2009年10月20日火曜日

水爆と水素吸蔵金属

今回は本題とは関係ない話題です。
常温核融合現象には、母体固体として水素を吸蔵する金属が良く登場します。パラジウム、ニッケル、チタンはこの金属の仲間です。

この金属の仲間が意外な所で使われていた事を知りました。

常温核融合を否定するパーク博士は論文を読んでなかった?」で取り上げた「わたしたちはなぜ「科学」にだまされるのか」という本を図書館で借りてパラパラと見ていたら以下のような記述がありました。パーク博士がフライシュマン博士のインタビューを聞いて憤慨する場面です。
■引用開始
わたしは、耳を疑った。とんでもない、金属内の水素同位体の高濃度については、長年、研究が進められてきた。それどころか、チタン、スカンジウム、エルビウムなどの金属内の水素同位体は、パラジウム内の水素同位体の二倍から三倍の濃度にもなる。これらの金属は、核兵器のある部分で、重水素と三重水素(原子核に二個の中性子がある、水素の放射性同位体)を蓄えるために利用されており、完璧に安定している。
■引用終了
「核兵器のある部分」とは何なのかと思って検索してみたら、どうやら水爆(水素爆弾)の中核部分のようです。
リチウム (Li) という原子番号3の元素もアルカリ金属の一つで、水素と化合して「水素化リチウム」になる性質を持っています。Wikipediaの「水素化リチウム」の項を見ると、「重水素化リチウム(化学式:LiD)は核融合兵器の主原料の一つである」とあります。同じくWikipediaの「水素爆弾」の項を見ると、重水素と化合させた「重水素化リチウム」に、原爆による高温・高圧と中性子を浴びせかけるのが最も標準的な水爆の構成らしいとの事。「重水素と共に用いられるリチウムが、原爆から発生する中性子により三重水素に核種変化するので、重水素化リチウムを使用した水爆では三重水素は不要になる。リチウムの原子核に中性子を当てるとヘリウム4と三重水素の原子核が形成される」とあります。どうやら、製造が難しいトリチウム(三重水素)を使わずとも水爆を作れるように工夫した結果のようです。

こういう使い方がされていたとは意外でした。水爆の中で使われた実績を知っていたために、「完璧に安定している」という思い込みが発生したのかもしれませんね。

但し、リチウムについて言うと、体心立方格子(BCC)構造を持っており、リチウムを母体固体とした常温核融合現象は検出されていないようです。「「常温核融合」を科学する」(小島英夫著)には、「表2-1で、常温核融合現象の起こる母体固体は、面心立法(fcc)の「Pd」や「Ni」と六方稠密(hcp)の「Ti」の水素化合金で、体心立方(bcc)水素化合金では起こりません」(P55)とあります。

以上

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