この本の著者である小島英夫博士は1999年に私設の「常温核融合研究所(CFRL:Cold Fusion Research Laboratory)」を開設され、多くの論文を発表されています。CFRLのそのホームページがここにあって、論文やエッセイなどが公開されています。
2009年の末ぐらいから、ずっと更新が止まっていたので残念に思っていたのですが、今年になって以下のようなコンテンツが追加されている事に気が付きました。
- 「CFRL News」 No.75 (2011.4.20) と No.74 (2011.1.20) の追加:
http://www.geocities.jp/hjrfq930/News/news.html - CFRLが発行した論文の追加:
http://www.geocities.jp/hjrfq930/Papers/paperr/paperr.html
1.3 常温核融合現象
科学の研究においては科学的思考が用いられていること、したがって、科学界では事実に基づいて論理を進め、結論を実験によって確かめることが常識になっていると考えるのが普通でしょう。しかし、「地震予知」に関してゲラー氏が論じているように、この社会の中で行われる科学活動では、科学的思考が尊重されるとは限らないのが現実のようです。
常温核融合現象が1989年に発見されてから22年になりますが、この研究領域にはいまだに科学的な基盤ができていないというのが実情ではないでしょうか。それが原因で、常温核融合現象は多くの科学者からまともな研究領域と思われていないようです。学界の名称一つ取ってみても、「帯に短かし襷に流し」ではないですが、最適な言葉を見つけられないでいます。ICCF14のProceedingsでEditorsのD.J. NagelとM.E. Melichが指摘しているように、一時多く用いられたLow Energy Nuclear Reactionsも曖昧さがあります。実際、核物理学では同じ言葉が10 MeV以下のエネルギー領域での核反応に用いられています。
“Cold Fusion Phenomenon、” あるいは日本語で「常温核融合現象」と呼ぼうという私の提言は、このような状況を踏まえて、最初に用いられたCold Fusionを生かして新しい研究領域をアッピールしたいという思いを込めた用語です。そして、従来の物理学のどの分野からも外れたこの研究領域には、固体あるいは凝集体物理学と核物理学の境界領域の特徴を併せ持った多様な事象が起こっています。
常温核融合現象が起こる系が複雑な構造と特徴を持っていることは周知のことです。特徴としては、系が開いた非定常状態にある、水素同位体と金属あるいは炭素からなる固体であることが挙げられます。複雑な構造は、水素同位体の固体内濃度が高く、分布が不均一であることに特徴があります。
現象の含む事象は、核反応が起こっていると考えないと説明のつかない生成物を生ずることと、生成エネルギーの量が原子・分子反応では説明のできない程に多量であることでしょう。
反応性生物の量と質に関して、いくつかの法則性が見つかっていますが*、中でも「べき乗法則」は常温核融合現象が複雑性現象であることを示す、最も重要なものです**。McKubre et al.と J. Dash et al. の過剰熱のデータをKozimaが解析した結果および157種の過剰熱のデータをH. Lietzが解析した結果によると、いずれも測定頻度の過剰熱量に対する依存性は逆べき法則で表され、それぞれの場合の指数は、1.0, 2.0 および1.3になります。指数の数値そのものにはバラツキがありますが、依存性が逆べき法則に従うことは常温核融合現象が複雑性現象であることを明瞭に示しています。
この結果は、常温核融合現象が定量的な再現性ではなく、定性的な再現性で特徴付けられることを示しています。ですから、定量的な再現性を追い求めることは無益な労力を費やすことであり、また定量的な再現性がないことを理由に常温核融合現象を科学の研究対象から除外しようとするなどは非科学的な判断と言わざるをえないのです。
考えてみれば、放射性核226Raの崩壊でも、半減期1.60×103 yというのは、N個の核の中でどの核が崩壊するかは分からないけれどもこの時間内に半数の核が崩壊するという統計的法則でしかない訳です。このことから、原子核の崩壊は科学の対象から外すべきであるなどと言う核物理学者が出てくることは考えられませんから、常温核融合現象に関する多くの核や素粒子の研究者の態度は非科学的としか言いようがないのです。
CFRL ニュース No.75 via kwout
また、論文リストの方には、以下のような論文が新規に掲載されているようです。
- Reports of CFRL (Cold Fusion Research Laboratory) 11-6, 1-13 (April, 2011)
Cold Fusion Phenomenon in Open, Nonequilibrium, Multi-component Systems
Hideo Kozima - Reports of CFRL (Cold Fusion Research Laboratory), 11-5, pp. 1-14 (January, 2008)
Precision Measurement of Excess Energy in Electrolytic System Pd/D/H2SO4 and Inverse-Power Distribution of Energy Pulses vs. Excess Energy+
H. Kozima, W.-S. Zhang, and J. Dash
This paper is an extended version of the paper with the same title published in Proc. ICCF13 (June 25 - July 1, 2007, Dagomys, Sochi, Russia) pp. 348-358 (2008). - Reports of CFRL (Cold Fusion Research Laboratory), 11-4, pp. 1-21 (January, 2008)
Physics of the Cold Fusion Phenomenon
Hideo Kozima
This paper is an extended version of the paper with the same title published in Proc. ICCF13 (June 25 - July 1, 2007, Dagomys, Sochi, Russia) pp. 690-703 (2008). - Neutron Emission in the Cold Fusion Phenomenon
Hideo Kozima
This paper is an extended version of the paper to be published in Proc. JCF11 with the same title. - Localization of Nuclear Reactions in the Cold Fusion Phenomenon
Hideo Kozima
This paper is an extended version of the paper to be published in Proc. JCF11 with the same title. - Brief Explanation of Experimental Data Set on Excess Heat and Nuclear Transmutation in Multiplly Nanocoated Ni Wire
Hideo Kozima and Francesco Celani
This paper is an extended version of the paper to be published in Proc. JCF11 with the same title.
以上
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