2014年12月31日水曜日

雷雲から検出されるガンマ線

今回は常温核融合研究と関係がありそうですが、別分野の記事を取り上げます。
Scientific Americanに載った以下の記事によると、雷が起こっている時には、実はX線やγ線も放出されているとのこと。観測機器の精度が上がって来て、どうやら多くの雷で起こっている現象だと分かってきたそうです。水野忠彦博士がグロー放電を使った過剰熱生成の実験を思い出してしまいますね。


この現象についての詳しい解説記事を日経サイエンスからダウンロード購入することができます。


有償の記事なので、以下に二箇所からごく一部を引用します。研究していくと様々な予想外の現象が発見されて、理論仮設の修正が続いているようです。自然界には解明できていない現象がまだまだ多いのですね。興味のある方はご購入ください。
2010年にはノルウェーのベルゲン 大学でデータの再解析が行われ,測定機器の飽和現象による影響を考慮する と,発生源の高度はより低いと考えら れることが明らかになった。結局,地球ガンマ線発生源の推定高度は2年足らずで50km以上も下降した。これほど急激なパラダイムシフトが起こるのは科学の世界では珍しい。
10年前に私たちがこの分野に足を踏み入れた当時,スプライトは大気中で高エネルギーの放射線を発生させる存在として一躍脚光を浴びていた。それが今では雷雲や様々な種類の大気発光,はたまた実験室で起こるスパーク現象まで,ほとんど何もかもが検出可能なレベルのガンマ線を出しているら しいと判明したのに,スプライトがそ の仲間に入っていないというのは皮肉な話だ。スプライトが放射できるエネルギーは低く,地球ガンマ線とは無関係というのが現在の定説になっている。
地球ガンマ線の研究は,雷鳴轟く嵐の中で凧を揚げて雷が放電現象であることを証明したといわれるフランクリ ン(Benjamin Franklin)の仕事を引 き継いでいるといえる。驚いたことに,フランクリンの凧揚げ実験から2世紀半がたった現在でも,雷雲からガンマ 線が出ている原因はおろか,通常の稲妻がどのようにして発生するのかさえ完全にはわかっていない。 
以上

ナノ銀担持骨炭によるヨウ素の除去実験

ナノ銀による放射線低減実験は、主として阿部宣男博士と岩崎信博士によって複数回実施報告が出されています(実験報告へのインデックスはここにあります)。今回紹介するのは、2011年に東京都水道局によって実施されたヨウ素の除去実験です。レポートを見るまでは、「放射性ヨウ素」を対象とした放射線の低減実験だと誤解していたのですが、実態は、非放射性ヨウ素の除去(吸着)実験でした。そして、ナノ銀担持牛骨炭が高いヨウ素除去性能を持っているとの結果が得られていました(但し、ナノ銀や牛骨炭の役割は分かっていません)。

今回、関係者から東京都水道局の出したレポート(以下)を見せていただいたので、私見を含めてまとめてみます。


1. 目的

「ナノ純銀粒子を担持した牛骨炭や御影石のヨウ素の除去性について検証した」とあります。
放射性ヨウ素の放射線の減衰を検証しようとしたのではなく、水道の原水からのヨウ素の「除去性」を検証目的として挙げている点に要注意です。水道局の関心がそこにあったのは当然だと思うのですが、私の期待とは少し違っていました。

2. 予備実験結果

このレポートには、「予備実験」と「本実験」の2つの実験結果が書かれています。
まず予備実験では、浄水場の原水に放射性ヨウ素を加えてヨウ素が減るかどうかを、高周波誘導結合型プラズマ質量分析計で確かめています。ここで、「放射性ヨウ素」を使っているのは以下の2つの理由によると考えます。
  • 実験の観点がヨウ素の除去性の評価にある。
  • 放射性ヨウ素は放射性物質の研究施設でなければ扱えない。
結果は以下の図に示されています。説明文を引用します。
御影石では約15%、牛骨炭では約60%の除去率であった。ナノ純銀粒子を担持させても、その支持体によって除去性が異なることが分かった。牛骨炭で除去率が高かった原因として、フッ素の除去方法である骨炭法と同様に、主にイオン交換により除去されると推測される。

どうやら、ナノ銀の関与は不明ながら、「ナノ銀担持牛骨炭」のヨウ素除去性能が高いようです。ちなみに、「骨炭法」を検索してみると、例えば、「生物系産業廃棄物からの活性炭製造と水処理への応用」といった報告が出てきます。骨炭がフッ素除去に効果があると述べられています。参考までに要旨を引用します。
現在,骨炭の国内での工業的な使用は製糖工場における糖液の脱色に限られているが,海外ではフッ素沈着病の予防法として飲料水中のフッ素除去に使われ始めている.一方,国内では半導体工場等から排出されるフッ素の問題が起きており,今後早急な除去対策が必要であると考えられる.従来のカルシウム沈殿法では新しい法規制値を満足させることが難しいため,フルオロアパタイト (FAP) 生成法に準じた方法として骨炭を選び,作製条件およびフッ素除去に関する検討を行った.
その結果,同一作製条件であっても骨の部位によっては大きな比表面積を持つものが得られ,特に肋骨から作製した骨炭は市販骨炭と同等のフッ素吸着能力を示した.

3. 本実験結果

本実験は、「流水中」での除去性確認を目的としたようです。ここでも、「放射性ヨウ素を定量した」とあります。結局、放射線低減効果については検証されなかったようです。

結果は以下の図に示されています。説明文を引用します。
牛骨炭で約50%、粒状活性炭新炭で約60%の除去率であり、その他の材料の除去率は低かった。牛骨炭は、主にイオン交換によりヨウ素を除去すると考えられることから、イオン交換能がなくなった後は再生処理(1%苛性ソーダ溶液を通水するなど)が効果を持つと見られる。

ここで最も効果の高かった「新炭」が何者なのかを知りたくなります。しかし、報告書本文に「粒状活性炭新炭」という記載がある他は組成についての記述がありません。阿部宣男博士に当時の事情を伺ったところ、詳細は不明ながら、当時水道局が持っていた濾過用の活性炭にナノ銀担持御影石やナノ銀担持牛骨炭を全部混ぜた「全部入り」濾過材だという話を聞いたとのことでした。そうだとすると、ヨウ素除去の主役はナノ銀担持骨炭だった可能性もあります。

4. まとめ

この実験結果について以下のように言えるでしょう。
  • 放射線低減の実験であると期待していたが、そうではなかった(放射性ヨウ素を使っておらず、放射線測定もしていない)。
  • 原水からのヨウ素の除去性を確認するための実験であり、効果を確認できた素材があった。
  • ナノ銀の関与は不明だが、ナノ銀担持牛骨炭はヨウ素の高い除去性を持つ素材のようだ。
放射線低減について分からなかったのは残念ですが、ナノ銀担持牛骨炭がヨウ素除去に役立つと分かったのは大きな成果ではないかと思います。今後、ナノ銀の関与や放射線への効果も含めて、この素材が原発事故時の飲料水の浄化に役立つかどうか検証が進むことを期待します。

以上

MFMPがFrancesco Piantelli博士との協調を発表

12月に発表されたもう一つのコラボレーションは、マーチンフライシュマン記念プロジェクト(MFMP)が著名な常温核融合研究者であるFrancesco Piantelli博士と協力するというものです。クリスマスの日にプロジェクト名 Project /Fedora\ として発表されました(半角の逆スラッシュが文字化けするので全角文字に変更してます)。


Piantelli博士は、ニッケル・水素系の常温核融合研究の先駆者として知られており、Lenr-Canr.orgのライブラリを検索すると多数のレポート・論文がヒットします。

site:lenr-canr.org/acrobat piantelli - Google 検索
https://www.google.co.jp/search?q=site%3Alenr-canr.org%2Facrobat+Piantelli

ニッケル・水素系の技術を使うロッシ氏とは特許取得を競う関係であり、Piantelli博士自身もNickenergy社というベンチャー企業を設立して事業化に取り組むように見えていました(下はNickenergy社の研究発表の様子です)。今回の発表を見ると、Piantelli博士は自分のノウハウをライブ・オープン・サイエンスを掲げるMFMPに伝授しようとしているようで、事業化よりも科学の発展に舵を切り直したのかもしれません。そうだとすれば、たいへん素晴らしいことだと思います。



Piantelli博士は以下のような立派な研究室を持っておられるようで、ここから生み出された常温核融合のノウハウがMFMPで活用されるのが楽しみです。



以上

Open Power AssociationがFrancesco Celani博士との協調を発表

12月に常温核融合研究の領域で大きなコラボレーションの発表が2つありました。
イタリアのUgo Abundo氏が率いるOpen Power AssociationがFrancesco Celani博士との研究協調を発表したのが一つ目です。

公式サイトは ここ にあり、発表文は ここ にあるのですが、イタリア語で書かれていて翻訳がたいへんなので、Cold Fusion Now!に掲載された英語翻訳記事を参照しています。


この発表文には以下のような記載があります(赤字は引用者による)。
In other words, it is as if you were in the presence of a new form / method (apart from the well-known Seebeck effect and / or Thompson) DIRECT CONVERSION from Heat to Electricity. From the point of view of scientific speculation, the role of Hydrogen understood as mono-atomic and / or even proton is a truly challenging idea. Obviously we’re just starting, though recent (December 15, 15:00) results show that the ignition temperature is not 150° C but only (about) 55° C. Some suggestions on the issue of “abnormal current” were provided to Francesco Celani also by some researchers, collaborators Open Power.
Open Power Associationは、2014年3月に以下のような写真を掲載しており、常温核融合装置Hydrobetatronから直接電力を取り出す試みをしているように見えました。上記の記載を見ると、従来からのゼーベック効果に対して何らかの付加ができると考えているようです(これは私の誤読かもしれませんが)。Celani博士が加わったことで研究が加速されると良いですね。



以上


2014年12月29日月曜日

Alexander G. Parkhomov博士のE-Catの独立追試

驚きのクリスマスプレゼントがロシアから届きました。
E-Cat Worldに報じられたところでは、ロシアの物理学者であるAlexander G. Parkhomov博士がE-Catと同じような装置での過剰熱検出に成功したレポートを12月25日に公開しました。過剰熱を検出しており、最大の入出力比(COP)は2.58を記録しています。また、実験の最後に加熱用の電気ヒーターが焼き切れてしまった後、8分間は1200℃程度の温度を保っており、もしかすると常温核融合現象の特長である「死後の熱(heat after death)」発生だったのかもしれません。

Parkhomov博士のリアクターの稼働写真

この追試は以下の点で非常に重要な意味を持つと思います。
  • ロッシ氏のE-Catを使ったのではなく、E-Catの構造を推測して独自にリアクターを作成して追試を行っている。MFMPなど、E-Catの追試を目指している人たちにとって、大きな励みとなる。
  • 実験に使った素材や方法は全て公開されている。ロッシ氏は商用化の権利問題から、実現方法を隠蔽しているため、今回公開された価値は大きい。
  • Parkhomov博士は、常温核融合研究者としては今まで知られていなかった。新たな研究者の参画なのかもしれない。
常温核融合ウォッチャーの間ではこの話題が急速に盛り上がっており、早速、元のロシア語資料を英訳する試みがスタートしました。Parkhomov博士はこの状況を見て、自身で英訳した文書をE-Cat Worldを通じて公開してくれました。とても興味深いレポートなので、私もこれを和訳してみました。PDFで以下に公開しましたので、もし何か問題があればコメント欄ででも教えていただけると幸いです。


以上

祝 30万ページビュー突破

ふとページビュー数を見たら、合計で30万ページビューを超えていました。
弱小ブログを見てくださっている読者の方々に感謝します。
常温核融合が認知され、世界に良い効果をもたらす日まで、倦まず弛まず続けて行きたいと思います。

以上

2014年12月23日火曜日

LENR-Citiesの常温核融合イベントが1月10日~11日に英国オックスフォードで開催

LENR-Citiesという常温核融合ベンチャーが、2015年1月10日~11日に英国のオックスフォードで常温核融合関連のイベントを開催します。



LENR-Citiesは、常温核融合に関するエコシステム構築の場を提供するベンチャーです。多くのベンチャーは常温核融合装置の開発を目指していますが、LENR-Citiesは常温核融合技術を核とした様々な技術・組織との連携に着目しているのです。今回のイベントで興味深いのは、スピーカーとして、エアバス社が参加している事です(以下の図の右端にエアバス社の名前が見えます)。いよいよ、エアバス社も常温核融合技術の重要性に気がついたのでしょうか。


また、注目したいのは、プログラムの中に「Nuclear transmutations & nuclear waste management(核変換と核廃棄物管理)」「Bio-remediation of radionuclied-contaminated waters(放射能汚染水の生物除染)」というテーマがある点です(和訳は引用者による)。これは、LENR-Citiesが、常温核融合のエネルギー源としての活用だけでなく、放射能除染への活用を視野に入れている事を示しています。スピーカーと講義内容に期待しましょう。


以上

Cold Fusion 101が来年1月20日から米国MITで開催される

今年に引き続き、2015年も常温核融合の学習コース「Cold Fusion 101」が米国MITで開催されます。開催期間は2015年1月20日~23日の4日間です。


主催するのは、MITのPeter Hagelstein教授とJET Energy社のMitchell Swartz博士です。Hagelstein教授はとても小型の常温核融合装置NANORを開発した事で有名です(Cold Fusion Now!に掲載されている以下の図は、NANORの過剰熱発生を記録したグラフです)。



昨年のCold Fusioin 101の講義の様子は、Cold Fusion Now!のJeremy Rys氏によってビデオ撮影されており、以下のページで見ることができます。

http://coldfusionnow.org/interviews/2014-cold-fusion-101/


以上




2014年12月16日火曜日

国際常温核融合学会 第19回大会 をイタリア政府が強力に支援

2015年4月にイタリアのパドヴァで開かれる国際常温核融合学会の第19回大会(通称ICCF-19)について、LENR Forumにてイタリア政府が強力に支援するとの発表があったと報じられました。


この件については、E-Cat Worldにも取り上げられており、プログラムのページに貼られた以下のマークが、イタリア政府からのスポンサーシップを示すものだと説明してくれています。


ここに来て、常温核融合の研究を政府が公式に後押しするようになってきました。常温核融合への認知が高まってきた証左だと言えるでしょう。

以上

2014年12月7日日曜日

水野忠彦博士の常温核融合実験の熱量測定検証

Cold Fusion Now!のJCF-15のレポートにも少し触れられていたのですが、水野忠彦博士が開発している常温核融合装置について、その熱量測定の方法を詳細に記したJed Rothwell氏のレポートが公開されました。
http://lenr-canr.org/acrobat/RothwellJreportonmi.pdf

中身を読む能力と気力がないので、写真だけをパラパラと見ただけですが、それだけでも面白いので、興味のある方は是非ご覧ください。例えば、以下のような装置の写真が載っています。
常温核融合を調べるまでは、熱量の正確な測定がこんなにも注意深く行う必要のあるものだとは思ってもいませんでした。奥の深さに驚いてしまいます。


レポートの中にリンクが記載されていますが、測定の生データやグラフもExcelシートとして公開されています。データが公開されるのは、素晴らしいことだと思います。
http://LENR-CANR.org/Mizuno/Mizuno2014-10-16.xlsx
http://LENR-CANR.org/Mizuno/Mizuno2014-10-20.xlsx
http://LENR-CANR.org/Mizuno/Mizuno2014-10-21.xlsx
http://LENR-CANR.org/Mizuno/Mizuno2014-10-22.xlsx
http://LENR-CANR.org/Mizuno/Mizuno2014-10-24.xlsx
http://LENR-CANR.org/Mizuno/Mizuno2014-11-20.xlsx

以上

11月に札幌で開催されたJCF-15のレポート

日本の常温核融合研究会の第15回年会(通称JCF-15)が去る11月1日~2日に札幌で開催されました。プログラムとアブストラクトは既に公開されています。今回の主催者は常温核融合研究者として著名な水野忠彦博士でしたが、共同主催者として、クリーンプラネット社の創設者である吉野英樹氏が名を連ねているのが、昨年までと大きく変わった点でしょう。この会議の様子がCold Fusion Now!にレポートされました。



ちなみに、吉野氏のプロフィールはクリーンプラネット社のホームページに載っています。


吉野氏によると、協調への機運が高まっていて、実証試験の可能性についてのヒントも色々と出てきているそうです。国内では常温核融合はいまだにニセ科学だと扱われる事が多くて残念なのですが、日本はグローバルに見て最も常温核融合研究が盛んな国の一つです。しかし、米国のインダストリアルヒート社が商用化に向けて大規模な投資に乗り出していたり、ビル・ゲイツ氏が常温核融合に投資するのではないかと見られている今日では、研究者の熱意にのみ頼っていたのでは取り残されてしまいます。日本でも早くこの科学技術への認知が進むことを願います。

クリーンプラネット社のギャラリーのページには、今回のJCF-15の写真が掲載されています。和気あいあいとしながらも、厳しい議論が戦わされた感じが伝わってくる写真だと思います。是非ご覧いただければと思います。


以上

2014年12月2日火曜日

岩村康弘博士の元素変換記事がIsotope Newsに掲載される

日本アイソトープ協会の広報誌であるIsotope News〔No.728〕2014年12月号の「展望」というセクションに、元素変換実験で有名な三菱重工業の岩村康弘博士の原稿が載りました。

論文ではなく一般向けの科学記事として、これまでの元素変換実験の結果を5ページに圧縮してまとめてあるので、オススメです。PDFとして無料でダウンロードできます。科学の世界でメジャーな広報誌に常温核融合の肯定的な実験結果が載るのは素晴らしいことだと思います。

http://www.jrias.or.jp/books/cat3/2014/728.html
Isotope News 〔No.728〕2014年12月号目次
展望
ナノ構造金属において重水素透過によって観測される“元素変換”現象について
岩村 康弘
この記事の最後の方で、MITの講演でも報告されていた元素変換反応の収量の格段の増加に触れられています(以下に引用します)。マイクログラムオーダーまで収量は増加しているようで、たいへん素晴らしい進展だと思います。
4 収量増大への取り組み
 これまでの反応収量は通常数ng〜数十ng オーダーに留まっており,実用化のためには,反応収量の増大が必要である。そのため,最近は実用化を目指した,変換量の増大研究に取り組んでいる。実験結果から,以下の要因が変換反応に重要であるという仮説を立てて研究を進めている。
 1)表面の重水素密度
 2)Pd 表面層の電子状態
 1)の重水素密度が高い方場合に変換量が増大することは重水素透過実験から確認できている。ただし,ガス透過法では付加できる圧力には限界があり,収率の飛躍的向上は困難と判断し,以降の重水素透過は電気化学的手法を採用し,等価的に高い重水素圧力を Pd 表面に加えることで重水素密度の向上を図った。図 8 は重水素のガス透過法と電気化学的手法を用いて透過的に重水素を高圧で透過させる手法の比較を示している。両者は重水素を透過させるという意味において同じであるが,表面の重水素密度が異なる。図 9 はこの両者の実験による元素変換反応の収量の違いをまとめたものである。このように従来 ng オーダーであった収量が電気化学的重水素透過法により 2〜3 桁程度増大していることが分かる。
以上



2014年12月1日月曜日

常温核融合時代に向けてリスクヘッジを考えるエネルギー大国ノルウェー

この件が話題になるまで知らなかったのですが、ノルウェーはたいへんエネルギーに恵まれた国で、2012年の「ノルウェーのエネルギー事情」という資料には以下のように特長がまとめられています。
  1. ノルウェーはエネルギーの輸出国。国内エネルギー需要の6~7倍相当分を輸出。
  2. ノルウェーは,世界第2位の天然ガス輸出国,世界第7位の石油輸出国。
    石油・天然ガス生産は,推定可採埋蔵量(約 131億石油換算立方メートル)のうち既に約44%を生産済み。生産は,2020年頃から今世紀半ばに向け減少の見込み。
  3. ノルウェーは世界第6位の水力発電国。発電可能な水資源の約60%を開発済み。電力生産量の約95%は水力発電。
  4. 水力発電以外の再生可能エネルギー生産は限定的であるが,風力の開発を推進,助成。 

各国の輸出に占める石油の割合を解りやすくまとめたサイトにも、中東諸国と並んで、ノルウェーの以下のようなグラフが出てきます。



さて、常温核融合関連の雑誌としては老舗のInfinite Energy誌のサイトに、米国SRIの常温核融合研究者として有名なMcKubre博士のノルウェー訪問記が掲載されました(原文は以下)。
http://www.infinite-energy.com/iemagazine/issue119/norway.html


驚いたことに、ノルウェーから、常温核融合セミナーの発表者の一人としてMcKubre博士を招聘したのです。エネルギー大国のノルウェーは、常温核融合の登場によって、エネルギー産業がどのような影響を被るのかを予想し、リスクヘッジをするために常温核融合の研究チームを起こそうとしているようです。科学者と政府が、たとえ見たくない事実であってもきちんと調査・認識して、未来へ向けての対処を考えていると知って、羨ましく思いました。官民挙げて滅び行く原発にしがみついている日本とはたいへんな違いです。

とても興味深い訪問記でしたので、勝手ながら日本語に意訳してみました。もし、不十分な点に気づかれましたら、遠慮なくご指摘ください。


2014年11月16日日曜日

アンドレア・ロッシ氏のインタビュー記事がイタリアのメジャー雑誌に掲載された

イタリアの「パノラマ」という雑誌がアンドレア・ロッシ氏のインタビュー記事を掲載しました。この雑誌は、京都外国語大学のサイトによると老舗のメジャー雑誌です(以下に説明文を引用します)。下の写真を見ても分かる通り、ロッシ氏やE-Catに対して肯定的な論調だったようです。潮目が変わってきたようですね。
Panorama 
ミラノにてイタリアの大手出版社モンダドーリが発行する週刊誌。L’Espresso紙とともにイタリアのニュース雑誌として確固たる地位がある。1939年創刊。翌40年に一度休刊するが、962年に復刊。現在に至る。ゴシップ記事が多いが、アフリカや東欧関連の記事は秀逸であると定評がある。



以上

2014年11月15日土曜日

ビル・ゲイツ氏がENEA−Frascati研究所を訪問し常温核融合研究者と議論

マイクロソフト社の創業者として高名であり、今は次世代型原子炉を開発しているTerraPower社に投資しているビル・ゲイツ氏が、11月12日にイタリアのENEA−Frascati研究所を訪問して科学者と議論したというニュースが話題になっています。
この研究所の本業は熱核融合研究のようですが、常温核融合の研究も行われており、説明をしたVittorio Violante博士は常温核融合研究者として有名です。下の写真の右端に見えるのは、国際常温核融合学会ICCF-15のポスターのようです。
さて、ビル・ゲイツ氏は何を見て、何を考えたのでしょうか? 氏は、幾つもの危機を乗り越えてマイクロソフト社を世界有数のIT企業へと成長させました。2週間山小屋に篭って戦略を練る「シンクウィーク」で同社のインターネットへの取り組みを一変させ、次の成長軌道に乗せたのは有名です。もしかすると、今回も常温核融合への取り組みを一変させるかもしれません。期待しましょう。


ICCF-15は2009年にこの研究所で行われたのです(下図)。


Vittorio Violante博士は、昨年6月にEU議会で常温核融合の説明を行った科学者の一人でもあります(下図)。この写真では影に隠れてしまっていますが。


ビル・ゲイツ氏の訪問はイタリアで報道もされたようです(下図)。


このニュースは常温核融合ウォッチャーのブログでも取り上げられています。

E-Cat World

New Energy Times


以上

2014年11月10日月曜日

原油価格の下落の原因は常温核融合なのか?

原油価格の下落が続いています。
過去8年くらいの傾向で見ると以下のような感じです。


この2年間だと以下のように最低の水準になっているようです。



10月9日に公開されたE-Catの第三者検証レポート第二弾を最初に報じたsifferkoll社がこの下落について非常に興味深い推測をしています。要するに、この検証レポートが引き金になって、下落が引き起こされたと見ているのです。
10月9日に書かれた以下の記事には実に興味深いチャートの拡大図が出ています。
The Big Banks are Certainly Paying Attention to the E-Cat | Sifferkoll®
http://www.sifferkoll.se/sifferkoll/?p=394



Sifferkoll社のサイトに置いてあった第三者検証レポートをダウンロードしたIPアドレスにBlackRock社のものがありました。世界有数の投資会社です。このBlackRock社のダウンロードの直後から原油価格の下落が始まり、その直後にE-Cat Worldで第一報が出た時点で下落が加速しているように見えます。実に面白い観察です。

原油価格を決める要因は多様です。また、今の原油価格の下落は一般的には、需要の減退とシェールガス対抗策だと言われているようで、これも説得力があります。なので、本当に常温核融合の実用化への展望が原油価格の下落をドライブする影の要因なのか良く分かりません。しかし、常温核融合が正しく認知されてくれば、原油などのエネルギー価格に強い下落圧力がかかるのは予想できます。今後の値動きには、常温核融合ファクターを入れて考える必要があるでしょうね。

以上

E-Catの特許の所有者はIPH International BV社?

前の記事で紹介したロッシ氏の特許について、出願者がIndustrial Heat社からIPH International BV社に書き換わっているという重大な指摘がE-Cat Worldに出ました
以下がE-Cat Worldに引用されている特許の出願書類ですが、たしかにIndustrial Heatが見え消しされて書き換えられています。出願書類全体は ここ で参照できます。


また、奇妙なことに、アドレスは書き換えられておらず、「111 East Hargett St, Raleigh, NC」と、Industrial Heat社のアドレスのままになっています。

では、新たに特許の権利者となっているように見えるIPH International BV社が何者か・・という点について、先ほどのE-Cat Worldの記事は色々な情報を集めてくれています。


という事で、残念ながら、依然として正体は謎に包まれたままです。いったい何者なのか非常に気になりますね。


以上

2014年11月9日日曜日

ついに公開されたロッシ氏のE-Catの米国特許

ロッシ氏のE-Catの方式を記したと思われる米国特許が公開されたのが見つかって、ウォッチャーは盛り上がってます。

公開された特許は ここ で参照できます。またPDFファイルは、 ここ で参照できます。
名称は「DEVICES AND METHODS FOR HEAT GENERATION」です。冒頭部分を引用します。Industrial Heat社が出願者になっています(赤字)が、これについては更に新しい発見があります(後述)。
United States Patent Application 20140326711 
Kind Code A1 
Rossi; Andrea November 6, 2014 
DEVICES AND METHODS FOR HEAT GENERATION  
Abstract
A reactor device includes a sealed vessel defining an interior, a fuel material within the interior of the vessel, and a heating element proximal the vessel. The fuel material may be a solid including nickel and hydrogen. The sealed vessel may be sealed against gas ingress or egress and may contain no more than a trace amount of gaseous hydrogen. The sealed vessel is heated with an input amount of energy without ingress or egress of material into or out of the sealed vessel. An output amount of thermal energy exceeding the input amount of energy is received from the sealed vessel. The fuel material has a specific energy greater than that of any chemical reaction based energy source. 
Inventors: Rossi; Andrea; (Miami Beach, FL) 
Applicant: Industrial Heat, Inc. Raleigh NC US   
Assignee: LEONARDO CORPORATION Miami Beach FL 
Family ID: 1000000535808 
Appl. No.: 14/262740
Filed: April 26, 2014
特許の中には、昨年の第三者検証の時と同じように見える写真が載っています。

また、以下のような構造図も載っています。この特許の出願時には三相交流を使っていたようです。


この特許の中には、COPが11.07だという記述があります。素晴らしい効率です。
[0221] The following was taken into account:
Ea=140.70 kWh=140700 Wh
COP=(117426+1440113)/140700=1557539=11.07 
まだ公開されていない以下の特許が関連特許として挙げられています。
61818553 May 2, 2013
61819058 May 3, 2013
61821914 May 10, 2013 
E-Catの特許が公開され始めた事によって、常温核融合の実用化競争は新たな局面に入るかもしれません。常温核融合装置へ適用できる新たな機器の特許を取得したり、E-Catの追試を行った上で、E-Catの特許に抵触しない新たな方式を考える人が出てきたり、様々な動きが加速すると思われます。面白くなってきました。

最後に、多くのウォッチャーがこの特許を記事にしていますので、ご紹介しておきます。

E-Cat Worldの記事
A New Patent Application Published for Andrea Rossi’s E-Cat
http://www.e-catworld.com/2014/11/06/andrea-rossis-new-patent-application-published-for/

Facebookのグループ
Cold Fusion, LENR and Andrea Rossi
https://www.facebook.com/groups/ECat.LENR/permalink/1016691335013437/

メーリングリスト
[Vo]:New Rossi Patent Appln..publishes Today
https://www.mail-archive.com/vortex-l@eskimo.com/msg99591.html

E-Catの追試に乗り出しているMFMPの投稿
The HOTCAT Patent application is published... - Martin Fleischmann Memorial Project
https://www.facebook.com/MartinFleischmannMemorialProject/posts/861995693831131

Notes on patent application: []=Project Dog... - Martin Fleischmann Memorial Project
https://www.facebook.com/MartinFleischmannMemorialProject/posts/862010367162997

COP of 11.07 claimed in effectively a mass flow... - Martin Fleischmann Memorial Project
https://www.facebook.com/MartinFleischmannMemorialProject/posts/862046710492696

Key takeaways from Patent application... - Martin Fleischmann Memorial Project
https://www.facebook.com/MartinFleischmannMemorialProject/posts/862055713825129

ちなみに、プロジェクト名の「Project Dog Bone」は、先日の第三者検証で用いられたE-Catの形状が犬の(咥えている)骨に似ている所から来ています(笑)。

以上

2014年11月3日月曜日

ナノ銀によるピッチブレンドの放射線低減実験

ナノ銀による放射線低減実験に興味を持っている私の友人が、たいへん興味深い実験結果を送ってくれました。

ピッチブレンド(pitchblende、瀝青ウラン鉱)と呼ばれる鉱石があります。ピッチブレンドは、ウラニウムやウラニウムの崩壊によって生成されたラジウムなどの放射性物質を含んでおり、強い放射線を放っています。今回の実験では、このピッチブレンドをナノ銀コラーゲン溶液の中に漬け込んで(いわゆるドブ漬け)放射線の低減を観測しています。私と同じく、実験を行った友人はただの素人で、研究者ではありません。実験の組み立て方や測定に不十分な点があるかもしれませんが、ドブ漬けにしたピッチブレンドの放射線を測るという(根気のいる)単純な実験なので、それなりに実験の信頼性はあると考えています。

U8容器の中にピッチブレンドの塊をナノ銀コラーゲン溶液(濃度20ppm)でドブ漬けにした状態の写真と使用した放射線測定器(Inspector+)の写真を以下に示します(2014年1月2日撮影)。

写真1:2014年1月2日(ナノ銀ドブ漬けの測定開始日)の測定状況

具体的な実験の様子と測定値を以下にまとめます。
  • 測定器: Inspector+、β線とγ線の双方を計測します。
  • 測定値: CPS(Count per Second)、秒当たりの放射線検出カウント数です。
  • 測定対象とするピッチブレンドの重量は、29.75グラムです(写真3)。【2014-11-09追記】
  • ピッチブレンドは、U8容器の中に市販の瞬間接着剤で固定してあります。このU8容器にナノ銀コラーゲン溶液(濃度20ppm)を満たし、Inspector+を下に置いた状態で、その上にU8容器を載せてCPS値を計測します。
  • 測定位置を一定とするため、油性マジックでU8容器底面に黒印、Inspector+側に赤印を付け、測定時には2つの線「黒印」「赤印」が重なる状態で測定を行っています(写真4)。【2014-11-09追記】
  • 測定時にはできるだけ3回測定を繰り返すようにしましたが、時には1回だけのこともあります。
  • ナノ銀コラーゲン溶液で計測する前に、水を満たして計測した結果を最初の行に示してあります(2014年1月1日、平均66.26 CPS)。1月2日以降の測定はすべてナノ銀コラーゲン溶液にドブ漬けしたものの結果です。

測定結果: 

以下が放射線量をグラフにしたものです。


測定値のリストは ここ に載せました。

2014年1月2日に測定を開始した時点で3回測定の平均が64.50 CPS、その後も2月上旬くらいまでは同じような計測値が続いています。ところが、3月12日の測定で54.21 CPSに値がガクッと下がりました。その後も若干上下していますが、10月23日の測定でも53.95 CPSと値は下がったままです。元の値からすると84%になっており、16%もの低減が観測されたことになります。

写真2: 2014年10月5日の測定状況

写真3:ピッチブレンドの重量測定

写真4:黒印と赤印を合わせて測定している様子

考察: 

これまで、ナノ銀による放射線低減効果は、セシウムとカリウムについて観測されてきました。
今回、別の実験者によって、ピッチブレンドに対しても放射線低減効果がありそうな結果が示された事になります。ナノ銀がピッチブレンドに対してどのように作用しているのか、特に表面より下の層に対してどのように作用しているのかは未解明ですが非常に興味を惹かれます。
もし、ピッチブレンドに含まれるウラニウムやラジウムに対しても放射線低減効果が発揮されるなら、世界や日本でも厄介モノとなっている放射性廃棄物の処理に大きな光明となるかもしれません。これを見ておられる研究者の方々にも是非追試をお願いしたいと思います。

参考: ピッチブレンドの放射線測定の様子(YouTubeに公開されている動画)

当実験での秒当たりのカウント数が高過ぎるのではないかと思ったのですが、ピッチブレンドは非常に強い放射線を出すらしく、このぐらいは出てもおかしくないようです。YouTubeには強烈な値を計測しているピッチブレンドの計測画像が色々とあがっています。

以上



札幌で開催されたJCF-15のプログラムとアブストラクト

日本の常温核融合研究会JCFの第15回例会が11月1日〜2日に札幌で開催された筈です。
残念ながら、今回は仕事と旅費(笑)の都合がつかず参加できませんでした。




アブストラクトから、今回の発表案件を拾ってみると以下のようになっています。

Experiment-1 Chairman; Y. Iwamura (Mitsubishi H. I.)

13:10-13:45 JCF15-1 Kitamura et al. (Technova Inc., Kobe U.)
Comparison of some Ni-based nano-composite samples with respect to excess heat evolution under exposure to hydrogen isotope gas

13:45-14:10 JCF15-2 H.Kudo et al. (Iwate U.)
Deuterium adsorption test using Pd-Ni and Pd-Ag multi-layered samples.

14:10-14:45 JCF15-3 T. Mizuno et al. (Hydrogen Eng. A&D Co.)
Analysis of Heat Generation using Pd and Ni Fine Wires

Theory-1 Chairman; S.Narita (Iwate U.)

15:00-15:35 JCF15-4 A. Takahashi (Technova Inc.)
Background for Condensed Cluster Fusion

15:35-16:00 JCF15-5 K.Tsuchiya (NIT, Tokyo College)
Convergence Aspect of the Self-consistent Calculations for Quantum States of
Charged Bose Particles in Solids

Experiment-2 Chairman; T. Mizuno (Hydrogen Eng. A&D Co.)

10:00-10:25 JCF15-6 C. Nishimura et al. (National Institute for Materials Science)
Deuterium and hydrogen permeation of Pd-Ag and V-Ni alloy membranes with multi-layered CaO/Pd

10:25-10:50 JCF15-7 Y. Iwamura et al. (Mitsubishi H. I.)
Increase of Transmutation Products by Electrochemical Deuterium Permeation through Nano-Structured Pd Multilayer Thin Film

Theory-2 Chairman; K.Tsuchiya (NIT, Tokyo College)

11:05-11:30 JCF15-8 H. Miura
Computer Simulation of Hydrogen Phonon States in Palladium Metal

11:30-12:05 JCF15-9 A. Takahashi (Technova Inc.)
Is Gamma-Less Transmutation Possible? -The Case of Metal plus TSC and BOLEP-


以上

2014年10月19日日曜日

銀とロジウムの合金ナノ粒子がPdと同様の特性を有する謎

このブログでテーマとしている常温核融合との関係は分かりませんが、驚くべき研究成果だと思います。原子番号が-1(Rh:ロジウム)と+1(Ag:銀)の元素を融合させると、ちょうど真ん中の元素(Pd:パラジウム)と似た性質を持つとは、子供の頃に考えそうなことですが、起こりえないと学習してきたことでもあります。

これこそ、言葉通りに解釈すれば「常温核融合」ですね(笑)。プレスリリースから引用します。

水素吸蔵特性をもつAg-Rh合金ナノ粒子の電子構造の初観測
~Ag-Rh合金ナノ粒子がPdと同様の特性を有する謎の解明を目指して~
平成26年10月16日
物質・材料研究機構、京都大学、九州大学、科学技術振興機構(JST)
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20141016/
元素の周期表中でPdの両隣りにあるRhとAgは、双方とも水素を吸蔵する能力を持っていません。バルクでは合金になり得ないAg-Rhは10数ナノメートルの大きさにして初めて合金化することができ、AgとRhが1:1のAg0.5Rh0.5合金ナノ粒子は水素を吸蔵する性質を示します。その水素吸蔵容量は、代表的な水素吸蔵金属であるPdナノ粒子のおよそ半分にも達します。
Ag-Rh合金ナノ粒子は、AgとRhが微視的に分離した混合物ではなく原子レベルで混成しており、その電子構造はPdの電子構造と極めて類似していることがわかりました。Ag-Rh合金ナノ粒子に水素が吸蔵されるという事実は、この電子構造の類似性と関係していると考えられます。
ABSTRACT 
The valence band (VB) structures of face-centered-cubic Ag-Rh alloy nanoparticles (NPs), which are known to have excellent hydrogen-storage properties, were investigated using bulk-sensitive hard x-ray photoelectron spectroscopy. The observed VB spectra profiles of the Ag-Rh alloy NPs do not resemble simple linear combinations of the VB spectra of Ag and Rh NPs. The observed VB hybridization was qualitatively reproduced via a first-principles calculation. The electronic structure of the Ag 0.5Rh0.5 alloy NPs near the Fermi edge was strikingly similar to that of Pd NPs, whose superior hydrogen-storage properties are well known.
以上

2014年10月15日水曜日

The Energy 2.0 Society~常温核融合利用推進NPOが設立される

The Energy 2.0 SocietyというNPOが立ち上がりました。E-Cat Worldを運営しているFrank Aclandさんもボードメンバーに入っています。
以下のホームページの文章を勝手に和訳してお伝えします。
http://energy2point0.org/


以下が勝手な和訳です。
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近年、物理学と工学の分野で画期的な発見があり、クリーンで安全かつ経済的に膨大なエネルギーを生産できるようになろうとしています。


このエネルギー源は何でしょうか? 2つの一般的な名称があります。低エネルギー核反応(LENR)と常温核融合(Cold Fusion)です~とはいえ、実際には、このエネルギーが発生するメカニズムはまだ解明されていません。私たちが知っているのは、特定の条件下で、水素がニッケルやパラジウムのような特定の金属と結合する時に、有害な廃棄物や放射線の発生の無い反応が起こり、どのような化学反応よりもはるかに多くのエネルギーが生成されるということです。

The Energy 2.0 Societyは、エネルギーのこのクリーンで効率的なエネルギー源についての認知を高め、すべての人々の生活の質を向上させるために利用を促進する事を目的とする非営利団体です。
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The Energy 2.0 Societyでは、寄付、ボランティア、アイデア/提案を受け付けています。趣旨に賛同する方は、ぜひ参加を考えてみては如何でしょうか。私も週末くらいに落ち着いて英文メールを書こうかと思います。

また、代表者のTom Wind氏は、早速、10月20日にニューヨークにあるオレンジ・カントリー・コミュニティ・カレッジ(Orange County Community College)にて、常温核融合の説明会を開くとのこと。活発な活動で早く正しい認知が広がるよう期待したいですね。

以上


2014年10月13日月曜日

E-Catの革命的な性能を示すラゴンプロット

Alan Fletcher氏は公開のWebやメーリングリスト上でE-Catの実験データの妥当性の検証にずっと注力されていて、その成果は http://lenr.qumbu.com/ にまとまっています。
今回のE-Catの第三者検証レポート第二弾の公表を受けて、E-Catのエネルギー源としての性能を「ラゴンプロット」と呼ばれる図の上に表してくれました。


上の図の緑と赤の印がE-Catの性能です。今回の検証ではE-Catの総重量は452gで燃料を1g消費したので、それぞれの条件で緑と赤の印が付けられています(重量当たりのエネルギー密度と出力密度を表したものなので、どちらの重量を採るかで位置が変わります)。

左の下の隅にごちゃごちゃと固まっているのが、従来の化学反応を使ったエネルギー源です。右上に行くほど、優れた性能を持ったエネルギー源という事になるので、燃料消費だけを見た緑の点をE-Catの実力だと思うと、E-Catがエネルギー源として如何に優れているか理解できます。核反応は化学反応に比べて6桁くらい高いエネルギーを放出するので、当たり前と言えば当たり前なのですが、それが500グラム足らずの小型の装置で安全に実現できてしまうのは驚異です。これこそ、常温核融合が破壊的テクノロジーと言われる所以です。

ちなみに、ラゴンプロットは電池の性能を表すのにも用いられます。例えば、以下のように用いられていて、やはり右上の方に進化させるのが技術の課題になっているのです。



以上

材料研究機構による岩村康弘博士の元素変換実験の追試

元素変換 現代版<錬金術>のフロンティア」を読んで、以下の研究報告書があることを知りました。岩村博士の元素変換実験の追試に相当し、更に収量を上げるための要因を見出そうとしています。概要の部分を引用します。


https://kaken.nii.ac.jp/pdf/2012/seika/C-19_1/82108/22560744seika.pdf
科学研究費助成事業(科学研究費補助金)研究成果報告書
平成25年 6月 17日現在
機関番号: 82108
研究種目: 基盤研究(C)
研究期間: 2010~2012
課題番号: 22560744
研究課題名(和文) 重水素透過誘起希土類元素生成反応の現象理解と収率向上
研究課題名(英文) Clarification and yield enhancement of deuterium-permeation-induced generation of rare earth elements.
研究代表者
 西村 睦(NISHIMURA CHIKASHI)
 独立行政法人物質・材料研究機構・水素利用材料ユニット・ユニット長
研究者番号: 20344434
研究成果の概要(和文):
重水素透過誘起元素生成反応で用いられてきた複合膜の重水素透過特性を明らかにした。ガス透過法で、圧力が高いほど生成物の収率が向上することを明らかにし た。電気化学的に重水素透過した試料を SIMS および ICP-MS 法で分析し、133Cs から質量数 139,140,141,142 の物質への変換を示唆する結果が得られた。また W をイオン注入した複合膜においては、質量数 190 の物質への変換を示唆する結果が得られた。
研究成果の概要(英文):
Deuterium permeation characteristics were determined for composite membranes used in transmutation reaction by deuterium permeation. Higher deuterium gas pressure resulted in higher yield of transmutation. Surfaces of electrochemically deuterium-permeated samples were analyzed by SIMS and ICP-MS. Peaks of Mass number 139, 140, 141, 142 were clearly observed in deuterium-permeated samples with 133Cs implantation. Peak of mass number 190 was observed in deuterium-permeated samples with W implantation.
この報告書では、パラジウム層を含む多重膜に重水素を透過させて、その際に、表面に注入したセシウムとタングステンからどのような元素が生じるかを定量的に分析しています。
セシウムの場合だと、以下のように質量数139,140,141,142あたりの元素が現れていると報告されています。


また、タングステンの場合だと、以下のように質量数190の元素の増加がシャープに現れていると報告されています。


これまで、日本の常温核融合研究では、豊田中研による追試しか行われていないと思っていたので、私にとっては新たな情報でした。この本に感謝したいと思います。

それにしても、このような重要な研究に科研費がたった442万円しか支出されていないのは、納税者としては不満です。未来の無い原発関連の研究費用を削って、もっとこちらに研究費を増やすべきだと思います。また、この報告書のPDFファイル内のテキストが検索対象となっていない事にも不満です。広く検索できるように、テキスト情報を付けた状態で公開すべきだと思います。


以上