2010年10月24日日曜日

AIP(米国物理学協会)が常温核融合の論文集発行をキャンセル(2)

AIP(米国物理学協会)が常温核融合の論文集発行をキャンセル」で書いた件ですが、キャンセルされた論文集の目次をJed氏がメーリングリストに投稿してくれました。

http://www.mail-archive.com/vortex-l@eskimo.com/msg40476.html
[Vo]:Cancelled Proceedings table of contents
Jed Rothwell
Fri, 22 Oct 2010 10:48:31 -0700


■目次開始(赤字は引用者による)
Low-Energy Nuclear Reactions
The Information Fundamental Source

Jan Marwan, Editor
Dr. Marwan Chemie

*Table of Contents*

*Preface *-- J. Marwan

*Introduction*
001 - Hot and Cold Fusion for Energy Generation
D. J. Nagel**

*Overview*
002 - What is real about cold fusion and what explanations are plausible?
E. Storms and B. Scanlan

003 - Cold Fusion, LENR, CMNS, FPE: One Perspective on the State of the Science Based on Measurements Made at SRI
M.C.H. McKubre and F.L. Tanzella**

*Excess Heat/Power and Calorimetry*
004 - Measurements of Excess Power Effects In Pd/D2O Systems Using a New Isoperibolic Calorimeter
M.H. Miles and M. Fleischmann

005 - Heat Evolution from Pd Nanopowders Exposed to High - Pressure Hydrogen Isotopes and Associated Radiation Measurements
A. Kitamura, A. Takahashi, Y. Sasaki, Y. Miyoshi, A. Taniike, R. Seto and Y. Fujita

006 - Absorption Capacity and Heat Evolution with Loading of Hydrogen Isotope Gases for Pd Nanopowder and Pd/Ceramics Nanocomposite
T. Hioki, H. Azuma, T. Nishi, A. Itoh, S. Hibi, J. Gao, T.Motohiro and J.Kasagi

007 - Codeposition Methods: A Search for Enabling Factors
D. Letts

008 - Impact of an Applied Magnetic Field on a High Impedance Dual Anode LANR Device
M. R. Swartz,

009 - Detection of Abnormal Quantity of Hydrogen upon Electrical Explosion of Titanium Foil in a Liquid
L. I. Urutskoev, D. V. Filippov, Anri A. Rukhadze, Larion A. Lebedev

010 - Studies on Anomalous Phenomena of D/Pd Systems using a Gas-loading Process — A Stride towards Neutrino Detection
Z. M. Dong, C. L. Liang, B. Liu, Q. M. Wei, J. Tian, S. X. Zheng, J. Z. Yu, and X. Z. Li

*Nuclear Transmutation and Nuclear Ash*
011 - Observation of Low Energy Nuclear Transmutation Reactions Induced by Deuterium Permeation through Multilayer Pd and CaO thin Film
Y.Iwamura, T.Itoh, N.Yamazaki, J.Kasagi, Y.Terada, T.Ishikawa, D.Sekiba, H.Yonemura and K. Fukutani

012 - Low Energy Nuclear Reactions and Transmutation of Stable and Radioactive Isotopes in Growing Biological Systems
V. I.Vysotskii and A. A. Kornilova

013 - Neutron Emission in Bursts and Hot Spots: Signature of Micro - Nuclear Explosions?
M. Srinivasan

014 - Review of Twenty Years of LENR Research Using Pd/D Co-Deposition
P. A. Mosier-Boss, L.P.G. Forsley, F. E. Gordon, J. Y. Dea, and M. H. Miles

*Materials Science Behind the Fleischmann Pons Effect*
015 - Material Science Behind the Fleishmann & Pons Effect
V. Violante, F.Sarto, E. Castagna, S. Lecci, G. Hubler, D. Knies, K.Grabowski, M. McKubre, F. Tanzella, T.Zilov

016 - The Role of Cathode's Surface Properties in Electrochemical Excess Heat Experiments
F. Sarto, E. Castagna, S. Lecci and V. Violante

*Theoretical Approach*
017 - Bose-Einstein Condensate Theory of Deuteron Fusion in Metal
Y. E. Kim

018 - Energy Exchange Using Spin-Boson Models with Infinite Loss
P. L. Hagelstein and I. U. Chaudhary

019 - Concerning The Role Of Electromagnetism In Low Energy Nuclear Reactions
S. R. Chubb

020 - Weight of Evidence for the Fleischmann–Pons Effect
R. Johnson and M. Melich

021 - Tunneling Beneath The 4He* Fragmentation Energy
A. Meulenberg and K. P. Sinha

022 - Ultra-High Density Deuteron-Cluster Electrode for Low Energy Nuclear Reactions
G. H. Miley, X. Yang, and H. Hora

023 - Progress in Condensed Cluster Fusion Theory
A. Takahashi

024 - Inhibition of LENR by Hydrogen within Gas Loaded Systems
D. Cravens

025 - Dynamics In Pd-H(D) Systems
A. De Ninno

*Sonofusion*
026 - Model for Sonofusion
R. S. Stringham
■目次終了

このキャンセルについては、編者であるJan Marwan博士がAIPに対して理由を問い合わせたメールの内容が公開されています。


これに対するAIPからの回答は以下です。



以上

Energetics Technologies社、米国に移って活動(2)

Energetics Technologies社、米国に移って活動」で紹介したColumbia Daily Tribuneですが、「Cold fusion Will it work?」という記事も掲載しています。常温核融合への投資の動きを好意的に取り上げてくれていて(と思います)、嬉しい出来事です。

http://www.columbiatribune.com/news/2010/oct/11/cold-fusion/
THE TRIBUNE'S VIEW  Cold fusion   Will it work?
By HENRY J. WATERS III  Monday, October 11, 2010


この記事のコメント欄に何人かの懐疑論者が現れ、おなじみのJed Rothwell氏やEdmund Storms博士も登場して議論が盛り上がりました。中身が読めてないので、コメントできないのが残念ですが、Edmund博士の印象的なコメントがあったので引用します。


http://www.columbiatribune.com/news/2010/oct/11/cold-fusion/#c202506
■引用開始(日本語は引用者の勝手な和訳)
edmundstorms (anonymous) says...
A simple search of the internet will reveal that the following facts about cold fusion have been demonstrated:
少しインターネットを検索すれば、常温核融合に関する以下のような事実が分かります:
1. A large number of successful replications.
多数の成功した追試結果
2. High quality of measurements.
精度の高い計測結果
3. Large magnitude of observed effects.
観測された強い現象
4. Correlation between heat and helium production.
熱とヘリウム発生の間の相関関係
5. Unambiguous nuclear products.
明白な核反応の生産物
6. The effects can be initiated different ways using a variety of materials and methods.
現象は様々な素材と手法による何通りもの方法で引き起こされること
7. All conceivable artifacts have been examined and eliminated.
考えうる全ての影響要因が検討され除去されていること
8. Active programs are underway in eight countries plus several thousand publications are available, many in peer reviewed journals 
活発な研究活動が8カ国で行われ、数千の発行物が出ており、多くは査読論文誌に載っていること
This subject is too important to ignore based on ignorance. Please read the paper:
The status of cold fusion (2010), Naturwissenschaften, 97 (2010) 861.
この研究領域は非常に重要なので、無知による無視はすべきでない。ぜひ、The status of cold fusionという論文を読んで欲しい。
October 12, 2010 at 2:59 p.m. ( permalink | suggest removal )
■引用終了

これに対してJed氏がその論文の在処を示しています。PDFで37ページもある専門家向けの論文です。誰でもダウンロード可能です。

http://www.columbiatribune.com/news/2010/oct/11/cold-fusion/#c202540
■引用開始
jedrothwell (anonymous) says...
A preprint copy of the Storms paper "The status of cold fusion (2010)," Naturwissenschaften, 97 (2010) 861 is here:
http://lenr-canr.org/acrobat/StormsEstatusofcoa.pdf
October 12, 2010 at 3:48 p.m. ( permalink | suggest removal )
■引用終了

以上

2010年10月11日月曜日

ガスローディング方式の常温核融合ワークショップ(3)

Cold Fusion Nowという常温核融合への認知拡大を目指すウェブサイトがあって、盛んに活動されている事を以前にもご紹介しました。このウェブサイトの主催者であるRubyさんとメールのやりとりをしたら、ブログのFriendsの欄にリンクを張ってくれました。


このサイトも、多少分かりやすくするために以下を変更しました。
  • 題名を「素人が知りたい常温核融合」に変更。常温固体核融合は一般的な名称ではないので、通称名として良く使われている常温核融合を選択しました。
  • タグにも常温核融合を追加しました。
  • 右サイドにお勧めブログ、関連リンク、閲覧数のガジェットを追加しました。

さて、日本CF研究会のWhat's Newのページに、9月17日~19日にイタリアのシエナで行われたガスローディング方式の常温核融合ワークショップへの参加報告が載りました。神戸大学大学院海事科学研究科の北村晃博士による報告です。


この報告によると参加者は30名ほどだったようです。(以下、引用)
参加者は数名の 30 名弱であった。米国からは4 名、ロシア5 名、イギリス1 名、フランス2 名、そして日本からは高橋ISCMNS 前会長、澤田氏、日置氏、加藤氏、そして筆者の5 名であった。
以下の記述を見ると、荒田吉明博士の考案されたナノ粒子を用いた方式が広がりを見せているようです。(以下、引用)
実は前回までのワークショップ名は、#th International Workshop on Anomalies in Hydrogen / Deuterium Loaded Metals である。今回”Gas”が追加されている。これはConference Chaiman のF. Celani 自身の研究がガス系であることだけでなく、特に荒田名誉教授の実験以来多くの実験室でガス系、特にナノ粒子に注目したガス吸蔵方式を採用し始めたことを反映している。F. Celani とOrganizing Committee のW. Collis が冒頭でガス系の特徴と利点(高温動作の可能性、高安全性と綺麗さ、材料選択余地の大きさ等)をまとめたほか、J. P. Biberian (U. d’Aix-Marseille)、A. Kitamura / A. Takahashi (Kobe U. / Technova)、F. Celani (Nat. Inst. Nucl. Phys., Frascati)、D. Kidwell (Naval Res. Lab.)、O. Dmitriyeva (U. Colorado / Coolescence)、そしてT. Hioki (Toyota Central R & D Labs.)、V. Filimonov (Russia)の8 名が7 機関におけるガス系実験結果を発表した。
研究されている当事者も解決に向けての感触をつかまれているようです。それにしても、新しい研究というのは、実を結ぶまでに長い時間がかかるものですね。(以下、引用)
これらに共通するのは、「今までの物理化学では説明困難な大きさの発熱が認められる」ということである。その発熱の原因が核的なものであるという確たる根拠は現時点では得られていないが、いよいよここに至って、20 年間の問題の解決の糸口が見え始めたとの感がある。
以上

2010年10月10日日曜日

Energetics Technologies社、米国に移って活動

こちらは明るいニュースです。
「The Columbia Daily Tribune」というミズーリ州の新聞に常温核融合が大きく取り上げられました。

http://www.columbiatribune.com/news/2010/oct/09/cold-science-heats-up/



紹介されているのは、イスラエルのEnergetics Technologies社の常温核融合実験の状況です。米国CBSの"Cold Fusion is Hot Again"という番組で、ミズーリ大学のロバート・ダンカン博士が実験の真偽を確かめるために訪れたのが、この会社でした

記事によると、米国の「Life Science Business Incubator」が、Energetics Technologies社を迎えたようで、研究者が米国に移って実験を続けるようです。成果が出るのを期待しましょう。

以上

AIP(米国物理学協会)が常温核融合の論文集発行をキャンセル

今回は残念なお知らせです。

AIP(米国物理学協会)から常温核融合の論文集発行」でお知らせした論文集「LOW ENERGY NUCLEAR REACTIONS: The Information Fundamental Source」ですが、Jed Rothwell氏によると、突然、AIP側から出版がキャンセルされたそうです



以下、上記のJed氏のvortex-lメーリングリストへの投稿の主文を引用します。

■引用開始(訳文は私が勝手に訳したものです)
On October 5, the AIP sent the attached letter to Jan Marwan abruptly cancelling the New Energy Technology Symposium Proceedings. See the letter and a memo from Marwan, below.
10月5日に、AIPは突然に添付のような手紙をJan Marwan氏に送り、「the New Energy Technology Symposium Proceedings」の出版をキャンセルすると伝えました。この手紙とMarwan氏のメモは下に示します。
We will probably upload the papers from these proceedings to LENR-CANR.org.  We will probably do this soon, since the AIP's decision appears to be irrevocable.
私たちは、これらの論文をLENR-CANR.orgにアップロードするつもりです。AIPの決定は覆りそうにないので、おそらく、すぐにそうする事になるでしょう。
This is disappointing. Marwin did a lot of work on these proceedings, and they would have enhanced the status of cold fusion. We do not know why the AIP cancelled. I can speculate that someone opposed to cold fusion is behind the decision, but I have no knowledge of that.
これには失望しました。Marwin氏はこの論文集のために多大な作業をしてきました。この論文集は常温核融合の状況の改善に貢献したでしょう。私たちはAIPがキャンセルした理由を知りません。常温核融合に反対する誰かが決定の背後にいると推測できますが、私は何も情報を得ていません。
■引用終了

この論文集のAIPの該当ページは既に消されたらしく、ブラウザで以下のリンクを辿ってもエラーになります。


どうも物理学会には常温核融合を目の敵にしている実力者がいるようですね。科学者ならば論文に対して事実と論理で反論すべきだと思いますが、出版差し止めやら、論文も読まずに誹謗中傷やら、科学者らしからぬ動きには憤りを感じます。

以上

2010年10月3日日曜日

水トリー発生に伴なう放射線の計測

常温核融合は本当だった! その14」に出ていました。中部電力・熊澤孝夫氏らが原子力学会(9/15~9/17)で水トリー発生に伴なう放射線の計測に関する研究報告をされたそうです。

その論文も紹介されており、熊澤氏によると今回の発表のポイントは「①脈動的な日変化を観測、②課電中の放射線も課電終了後の残留放射線も同じ発生源」という事のようです。

H08 水トリー発生に伴う放射線の計測
H09 水トリー発生に伴う放射線の計測

この「脈動的な日変化」は、1日周期で反応が強まったり弱まったりしているように見える現象の事を指しています。別の常温核融合現象でも同じような1日周期の脈動が起こっている事を、水野忠彦博士とNagel博士が「Diurnal Variations in LENR Experiments」という題名でICCF-15で発表されています。

本件については、vortex-lのメーリングリストで、Jed Rothwell氏が話題にしていました。ICCF-15のAbstracts(PDF9.6MB)のP.97に載っている水野博士の報告を見ると、日本と米国の2箇所で行った異なる常温核融合実験で同じ24時間周期の反応が見られたとあります。これが確実だとすると、常温核融合現象は何かしら自然界の影響を受けている事になります。面白いですね。


ちなみに原子力学会のページは以下にあります。


以上