation in condensed matter. In order to study the relationship between water tree and these phenomena, we attempted to detect neutron, γ-ray or X-ray involving generation and progress of water tree in XLPE samples. For the experiments weak and burst-like radiation seemed to be low energy γ-ray or X-ray was often detected by BF3 and/or CdZnTe counter. The radiation tended to be detected from the samples in which a lot of water trees were generated by supplying inorganic cations abundantly.





http://www.geocities.jp/hjrfq930/Papers/paperr/paperr.html

Papers published as Reports of Cold Fusion Research Laboratory (Reports of CFRL)
(常温核融合研究所の論文一覧)


http://www.geocities.jp/hjrfq930/Papers/paperr/paperr16.pdf
16. H. Kozima and H. Date, "Nuclear Transmutations in Polyethylene (XLPE) Films and Water Tree Generation in Them" Reports of CFRL (Cold Fusion Research Laboratory) 8-2, 1 - 16 (August, 2008)

http://www.geocities.jp/hjrfq930/Papers/paperr/paperr14.pdf
14. H. Kozima, "An Explanation of Nuclear Transmutation in XLPE (Crosslinked Polyethylene) Films with and without Water Trees" Reports of CFRL (Cold Fusion Research Laboratory) 7-4, 1 - 10 (December, 2007)


以上

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