2009年10月29日木曜日

ICCF-15の講演資料がPDFで公開されています

ICCF-15(第15回凝集系核科学国際会議)のホームページに、講演資料がPDFで公開されています。ダンカン、McKubre、高橋、北村、荒田、佐々木、水野(敬称略)など、おなじみの研究者の名前の付いた資料が置いてあります。実験装置や実験結果のグラフなど、(中身は理解できない素人でも^^;) 楽しく見られるのでお薦めです。
以下、現時点での一覧(ディレクトリ一覧がそのまま見えてます)です。

Index of /ICCF15-PRESENTATIONS




[   ]
Opening_DeSanctis.pdf
26-Oct-2009 15:23
405K

[   ]
Opening_Tomellini.pdf
21-Oct-2009 12:52
1.4M

[   ]
P_21_Roussetski.pdf
23-Oct-2009 16:16
1.0M

[   ]
S1_O2_Duncan.pdf
21-Oct-2009 12:44
1.9M

[   ]
S1_O3_McKubre.pdf
21-Oct-2009 12:46
4.6M

[   ]
S1_O4_Hubler.pdf
05-Oct-2009 02:53
6.9M

[   ]
S1_O6_Violante.pdf
21-Oct-2009 12:47
2.5M

[   ]
S1_O8_Hagelstein.pdf
21-Oct-2009 12:48
667K

[   ]
S1_O9_Miles.pdf
01-Oct-2009 12:35
1.0M

[   ]
S1_O10_Zhang.pdf
23-Oct-2009 16:05
1.2M

[   ]
S2_O1_Hagelstein.pdf
02-Oct-2009 16:08
1.0M

[   ]
S2_O2_Kim.pdf
26-Oct-2009 10:00
1.3M

[   ]
S2_O4_Takahashi.pdf
26-Oct-2009 15:24
4.5M

[   ]
S3_O1_Apicella.pdf
05-Oct-2009 11:08
4.3M

[   ]
S3_O2_Kitamura.pdf
26-Oct-2009 15:24
346K

[   ]
S3_O4_Santoro.pdf
21-Oct-2009 12:42
371K

[   ]
S4_O1_Arata.pdf
23-Oct-2009 16:03
2.5M

[   ]
S4_O2_Scaramuzzi.pdf
02-Oct-2009 14:29
709K

[   ]
S4_O4_Li.pdf
23-Oct-2009 10:35
62K

[   ]
S5_O1_Lipson.pdf
21-Oct-2009 12:09
1.0M

[   ]
S6_O1_Mastromatteo.pdf
21-Oct-2009 11:18
772K

[   ]
S6_O2_Srinivasan.pdf
21-Oct-2009 11:20
1.5M

[   ]
S6_O5_Carpinteri_Lacidogna.pdf
26-Oct-2009 10:01
866K

[   ]
S7_O3_Santucci.pdf
26-Oct-2009 10:05
56M

[   ]
S7_O5_Sasaki.pdf
26-Oct-2009 15:24
925K

[   ]
S7_O6_Liu.pdf
23-Oct-2009 10:36
557K

[   ]
S7_O8_Mizuno.pdf
21-Oct-2009 12:13
624K

[   ]
S8_O2_Cook.pdf
23-Oct-2009 16:01
4.0M

[   ]
S8_O5_Dufour.pdf
26-Oct-2009 10:02
630K

[   ]
S9_O1_Storms.pdf
28-Sep-2009 07:21
1.3M

[   ]
S9_O2_Meulenberg.pdf
23-Oct-2009 15:57
278K

[   ]
S9_O4_Tasker (J.L.Mace).pdf
21-Oct-2009 11:13
819K

[   ]
S9_O7_Miley.pdf
21-Oct-2009 12:18
764K

[   ]
S9_O8_Bressani.pdf
03-Sep-2009 11:54
1.3M

[   ]
S10_O1_Sarto.pdf
21-Oct-2009 11:25
1.5M

[   ]
S10_O2_Lipson.pdf
21-Oct-2009 12:18
1.3M

[   ]
S10_O4_Castagna.pdf
21-Oct-2009 11:25
3.0M

[   ]
S10_O5_Bemporad.pdf
26-Oct-2009 09:58
15M

[   ]
S10_O8_Caneve.pdf
21-Oct-2009 17:00
892K


2009年10月26日月曜日

常温核融合研究所の「CFRL News」発行

小島英夫博士が所長を務められるCFRL(常温核融合研究所)の「CFRL News」が約一年ぶりに発行されたようです。以下にこのNewsのリストがあります。

http://www.geocities.jp/hjrfq930/News/news.html

ここから辿って、以下のURLでNo.73を参照できます。

http://www.geocities.jp/hjrfq930/News/CFRLJpnNews/CFRLNs73.htm
CFRL ニュース No. 73 (2009. 10. 20)

この中に以下の記事が出ていました。
■引用開始
5. JCF9でCFRLから3編の論文が発表されました。
上記のAPS2009,ACS2009, JCF9には、常温核融合研究所から幾つかの論文が発表されていますが、JCF9に発表した論文の表題を下に引用します。これらの論文は、下記の
CFRLウェブサイトのPapersの欄にReports of CFRL (Cold Fusion Research Laboratory)として掲載されておりますので、ご覧頂ければ幸いです。
http://www.geocities.jp/hjrfq930/Papers/paperr/paperr.html
(1) H. Kozima, “Non-localized Proton/Deuteron Wavefunctions and Neutron Bands in Transition-metal Hydrides/Deuterides” Proc. JCF9, pp. 84 - 93 (2009)
(2) H. Kozima and T. Mizuno, “Investigation of the Cold Fusion Phenomenon in the Surface Region of Hydrogen Non-occlusive Metal Catalysts; W, Pt, and Au“ Proc. JCF9, pp. 52 - 58 (2009)
(3) T. Mizuno and H. Kozima, “Heat Generation by Hydrogenation of Carbon Hydride” Proc. JCF9, pp. 41 - 45 (2009)
■引用終了
ここで新たに掲載された論文のうち、(3)“Heat Generation by Hydrogenation of Carbon Hydride”は、「常温核融合は本当だった! その12」で以下のように紹介されていた水野博士の画期的な実験についての論文ではないかと思います。
■引用開始
ステンレス合金製の炉(88cc)に、多環芳香族炭化水素フェナントレン0.1g投入し、高圧水素ガスで満たし密閉。白金とイオウも触媒として添加。水素を加圧すると、巨大な過剰熱が発生。さらに地球にほとんど存在しない炭素13が大量に発生した。
■引用終了
また、ICCF15については以下のように言及されていました。
■引用開始
6. ICCF15(October 5 ? 9, Rome, Italy)が開催されました
上記国際会議が開催され、下記New Energy TimesのウェブサイトにProgramとAbstracts of Papersが掲載されています。
http://www.newenergytimes.com/v2/conferences/2009/ICCF15/ICCF15.shtml
Abstractsのリストで見ると、Oral Presentation 71編、Poster Presentation 41編、Oral Presentationの内訳は、Fleischmann & Pons Experiment 10篇、Theory 21編、Experiment 40編ということになります。
相変わらず、Cold Fusion Phenomenonの全体像を捉える視点よりは、次々に得られる新しい実験データ、特に重水素系でのデータに偏った現象を追求する視点が強いようです。
■引用終了
小島博士は、常温核融合と言うと、何かと重水素とパラジウムによる過剰熱発生現象だけが偏重される点を苦々しく思っておられるようです。実際、常温核融合現象では多種多様な元素変換が起こっているようであり、それらを含めた全体的な現象の把握と理論構築が必要という指摘はとても重要だと思います。私もついつい重水素系の話題に注目してしまうのを反省してます。

以上

悪魔は細部に宿り給う

最近、Jed Rothwell氏の発言をボチボチ読む機会があるのですが、良いこと言ってるなぁと思う事が多く、結構ファンになってます。
ICCF-15に関する記事(2)」でも紹介したメーリングリストvortex-lに以下のような発言がありました。


http://www.mail-archive.com/vortex-l@eskimo.com/msg35337.html
Re: [Vo]:Rothwell has no opinion about theory
Jed Rothwell
Sat, 24 Oct 2009 11:50:31 -0700

I wrote:

Naturally, I see why theory is important to the researchers, but I am not a
> researcher, so it isn't my department. Glassware is important to them too .
> . .
>
That is not a joke, by the way. An experiment with the right theory but the
wrong glassware will still fail. Nature does not care whether the fault is
in the design or the execution. An airplane may crash because it is poorly
designed. A well-designed airplane may crash because the engines ingest
geese.

In experimental science the devil is in the details.


- Jed
赤字部分の勝手な和訳:
正しい理論に従って実践したとしても、間違ったガラス製品は壊れてしまう。自然界は、失敗の原因が設計にあるのか、実践にあるのかを区別しない。飛行機は不味い設計によって墜落するかもしれない。でも、ちゃんと設計された飛行機であっても、エンジンに雁が飛び込んで墜落するかもしれない。
実験科学では、悪魔が細部に宿っているのですよ。


「神は細部に宿り給う」という有名な言葉を意識してのものだと思います。常温核融合のように、実験が理論に先行している科学では、実験に頼る所が大きいため、ちょっとした実験上の不注意や偶然が実験結果やそれを元にした理論構築を台無しにしてしまうのが恐ろしい所ですね。独立した研究機関同士での追試のプロセスを踏んで、実験結果を確認し合いながら進むのが大切なんでしょうね。

以上

2009年10月24日土曜日

高騰する国際熱核融合実験炉の建設コスト

今回は熱核融合の話題です。

「ITER」という国際プロジェクトがあります。ITERとは、「国際熱核融合実験炉」の意でイーターと読みます。紹介のページから文言を拝借すると、「ITER計画は、平和目的の核融合エネルギーが科学技術的に成立することを実証する為に、人類初の核融合実験炉を実現しようとする超大型国際プロジェクトです、ラテン語の道や旅という意味も兼ねる「ITER」には、核融合実用化への道・地球のための国際協力への道という願いが込められています。」との事です。

このITERに拠出する資金についての記事をWikipediaから引用します。全部で1.6兆円とかたいへんな資金が必要とされています。
■引用開始
資金拠出
現状では、ITERの開発、建設と運用に関わる総資金は100億ユーロ(約1.6兆円)と見積もられている。2005年6月のモスクワでの会議で、ITER機構の参加メンバーは以下の比率での資金拠出に合意した。建設国であるフランスは50%を、EUとその他のメンバー国は10%をそれぞれ拠出する。伝えられるところでは、韓国の済州島で行なわれたITERの会議では非建設国メンバー6カ国は総費用の6/11、合わせて半分を少し超える拠出を行ない、EUは残る5/11を拠出する。工業的な協力で云うと他の5カ国、中国、インド、ロシア、アメリカの拠出は各々1/11で合わせて5/11となる。日本は2/11でEUは4/11を拠出する。
日本の資金面での協力は非建設国としての総額の1/11であったが、EUは特殊な状況を考慮して、日本が建設契約の2/11を負担する代わりに、カダラッシュの研究者の2/11を占めることに同意した。これにより、EUの人員と建設に関わる費用拠出の割合は5/11から4/11となった。また、その他にEUと日本共同で幅広いアプローチという関連研究プロジェクトを行い、その拠点を日本に置くことになった。
■引用終了
このITERについてBBCが報じた記事がある事を、Vortex-lに投稿されたJed氏のメールで知りました。

http://www.mail-archive.com/vortex-l@eskimo.com/msg35292.html
[Vo]:BBC article about ITER
Jed Rothwell
Fri, 23 Oct 2009 07:21:19 -0700

以下は、そのBBCの記事からの引用です。例によって括弧内は私の怪しい和訳です。

http://news.bbc.co.uk/2/hi/sci/tech/8103557.stm
Fusion falters under soaring costs
(天井知らずのコスト増に悩む核融合)
By Matt McGrath
Science reporter, BBC World Service
■引用開始
An international plan to build a nuclear fusion reactor is being threatened by rising costs, delays and technical challenges.(核融合反応炉を建設する国際計画は高騰するコスト、遅延、技術の難しさによって脅かされている)
Emails leaked to the BBC indicate that construction costs for the experimental fusion project called Iter have more than doubled.(EmailによってBBCにもたらされた情報によると、ITERの建設費用は2倍以上に跳ね上がっているとの事だ)
Some scientists also believe that the technical hurdles to fusion have become more difficult to overcome and that the development of fusion as a commercial power source is still at least 100 years away.(核融合の技術的なハードルは非常に高く、商用の電力を供給できるようにまるまでには100年以上かかると予想する科学者もいる)
At a meeting in Japan on Wednesday, members of the governing Iter council reviewed the plans and may agree to scale back the project.(日本で水曜日に開催された会議では、ITERの評議会メンバーは計画をレビューし、縮小案に同意したようだ)
■引用終了
日本のニュース記事を検索してみたのですが、この事を報じた記事は見つけられませんでした。これだけ金をかけて、実現に100年かかるかもしれないプロジェクトって、投資の価値が本当にあるのでしょうか?

以上

ICCF-15に関する記事(4)

常温核融合は本当だった! その13」で、北村晃博士と高橋亮人博士による「第15 回凝集系核科学国際会議(ICCF15)報告」が公開されていると知りました。

常温核融合は本当だった! その13」と重複するところもありますが、私が興味を惹かれた部分を引用させていただきます。
■引用開始
特筆すべきことは、ICCFシリーズの会議として、権威ある学術団体、イタリア化学会とイタリア物理学会が後援団体となりサポートを得たことであり、この意味で画期的な会議であった。“常温核融合”(凝集系核科学の世間的呼び名)の世界会議は、今までは、主催を選ばれた議長のもとでボランティア中心に企画・運営・実行するケースがほとんどであった。
■引用終了
イタリアの化学会や物理学会が後援していた件は「ICCF-15に関する記事(2)」で引用した「LENR-CANRのニュースページ」にも記載されていました。これは画期的な事だったのですね。

■引用開始
学術発表プログラムは電気分解による発熱現象の実験と理論解釈によって占められていた。Fleischmann-Pons Effect (FPE)を「正統づけんとする意思」が、主催者あるいは、会議の実質的な財政スポンサーとなったイスラエルのEnergetics社(S. Lesin がICCF15 副議長を務めた)とSRI(アメリカ)の関係者から強く働いた跡がうかがえた。
■引用終了
何が「正統」かなんて、どうでも良いと思うのですが、拘る人がいるんでしょうか。異端として虐げられてきた常温核融合研究の中にも「正統」の主張があるのは皮肉ですね。

■引用開始
まず、ミズーリ大学副学長のR. Duncan が、2009 年4 月に米国有力報道局CBS の「CBS 60 minutes」のCMNS/CF の肯定的報道で世界的に知れ渡った、Energetics 視察と発熱現象の確認に至る話を中心に講義して、学術的発表の先頭を切った。有名となった、Energetics+SRI+ENEA の共同研究の成果(発熱、材料分析、ヘリウム)の概略が述べられた。注目されたのは、神戸グループ(神戸大とテクノバの共同研究)のPd ナノ粒子と重水素(軽水素同時並行運転)でのガス吸蔵法による実験結果(PLA373(2009)3109 に刊行)を大きく採り上げて紹介したことである。
■引用終了
ここでもダンカン博士が登場してます。すっかり常温核融合研究者になってしまったみたいですね。この熱中しやすい感じが結構好きです(笑)。

■引用開始
理論のセッションに入れられていたが、A. Takahashiの神戸グループのナノPd 複合粒子パウダーを用いた重水素・軽水素同時ランによるD(H)吸蔵率測定と発熱のデータおよびその背景物理の報告は、ICCF15 でも最も注目された評判の良い発表のひとつであった。
■引用終了
これは「著名論文誌Physics Lettersに固体核融合(常温核融合)論文掲載」で紹介した、北村博士の論文と同じものなのかもしれません。

■引用開始
初日の夕方は、Energetics 社(イスラエル)がホストをしたレセプションが、バチカンの近くにあるサンタンジェロ城にて行われた。レセプションのハイライトは、ISCMNS が新しく設定した「Minoru Toyoda Gold Medal」(MTGM: 国際凝集系核科学会の豊田稔記念金メダル)の第一回受章者Martin Fleischmannへの授賞式であった。MTGM のいきさつが、故豊田稔氏のCMNS/CF 振興への大きな貢献の紹介を含めて、提案者の前ISCMNS 会長のA. Takahashi より紹介されたのち、絶大なる祝福の中でFleischmannに金メダルが手渡された。この賞の紹介は、ISCMNS のweb-site に見られる。
■引用終了
英国の凝集体核科学国際学会の「豊田稔ゴールドメダル」」でも紹介したメダルがフライシュマン博士に授与されました。療養しているフライシュマン博士が会場に現れるとは意外でした。これもCBS番組の賜物でしょうか。今回の心温まるニュースです。

■引用開始
続いて、K. Grabowski (NRL, USA)がMHI型核変換実験の追試結果を発表した。MHIで作製した試料を用いてNRLで実験したが、Cs→Prの核変換を確認できなかった。
■引用終了
この件は、Jed Rothwell氏の「Notes on ICCF15, part 1」にも大きく取り上げられていました。岩村博士の実験の信頼性が揺らいでおり(黄信号)、今後の追試の続報に要注意です。

■引用開始
次回のICCF16はインドのChennaiでM. Srinivasanの主催により2011年2月に開催される予定となった。それに先立つ2010年6月にはTorinoでworkshop on gas-loading methodの開催がイタリアのグループにより計画されている。
■引用終了
来年6月にトリノでガスローディング方式のワークショップが開催される可能性があるのですね。2011年2月は遠いなぁと思っていたので、間近の楽しみが増えて良かったです。

以上

2009年10月22日木曜日

Jed Rothwell氏による常温核融合論文の集計

ちょっと見ただけですが、LENR-CANR.orgのライブラリで面白い論文を見つけたのでメモ書きします。
Jed Rothwell氏が常温核融合論文類の集計結果をまとめたものです。

Rothwell, J., Tally of Cold Fusion Papers. 2009, LENR-CANR.org.

Aarhus University(オルフス大学)のDieter Britz氏の論文コレクションとLENR-CANRのデータベースに記録されている論文が対象となっています。

例えば、P6には、過剰熱の検出に成功した査読あり論文の件数が載っています。153本の論文が49種類の論文誌に投稿されており、筆頭執筆者は62名、共同執筆者まで含めると348名との事。この62名の筆頭著者を国別に分類したのが下表(P8のTable 3から内容を転載)です。

筆頭執筆者数
Bulgaria(ブルガリア)1
China(中国)3
France(フランス)2
India(インド)5
Italy(イタリア)7
Japan(日本)17
Korea(韓国)1
Russia(ロシア)5
Sweden(スウェーデン)1
Turkey(トルコ)1
USA(米国)19

これを見ると、1位は米国(19)、2位は僅差で日本(17)。少し離れてイタリア(7)、ロシア(5)、インド(5)、中国(3)と続いています。

一方、以下のリンクに、今まで15回開かれたICCFの開催地の一覧が載っています。

これを国別に集計すると以下のようになります。次回のICCFはインドで開催されるそうですが、上記の筆頭執筆者数と照らし合わせると、意外に順当な選択に見えますね。

開催回数
USA(米国)4
Italy(イタリア)3
Japan(日本)3
Monaco(モナコ)1
Canada(カナダ)1
China(中国)1
France(フランス)1
Russia(ロシア)1

以上

2009年10月20日火曜日

水爆と水素吸蔵金属

今回は本題とは関係ない話題です。
常温核融合現象には、母体固体として水素を吸蔵する金属が良く登場します。パラジウム、ニッケル、チタンはこの金属の仲間です。

この金属の仲間が意外な所で使われていた事を知りました。

常温核融合を否定するパーク博士は論文を読んでなかった?」で取り上げた「わたしたちはなぜ「科学」にだまされるのか」という本を図書館で借りてパラパラと見ていたら以下のような記述がありました。パーク博士がフライシュマン博士のインタビューを聞いて憤慨する場面です。
■引用開始
わたしは、耳を疑った。とんでもない、金属内の水素同位体の高濃度については、長年、研究が進められてきた。それどころか、チタン、スカンジウム、エルビウムなどの金属内の水素同位体は、パラジウム内の水素同位体の二倍から三倍の濃度にもなる。これらの金属は、核兵器のある部分で、重水素と三重水素(原子核に二個の中性子がある、水素の放射性同位体)を蓄えるために利用されており、完璧に安定している。
■引用終了
「核兵器のある部分」とは何なのかと思って検索してみたら、どうやら水爆(水素爆弾)の中核部分のようです。
リチウム (Li) という原子番号3の元素もアルカリ金属の一つで、水素と化合して「水素化リチウム」になる性質を持っています。Wikipediaの「水素化リチウム」の項を見ると、「重水素化リチウム(化学式:LiD)は核融合兵器の主原料の一つである」とあります。同じくWikipediaの「水素爆弾」の項を見ると、重水素と化合させた「重水素化リチウム」に、原爆による高温・高圧と中性子を浴びせかけるのが最も標準的な水爆の構成らしいとの事。「重水素と共に用いられるリチウムが、原爆から発生する中性子により三重水素に核種変化するので、重水素化リチウムを使用した水爆では三重水素は不要になる。リチウムの原子核に中性子を当てるとヘリウム4と三重水素の原子核が形成される」とあります。どうやら、製造が難しいトリチウム(三重水素)を使わずとも水爆を作れるように工夫した結果のようです。

こういう使い方がされていたとは意外でした。水爆の中で使われた実績を知っていたために、「完璧に安定している」という思い込みが発生したのかもしれませんね。

但し、リチウムについて言うと、体心立方格子(BCC)構造を持っており、リチウムを母体固体とした常温核融合現象は検出されていないようです。「「常温核融合」を科学する」(小島英夫著)には、「表2-1で、常温核融合現象の起こる母体固体は、面心立法(fcc)の「Pd」や「Ni」と六方稠密(hcp)の「Ti」の水素化合金で、体心立方(bcc)水素化合金では起こりません」(P55)とあります。

以上

2009年10月18日日曜日

ICCF-15に関する記事(3)

前回の記事でリンクだけ張ったJed Rothwell氏の記事「Notes on ICCF15, part 1」から興味深い部分を引用させていただきます。以下、※を付けた文は私の感想です。

[Vo]:Notes on ICCF15, part 1
Jed Rothwell
Mon, 12 Oct 2009 06:45:43 -0700
■引用開始
Many new and important results were presented. In contrast to recent conferences, there were no rehash presentations of research done long ago or results presented at earlier ICCF conferences, although many described progress or incremental improvements to work presented earlier. Both the audience and the presenters included many younger people, especially from the U.S. Navy, the ENEA and Japanese universities. By "younger" I mean people in their 30s and 40s, rather than retired professors in their 70s.
■引用終了
赤字部分の勝手な和訳:
聴衆にも発表者にも多くの若い人々が見受けられ、特に米国海軍研究所、ENEA、日本の大学からの参加が目立っていた。ただ「若い」と言っても30代や40代の事であり、70代の退任した教授達と比較しての話である。

※30代・40代の研究者が増えたのは朗報だと思います。常温固体核融合研究の一番の懸念は研究者の高齢化だったので、若い新規参入者が増えるのは素晴らしい事だと思います。
■引用開始
There appears to be lot of new funding for the research, perhaps a million dollars or more per year. That's a lot by the standards of cold fusion. There may be more effective funding now than there has been since 1990. I cannot judge whether the dollar amounts are greater, but the talent and instruments being brought to the subject are the best they have ever been, with people from the NRL and two or three U.S. universities with capabilities that rival long-time researchers at SRI and the ENEA.
■引用終了

赤字部分の勝手な和訳:
研究に対して新たに多額の投資が集まったようだ。おそらく年間100万ドル(約1億円)かそれ以上の額ではないだろうか。これは、常温核融合の標準からすれば十分に多額なのだ。1990年代に行われた投資に比べると今の投資はずっと効果的だろう。この金額がかつての投資金額を上回っているかどうかは分からないが、過去最高の人材と設備が集まってきている。NRLや2、3の米国の大学の人材や能力は長年にわたって研究を続けているSRIやENEAに匹敵するものがある。

※これも良いニュースです。熱核融合の予算に比べれば雀の涙かもしれませんが、政府機関や企業の認知が進んでいる事を示していると思います。
■引用開始
(I have to be circumspect about some aspects of this report, such as describing which universities are doing what. They have not yet gone public. They do not want to alert people such as Robert Park who oppose cold fusion. Park and others like him try to derail funding and destroy the researchers' reputations by various methods such as publishing assertions in the mass media that the researchers are frauds, lunatics and criminals.)
■引用終了
赤字部分の勝手な和訳:
このレポートのある部分は慎重に書かなければならない。例えば、どの大学が何をしているかについての記述だ。これらはまだ公になっていない。研究者は、ロバート・パークのような常温核融合に反対する人間に警戒体制を取らせたいとは望んでいない。パークや彼に類する人達は、投資を頓挫させ、研究者の評価をぶちこわそうとする。例えば、研究者が詐欺師、変人、犯罪者だとマスメディアで主張するといった様々な手段を使って。

※ロバート・パーク博士については、「常温核融合を否定するパーク博士は論文を読んでなかった?」でも取り上げましたが、常温核融合研究をまるで親の敵のように思っているようです。ニセ科学だと非難する人が必ずしも科学的とは限らない皮肉な例になっています。常温核融合の研究者側にも積年の恨みがある感じですね。Jed氏の記事はまだまだ続きますが今日はこの辺で終わります。

以上

ICCF-15に関する記事(2)

前回の記事でICCF-15に関する記事を拾ってみましたが、
に様々なレポートへのリンクが紹介されていました。
この中に、vortex-lという常温固体核融合関連のメーリングリストのアーカイブへのリンクがあり、投稿された記事に、おなじみのJed Rothwell氏のICCF15報告が載っていました。残念ながら(^^;、英文です。

[Vo]:Notes on ICCF15, part 1
Jed Rothwell
Mon, 12 Oct 2009 06:45:43 -0700

[Vo]:Notes on ICCF15, part 2
Jed Rothwell
Mon, 12 Oct 2009 07:03:26 -0700

また、LENR-CANRのニュースページにも簡単な記事が出ています。
■引用開始
The conference was sponsored by the ENEA (the Italian National Agency for New Technologies Energy and the Environment), the Italian Physical Society, the Italian Chemical Society, The National Research Council (CNR), and Energetics Technologies. The conference opened with brief lectures by the presidents of the Physical and Chemical societies. One hundred fifty four people attended, with more young researchers in attendance compared to previous ICCF conferences. Many new and significant experimental results were reported, in addition to several successful replications of the Arata nanoparticle gas loading technique. Arata himself reported increased heat from a new cell design and improved calorimetry.
■引用終了
上記記事によると、ICCF-15は、以下の団体が後援しているとの事(各団体のホームページへのリンクと括弧内の日本語訳は私が勝手につけたものです)。
ENEA (イタリア新技術エネルギー環境公団)
Italian Physical Society (イタリア物理学会)
Italian Chemical Society (イタリア化学会)
National Research Council (イタリア学術研究会議)

一番嬉しいニュースは上記の赤字で示した部分にある「154名が参加した。前回までのICCFに比べて若い研究者の参加が増えた。」という所でしょうか。「多くの新しく重要な実験結果と共に、荒田博士のナノ粒子を使ったガスローディング方式の複数の追試成功例が報告された。荒田博士自身は、新しいセルデザインと測熱方法の改善による熱量増加結果を報告していた。」ともあります。
引き続き引用します。
■引用開始
The conference revealed interest in the subject at a growing number of university and government laboratories in several countries. For example, impressive results were reported by researchers at the ENEA, SRI and U.S. Naval Research Laboratory (NRL), Kobe University and elsewhere. Better instruments, such as high precision microcalorimeters and custom designed mass spectrometers have been used to confirm the results and to characterize improved materials, leading to larger and more reproducible excess heat and other effects. As a result, better understanding about how the novel process works is being achieved.
■引用終了
今回の会議では、複数の国々の大学や国立の研究所がこのテーマに関心を持っている事が明らかになったとの事です。例として、後援しているENEAの他、SRIやNRL(米国海軍研究所)、神戸大学の名前が挙がっています。
後になって振り返ると、2009年は常温固体核融合が有望な学問領域として世界に再認知された「分岐点」となる年として記録されるかもしれませんね。

以上

2009年10月14日水曜日

ICCF-15に関する記事--気がついたものを拾ってみました

英語をちゃんと読んでないので(^^;、どういうサイトなのかサッパリ分かってないのもありますが、ICCF-15に関する記事が載っていた所を挙げておきます。もしかして、変なサイトだったらご容赦ください。

[1] NEXT BIG FUTURE
「ハイライト」として、荒田博士の発表が挙がっています。
赤字は引用者によります。

Highlights of the 15th Cold Fusion - Condensed Matter Nuclear Science Conference

■引用開始
OCTOBER 12, 2009
Highlights of the 15th Cold Fusion - Condensed Matter Nuclear Science Conference

On page 43 of the abstracts

Does Gas Loading Produce Anomalous Heat?

David A. Kidwell, Allison E. Rogers, Kenneth Grabowski, and David Knies
Chemistry Division, Naval Research Laboratory, Washington, DC 20375;
Materials Science and Technology Division, Naval Research Laboratory, Washington, DC 20375


On page 37, more work from Arata. Arata had previously published some of the best results in cold fusion. Where excess heat was generated even without heat being added.

PRODUCTION OF HELIUM AND ENERGY IN THE “SOLID FUSION”
Y. Arata, Y.C. Zhang, and X.F. Wang
Center for Advanced Science and Innovation, Osaka University
2-1 Yamadaoka, Suita, Osaka, 565-0871, Japan
・・・
■引用終了

[2] LaRouche
Dr. Stormsさんに取材したみたいです。

■引用開始
Deuteron Theory of Cold Fusion Proposed in Rome
October 5, 2009 (LPAC)--A new theory of cold fusion is being proposed at an international conference currently underway in Rome, according to an advance report from radiochemist and materials expert Dr. Edmund Storms.
・・・
■引用終了

[3] New Energy Times Blog
赤字は引用者によります。
新しい結果は幾つかあったが、多くは古株達のいつもの発表だった・・・と辛口で始まってますが、2~3の興味深い発表があった、詳細は後でね・・・と気を持たせる事が書いてあります。楽しみに待ちましょう。

■引用開始
Science at ICCF-15?
by Steven B. Krivit

ROME - Yes, there was some new science presented here but not much. A lot of regurgitating of old stuff. A lot of struggles to wrap fusion theories around results that don’t look like fusion. Is that science or is that fantasy?

Light-water results, which effectively negate the fusion hypothesis, were effectively discouraged from ICCF years ago. Transmutation results, which also negate the fusion hypothesis, are now being strongly discouraged from ICCF.

I did find a few new interesting presentations and those articles are forthcoming.

The field, in general, holds its ground this week as a result of this conference, but it gains no new ground. Back to the drawing board.
■引用終了
以上


2009年10月12日月曜日

常温核融合を否定するパーク博士は論文を読んでなかった?

物理学者のロバート・パーク博士が著した「わたしたちはなぜ「科学」にだまされるのか」(※1)という本では、常温核融合がニセ科学と言われているようです。この本を入手できていないのですが、Amazonの「商品の説明」を読むと、ニセ科学認定されているのは間違いなさそうです。

ちょっと検索してみると、以下のような雑誌の記事が見つかりました。パーク博士は常温核融合を目の敵にしておられたようです。

Make: Technology on Your Time Volume 03 オライリー・ジャパン 編集

P41から
■引用開始
ロバート・パーク(Robert Park)は、米国物理学協会(APS、American Physical Society)のPRライターだが、誰かの主張することが「疑わしい」と感じたら、それを主張した人間をひどく中傷、嘲笑し、徹底的に痛めつけることで知られている。ヴァローネが開催する会議に、かつてロスアラモス国立研究所に在籍し、常温核融合の可能性を主張している科学者が出席するということが彼にはどうしても気に入らなかったらしい。政府の施設にそのような「異端者」が招かれることが納得できなかったパークは、国務省の科学アドバイザーに就任したばかりのピーター・ジマーマン(Peter Zimmerman)と接触した。その結果、ジマーマンは自らに公式に与えられた権限を行使して、会議を中止に追い込んだ。
■引用終了
物理学者がどういう論拠で常温核融合をニセ科学としているのか興味があったので更にGoogleで検索してみた所、面白い事が分かりました。

この、Robert Park(=Bob Park)氏が執筆している「What's New」というホームページは毎週金曜日に新しい記事が発行されるようです。2009年3月27日の記事の最後に、「But I think it's science.(しかし、それ(常温核融合)は科学だ)」という一文があります(括弧内は私の勝手な和訳です)。なんと、パーク博士はニセ科学認定を撤回し、本物の科学だと言っているのです。

Friday, March 27, 2009

■引用開始(赤字・太文字は引用者が付加)
4. COLD FUSION: TWENTY YEARS LATER, IT'S STILL COLD.

Monday was the 20th anniversary of the infamous press conference called by the University of Utah in Salt Lake City to announce the discovery of Cold Fusion. The sun warmed the Earth that day as it had for 5 billion years, by the high temperature fusion of hydrogen nuclei. Incredibly, the American chemical Society was meeting in Salt Lake City this week and there were many papers on cold fusion, or as their authors prefer LENR (low-energy nuclear reactions). These people, at least some of them, look in ever greater detail where others have not bothered to look. They say they find great mysteries, and perhaps they do. Is it important? I doubt it. But I think it's science.
■引用終了

更に、この件は常温核融合を肯定的な立場から報じている「New Energy Times」で取り上げられていました。


このページの中に、先ほどの「What's New」の記事が引用され、以下のような題名が付けられています。(括弧内は私の勝手な和訳です)

Bob Park Concedes: LENR is Real Science
(ボブ・パーク敗北を認める: LENRは本物の科学だ)

更に、パーク博士が「Is it important? I doubt it.(それ(常温核融合)は重要だろうか? そうは思わないね)」と書いている事を皮肉って、J.B.S.ホールデン博士の以下の警句が引用してあります。

"Theories have four stages of acceptance:
(理論は4つの段階を経て認知される)
i. this is worthless nonsense,
(第一段階:馬鹿馬鹿しい話だ)
ii. this is interesting, but perverse,
(第二段階:面白そうだけど道理に反してるね)
iii. this is true, but quite unimportant,
(第三段階:本物だな。でもちっとも重要じゃない)
iv. I always said so."
(第四段階:俺はいつもそう言ってたじゃないか)
- J.B.S. Haldane

現状、パーク博士は上記の第三段階のようなので、もう少しすると「I always said so.」になるかもしれませんね(笑)。

ニセ科学説から本物の科学説へ転向したとしても、以前はどういう論拠でニセ科学と考えていたのか知りたくなります。そう思って更に検索していると、「常温核融合って論文は書かれてるの?」のエントリでも引用させていただいたJed Rothwell氏がRobert Park博士について言及したコメントを発見しました。以下、引用します。

SUNDAY, NOVEMBER 30, 2008
Bob Park roasts cold fusion, again

■引用開始(括弧内の和文は私の勝手な和訳です)
Jed Rothwell said...
Robert Park told me that he has never read a paper on cold fusion. I doubt that he has read anything, because in his many attacks on the subject, he has never once offered a technical argument against the experiments, but only ad hominem attacks against the researchers.
(ロバート・パーク博士は常温核融合に関する論文は一切読んだ事がないと私(=Jed氏)に言ってた。私も彼が何か読んだとは思えない。なぜなら、常温核融合問題について彼が攻撃する時には、一回も実験に対する技術的な議論をした事がないからね。いつも研究者に対して人身攻撃するんだ)

Since you worked at Exxon, perhaps you will be interested in this paper:

http://lenr-canr.org/acrobat/Lautzenhiscoldfusion.pdf


You will find a list of 3,000 other papers at this site, along with ~500 full text papers.

- Jed Rothwell
Librarian, LENR-CANR.org
■引用終了
如何でしょうか?
Jed氏の言葉を信じるならば、物理学者であるにも関わらず、多数出ている論文を一切読まずにニセ科学と決めつける。そして、世の中の認知が進んでくると、本物の科学だったみたいだね~等と言い出す。素人ながら、こういう態度こそが「ニセ科学」的なのだと怒りを感じます。

以上


(※1) 「わたしたちはなぜ「科学」にだまされるのか」
■引用開始
わたしたちはなぜ「科学」にだまされるのか―ニセ科学の本性を暴く (文庫)
ロバート・L. パーク (著), Robert L. Park (原著), 栗木 さつき (翻訳)

商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
人々を騒がす「UFO」騒動、政府や大企業が莫大なカネをつぎ込んだ「常温核融合」開発、「ビタミンOってなに?」本当に効きそうな「磁気治療法などの健康医療」、正確なデータのない「電磁波の影響」問題など―あなたのそばで、あなたを狙う「科学の顔」をしたニセ科学の素顔を暴いた話題の書、待望の文庫化。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
パーク,ロバート・L.
物理学者(物理学博士)。専門は結晶構造。メリーランド大学物理学部教授。アメリカ物理学会会員

栗木 さつき
翻訳家。慶應義塾大学経済学部卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報
文庫: 458ページ
出版社: 主婦の友社 (2007/09)
ISBN-10: 4072589802
ISBN-13: 978-4072589809
発売日: 2007/09
商品の寸法: 15 x 10.8 x 2.2 cm
■引用終了

2009年10月7日水曜日

地下への注水で地震が引き起こされる

昨日の記事で、「地下への注水により地震が起こった例」が沢山あると述べました。俄には信じがたい話なのですが、実は地震学の分野では良く知られた話らしいのです。

この例が地震学者の島村英紀博士のホームページに載っています。少し長いのですが、引用させていただきます。赤色は全て引用者である私がつけたものです。

人間が起こした地震
■引用開始
 米国コロラド州のデンバー市のすぐ北東で深い井戸を掘って、放射性の汚染水を捨てたことがある。米空軍が持つロッキー山脈兵器工場という軍需工場の廃液であった。それまでは地表にある貯水池に貯めて自然蒸発させていた。厄介ものの汚染水を処分するには自然蒸発よりはずっといい思いつきだと思って始めたのに違いない。井戸の深さは3670メートルもあった。大量の汚染水を捨てるために、圧力をかけて廃水を押し込み始めた。

 この廃液処理を始めたのは1962年3月のことだ。3月中に約16,000トンもの廃水が注入された。

 四月になって間もなく、意外なことが起きた。もともと1882年以来80年間も地震がまったくなかった場所なのに、地震が起きはじめたのだった

 多くはマグニチュード4以下の小さな地震だったが、中にはマグニチュード5を超える結構な大きさの地震まで起きた。マグニチュード5といえば、松代での群発地震の最大の地震に近い大きさだ。もともと地震活動がごく低いところだから、生まれてから地震などは感じたこともない住民がびっくりするような地震であった。人々はこの工場での水の注入が地震を起こしていることに気づき、ちょっとした騒ぎになった。

 そこで、1963年9月いっぱいで、いったん廃棄を止めてみた。すると、10月からは地震は急減したのである

 しかし、廃液処理という背に腹は替えられない。ちょうど1年後の1964年9月に注入を再開したところ、おさまっていた地震が、突然再発したのである

 そればかりではなかった。水の注入量を増やせば地震が増え、減らせば地震が減ったのだ。1965年の4月から9月までは注入量を増やし、最高では月に3万トンといままでの最高に達したが、地震の数も月に約90回と、いままででいちばん多くなった。水を注入することと、地震が起きることが密接に関係していることは確かだった。

 量だけではなく、注入する圧力とも関係があった。圧力は、時期によって自然に落下させたときから最高70気圧の水圧をかけて圧入するなど、いろいろな圧力をかけたが、圧力をかければかけるほど、地震の数が増えた

 このまま注入を続ければ、被害を生むような大きな地震がやがて起きないとも限らない。このため地元の住民が騒ぎ出し、この廃液処理計画は1965年9月にストップせざるを得なかった。せっかくの厄介者の処理の名案も潰えてしまったのであった。

 地震はどうなっただろう。11月のはじめには、地震はなくなってしまったのであった。

 こうして、合計で60万トンという廃水を注入した「人造地震の実験」は終わった。誰が見ても、水を注入したことと、地震の発生の因果関係は明かであった
■引用終了
上記は米国での事例ですが、日本でも実験をした例が上記のホームページに記載されています。
■引用開始
 日本でも例がある。前に話した長野県の松代町では、群発地震が終わったあと、1800メートルの深い井戸を掘って、群発地震とはなんであったのかを研究しようとした。その井戸で各種の地球物理学的な計測をしたときに、水を注入してみたことがある。

 このときも、水を入れたことによって小さな地震が起きたことが確認されている。しかもこのときは、米国の例よりもずっと弱い14気圧という水圧だったのに、地震が起きた
■引用終了
この松代町の注水実験については、以下にも状況が記されています。

日本の群発地震(Earthquake Swarms in Japan)
■引用開始
◇松代における毎日の有感地震回数の変化は、1966年に 2回の活動期があり、その後は徐々に沈静し、1970年末には、ほとんど終熄した。
1970年末までに震度I=57627回、II= 4706回、III=429回、IV= 50回、V=9回、有感地震総計 62821回、全地震数711341回である。 1つの地震の規模で最も大きいのは M=5.4で、地震の全エネルギーは、規模 6.4の地震 1つに相当する。
岩の中に注水すると地震が生じやすくなるという、いくつかの事例を検証するためにわが国ではじめての試錐が1969年から国民宿舎松代荘ではじまり、1933m(深さ1800m)掘って、1970年 1月15日~18日、 1月31日~ 2月13日の 2回にわたり計2883立方メートルの水を注入した。
その結果注入地点の 3km北で、 1月25日02時ころから急に地震がふえ、この 1日で54回に達した。地震活動は注水中続き、注水後徐々におさまった。この地点での地震活動は注水前は 1日 2回くらいだった。[21]
■引用終了
さて、上記の例はいずれも人間が意図して水を地下に注入した例でしたが、ダムを造って、地面に水圧をかける事で意図せず地下に注水する事になり、それによって地震が引き起こされたと思われる例も複数挙がっています。島村博士のホームページから例を一つ引用します。
■引用開始
 このほか、意図して水を地下に注入したわけではないが、ダムを作ったために地震が起きたり、あるいは地震が増えたことが世界各地のダムで確認されている。

 米国のネバダ州とアリゾナ州にまたがるフーバーダムは高さ221メートルもある大きなダムだが、1935年に貯水を始めた翌年から地震が増え、1940年にはこのへんでは過去最大になったマグニチュード5の地震が起きた。地震の震源は地下8キロにあった。もちろんダムの底よりはずっと深い深さだ。しかし、これはダムを作ったために起きた地震だと考えられている。
■引用終了
上記の例以外にも、ダムに貯水してから周辺で地震が起きるようになった例が幾つも紹介されています。

地震被害の多い日本では、当然、こういった人造地震(誘発地震 induced seismicity)の研究を進め、ダム建設等に際しては事前に入念なリスク評価が必要になってくる筈です。しかし、何故かそういう状況にはないようです。徳山ダムに誘発されたと思われる地震で大きな被害が出てしまったら、取り返しがつきません。一刻も早く調査と対策が講じられるよう、色々な人に働きかけて行きましょう。

以上

2009年10月6日火曜日

徳山ダムが地震を誘発するリスクにご注意を

まえがき
今回は、常温固体核融合とは関係ないかもしれない話題のエントリです。
重要だと思っているので、しばらくこの話題を続けるかもしれません。区別をつけるため、常温固体核融合のエントリには「常温固体核融合」というラベルを付け、今回から開始する地下への注水と地震の関係についてのエントリには「地下注水と地震」というラベルを付ける事にします。

以下のブログの記事が常温核融合を疑似科学とみなしておられたようなので、コメント欄で議論させていただきました。

民主党と常温核融合

元々の話題は、風間直樹議員が2007年10月31日の災害対策特別委員会で行った質疑(※3)の是非でしたが、議論が混線してもいけないので当初は特にコメントするつもりはありませんでした。
しかし、この記事を見た後、昨晩、アエラ09年10月12号(No.47)(※1)を見て、非常にビックリしたので、先ほど追加でコメントさせていただきました。【追記:2009年10月12日01時現在、私の追加コメントはまだ表示されていないようです。私の入力ミスなのか、未承認なのかは分かりません。本論にはさして影響がないし、何を書いたかを正確に思い出せないので、コメントの再録は致しません。】

コメント欄ではうまく手短に表現できなかったので、改めてここで述べさせていただきます。

まとめ
(※1)に示したアエラの記事「ダムが地震を誘発する」(P75~77)には、08年5月に試験湛水が終わった徳山ダムの周辺で09年1月18日から9月30日までに約1000回もの地震が起こった事実が記されています。一方、07年4月に発行された山本寛氏の著書「仮説 巨大地震は水素核融合で起きる!」(※2)では、地下への注水により地震が引き起こされる現象が指摘されており、実に徳山ダム周辺で地震が起こるリスクが予想されていたのです。もし、山本寛氏の想定が正しいとすると、徳山ダム周辺では今後も地震が続き、最悪の場合、大地震が起こるリスクがあると考えます。
早急に有識者による対策会議が必要だと思うので、いささか大袈裟かもしれませんが、まず風間議員に本件を連絡するつもりでいます。今後の動向には要注意だと思います。

参考文献
補足
幾つかの調査・研究結果から、「地下に注水すると地震が起こる」という奇妙な関係性が指摘されています。地下への注水により地震が起こった例や、ダムに湛水した後、ダム周辺で地震が頻発するようになった例は実は沢山存在するのです。
この現象を説明する仮説を提示したのが上記の(※2)の著作です。この本には、地下に注入された水が、地中に含まれる金属成分で酸素を剥ぎ取られ、水素原子状になって、何らかのプロセスで水素核融合爆発を起こすのが地震の正体ではないかとの仮説が述べられています。この仮説自体は「仮説」に過ぎませんが、仮説の元となった水と地震の相関関係(事実提示)には注目すべきです。

驚くべき事に、(※2)の本には、徳山ダムが地震を引き起こす事が予想されています。アエラの記事(※1)で記された今年発生している事態が07年4月発行の本で予想されていたのです。

ちなみに、風間議員が質疑の中で述べている仮説は理解が間違っていると思います。しかし、風間議員の本来の質問の趣旨は、CO2貯留やダム建設のプロジェクトでは、必ず誘発地震の可能性とリスクを調査すべきだというもので、至極真っ当な見解だったと思います。
風間議員の主張は以下と理解しています。
  • 米国では水やCO2の地下への注入によって地震が発生する危険性がある事が公式に認知されていて、事業者が守るべき法律まで制定されている。
  • また、「ダムを造ると、その後地震が発生する」という報告もされており、地質調査所で以下のような結論をまとめている
    (1)貯水による誘発地震を考慮する必要がある。
    (2-1)自然に起きる最大の地震よりも大きな地震を誘発することはないだろう。
    (2-2)その地域で自然に起きる最大規模の地震の発生の可能性は高くなるかもしれない。
    (3)もしダムを建設するなら、ダム着工前に地震計を多数配置して基礎データを集める必要がある。
  • 既にこれだけの認識が米国にはあるのに、地震多発国日本では全く問題にされてないのはオカシイ。CO2貯留やダム建設のプロジェクトでは、必ず誘発地震の可能性とリスクを調査すべきだ。

以上