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2015年5月24日日曜日

Shafeev博士のレーザー照射による半減期短縮実験

常温核融合をブログEGO OUTで扱っているPeter Gluckさんが非常に興味深い記事を2015年5月18日に掲載されました。Shafeev博士の一連の論文の重要性について書いてます。
THE REAL SIGNIFICANCE OF THE SHAFEEV PAPER FOR LENR

以下の写真は、その記事の中で引用されているMK.RUの記事に貼ってあったものを引用しています。原文がロシア語なのでGoogle翻訳の助けを借りました。


EGO OUTの記事は以下のように述べています。
4) On the Russian site http://www.lenr.seplm.ru/This paper appeared:
Russian Discoveies: And on uranium  will blossom apples too?
Nuclear waste can be converted into fertilizer
by Georgy Shafeev
http://www.mk.ru/science/2015/05/14/i-na-urane-budut-yabloni-cvesti.html 
I was a bit puzzled first but then I realized that this is something very important connected with nano-plasmonics. Axil Axil, in a message has cited an other paper with Shafeev co-author: 
Accelerated alpha-decay of 232U isotope achieved by exposure of its aqueous solution with gold nanoparticles to laser radiation
A.V. Simakin, G.A. Shafeev
Wave Research Center of A.M. Prokhorov General Physics Institute of the Russian Academy of Sciences, Vavilov Street, Moscow 119991, Russian Federation
http://arxiv.org/ftp/arxiv/papers/1112/1112.6276.pdf 
What Shafeev and Co. does is of utmost importance for understanding how LENR really works and you will know soon how and why.

ここで参照されている論文からアブストラクト部分を以下に引用します(赤字は引用者による)。
Accelerated alpha-decay of 232U isotope achieved by exposure of its aqueous solution with gold nanoparticles to laser radiation
A.V. Simakin, G.A. Shafeev
Wave Research Center of A.M. Prokhorov General Physics Institute of the Russian Academy of Sciences, Vavilov Street, Moscow 119991, Russian Federation 
Abstract
Experimental results are presented on laser-induced accelerated alpha-decay of Uranium-232 nuclei under laser exposure of Au nanoparticles in aqueous solutions of its salt. It is demonstrated that the decrease of alpha-activity strongly depends on the peak intensity of the laser radiation in the liquid and is highest at several terawatt per square centimeter. The decrease of alpha-activity of the exposed solutions is accompanied by the deviation of gamma-activities of daughter nuclides of Uranium-232 from their equilibrium values. Possible mechanisms of the laser influence on the alpha-activity are discussed on the basis of the amplification of the electric field of laser wave on metallic nanoparticles. 
この論文は非常に面白い実験結果を示しています。素人の理解では以下が特徴となっているように思います。

  • 論文では、ウラニウム232(半減期68.9年)の塩化化合物の水溶液の中に金のナノ粒子を入れて、レーザーを照射したところ、アルファ崩壊が加速される現象が報告されている。
  • 物質によって決まる定数だと考えられている半減期が縮まるのですから、極めて異常な事象が起こっている事になります。
  • ナノ銀による放射線低減実験に似ていますが、金のナノ粒子局在表面プラズモン共鳴を起こさせる波長のレーザー照射をしている点が大きな違いであり、特徴です。
    (冒頭に引用した写真は、実験でレーザー照射している光景だと思われます)
  • アルファ崩壊の加速は、レーザーを照射した一瞬で起こるようです。論文の中では、69年の半減期がレーザーフィールドの中では5μ秒になる「In other words, the half-life of 232U in the laser field is 5 μs instead of 69 years.」と表現されています。

Shafeev博士は、この論文以外にも、様々な核種や様々なナノ粒子で同様の現象を確認しているようです。今後も研究成果を調べて行きたいと思います。最後に上記の論文を埋め込み表示しておきます。

以上

2014年8月24日日曜日

トリチウムの半減期短縮による除染への取組み

非常に厄介な放射性汚染源であるトリチウムについて、原田武夫氏が新たな核変換技術を開発して効果を検証していると主張されています。
続・トリチウム汚染水が消える日 イノヴェーションを阻むもの - 原田武夫国際戦略情報研究所公式ブログ
http://blog.goo.ne.jp/shiome/e/bbf99d89b409ddc8350840f74d8d07ee
こうした動きは大事だと思うので応援したい所なのですが、残念ながら実験の設計やデータが公開されていないので、どのような内容なのかがサッパリ分かりません。ビジネス面でノウハウを公開したくないのであれば、核変換の仕掛けの部分はブラックボックスで構わないので、是非、実験結果を公開していただきたいと思います。

さて、最近以下の特許が話題になりました(赤字は引用者による)。トリチウムや金属元素の放射性同位体の半減期を加速する方式を申請していたからです。
特許 US20140192941 - Method of acceleration of nuclear transmutation of isotopes by carrying out exothermic reactions
http://www.google.com/patents/US20140192941
要約書
Methods for acceleration of nuclear transmutation of tritium and radioactive isotopes of metals, and decontamination of metals contaminated with radioactive isotopes by destroying radioactive isotopes to a required level of residual radioactive inventory in metals with simultaneous release of thermal energy via stimulating accelerated transmutation with the half-life parameters describing kinetics of radioactive isotope destruction much shorter than their generally accepted half-life. The stimulus is applied to radioactive metals by placing them into a chamber, exposing them to gaseous substances of the group of hydrogen, deuterium, tritium, or a mixture of these isotopes in a molecular hydrogen form for said gaseous substances to be absorbed by the metals, heating the metals to a temperature of at least 200° C. and maintaining at the said temperature. Exothermic reactions of non-radioactive metals with deuterium, tritium, or a mixture of these isotopes in a molecular hydrogen form release a significant amount of energy.
この特許の出願者であるLev Bernstein氏は、国際常温核融合学会(ISCMNS)の出している論文誌JCMNSのVol.11にトリチウムの核変換を扱った論文を書いています。
Destruction of Radioactivity by Stimulation of Nuclear Transmutation Reactions
L.A. Bernstein
BLL Inc., 1725B South Hayes Street, Arlington, Virginia 22202, USA
J. Condensed Matter Nucl. Sci. 11 (2013) 8–14
http://lenr-canr.org/acrobat/BiberianJPjcondensedj.pdf#page=13
Lev Bernstein氏の名前では、Lenr-canr.orgのライブラリ検索でこの論文しか引っかからないので、おそらく常温核融合研究界の中では知られていない人ではないかと想像します。

おそらく、上記の特許はこの論文での知見がベースになっていると思うので、ここでは論文の内容を見てみます。「1. Introduction」では、放射性廃棄物を削減するために、放射性の減少促進は重要との認識を示しており、そのための研究だと分かります。

「3. Review of Experimental Studies on Detritiation of Tritium-contaminated Samples」では、トリチウムの除染に的を絞って、これまでの研究をレビューしています。以前、Jed氏から紹介された、Reifenschweller氏の研究も引用されています。また、日本の鳥養祐二(とりかいゆうじ)氏の研究も引用されています。

鳥養さんは、日本語の資料を色々と発表されていたので、勉強になりました。例えば、以下の資料では、ステンレスやら鉄やら銅やらの各種金属材料がトリチウムで汚染されたと想定して、それを加熱することで、どこまで除染(この場合はトリチウムの「排出」に相当)できるかを試しているようです。
特定領域研究 核融合トリチウム C班ミーティング
トリチウムに汚染された材料の除染法の研究・開発
( 富山大学 ) 鳥養 祐二
平成 20年8月4-5日
http://tritium.nifs.ac.jp/project/13/pdf/11.pdf
Bernstein氏の論文では、鳥養氏は放出されたトリチウム量を計測しているが、金属内に残されたトリチウム量を測ったら、合計は元のトリチウム量に等しくなるだろうか? という疑問を投げかけています。要するに、Bernstein氏は、単にトリチウムが金属から排出されただけでなく、トリチウムの合計量が減っている可能性を示唆しています。


「4. Present Detritiation Experiments, Results and Discussion」では、自分達の行った実験結果を述べています。ここでは、元々金属にあったトリチウム量(A)と、残ったトリチウム量(B)と放出されたトリチウム量(C)の和との比率を見ています。
Therefore, the difference between an initial inventory of tritium in a metal sample (A) and a sum of the residual inventory of tritium in the metal sample (B) and collected activity removed from the metal sample (C) was determined. This difference determined as percentage of A as [1-(B+C)/A]× 100% is referred to hereafter as disbalance.
例えば、以下のような結果で、本来0%になる筈の収支が崩れている事が示されています。
Tritium disbalances at temperatures of 200℃ and 500℃ and optimal gas exchange rates determined at 800℃ for each metal specified (the latter figures are shown in the parentheses) are:
・Stainless steel – 78.8% and 74.9%
・Cu – 45.8% and 87.5%
・W – 39.1% and 85.3%
・Be – 45.7% and 94.6%
鳥養さんの研究では、金属に吸蔵されたトリチウムは、表面部分に特にたくさん蓄積される事も示されており、これが加熱された時に他の物質へと核種変換されているのかもしれません。放射性物質の本当の除染に向けて重要な実験結果だと思います。

以上

太陽からの何かの放射で半減期が変わる

たまたまツイッターで引用されていた以下の記事が目にとまりました。元々はスタンフォード大学ニュースに載ったもののようです。今年の8月23日に配信された記事かと思って読んでいたら、実は2010年8月23日の記事でした。
The strange case of solar flares and radioactive elements
http://phys.org/news201795438.html


放射性物質の半減期は、長期の年代測定の指標として使われている事からも分かるように、その放射性物質に固有な「定数」で、不変だと考えられています。これに対して、ナノ銀による放射線低減効果は、実は放射性物質の崩壊を加速して半減期を短くしているのではないかとの素人仮説を想定しています。で、もしそういう現象が起こるなら、他にも半減期を短くする現象が知られているのではないかと思って、素人にも分かる記事に気をつけています。その一つが「束縛状態ベータ崩壊での半減期の短縮とナノ銀との関係は? 」に書いた現象でした。

上記の記事は、放射性物質の半減期の変動を観測した結果が色々と報告されてきているというもので、しかも、それが太陽の活動周期に一致している事から、太陽が発生するニュートリノに影響を受けているのではないか・・と考えられているようです。尤も、ニュートリノは殆ど物質に影響を与えない筈なので、どうやって作用するのかは謎のままらしいのですが。
元の記事から引用します。研究者は放射性物質の半減期の変動周期が33日だと割り出したが、これは太陽表面の活動周期である28日と異なっていたと。で、この33日というのは、よりユックリとしているコアの活動周期に依存しているのでは・・と推測しています。
Going back to take another look at the decay data from the Brookhaven lab, the researchers found a recurring pattern of 33 days. It was a bit of a surprise, given that most solar observations show a pattern of about 28 days - the rotation rate of the surface of the sun.

The explanation? The core of the sun - where nuclear reactions produce neutrinos - apparently spins more slowly than the surface we see. "It may seem counter-intuitive, but it looks as if the core rotates more slowly than the rest of the sun," Sturrock said.

この研究を進めているJere Jenkins氏はオープンアーカイブに沢山の論文を公開しています。
http://arxiv.org/a/jenkins_j_1.atom

当たりをつけて見てみると・・・以下の論文に変動のグラフが載っていました。

論文の中身を読まずに、図だけ見ているのですが、たぶん以下の図は、1日の中でも時刻によって崩壊の速度が周期性を持って変動する事を示しているように思えます。
このブログでも少し取り上げた事がありますが、常温核融合反応にも1日の間隔での周期性があることを水野忠彦博士らが以下の論文で報告しています。これも実は同じ原因に基づくものかも・・と想像すると楽しいですね。

Scholkmann, F., T. Mizuno, and D.J. Nagel, Statistical Analysis of Unexpected Daily Variations in an Electrochemical Transmutation Experiment.
J. Condensed Matter Nucl. Sci., 2012. 8.
http://lenr-canr.org/acrobat/BiberianJPjcondensedg.pdf#page=43

ここまで書いてきて、この関連性について、既にJedさんが指摘していると自分で記事に書いてと気付きました。その時は半減期の変動現象に興味がなかったので気が付かなかったんですね。認識によってニュースから読み取れる内容は大いに違ってくると改めて思った次第です。

以上

2014年6月15日日曜日

束縛状態ベータ崩壊での半減期の短縮とナノ銀との関係は?

前回の記事で紹介した本の第9節「New visions for handling nuclear waste (Accelerating radioactive decay)」で知った話です。

この中に放射性物質の半減期が短縮された(崩壊が加速された)例として、「束縛状態ベータ崩壊(Bound-state beta decay)」が挙げられています。この実験については日本語の文献にも記載されていたので引用します。

エキゾチック核の寿命と質量の精密測定」から引用。
通常原子核は中性で電子に覆われているため、ベータ崩壊では崩壊電子とニュートリノは核外へ放出される。ところが軌道電子をすべて剥ぎ取った状態では、崩壊電子にパウリ禁止律が働かず、電子はK殻にとどまりニュートリノのみが核外へ放出されるというエキゾチックな崩壊モード(束縛状態ベータ崩壊)が起こる。価数個分の電子の静止質量の変化に起因して崩壊のQ値が変わるため位相空間因子も変化し、例えば、中性な163Dy原子(安定に存在する)の半減期が 50日へと変化したり、宇宙時計として有名な187Reでは 5×10^9 年から9桁も速くなったりすることが報告されており、星の中心部に於ける熱いプラズマで起こる元素合成の理解に大きな影響を与えている。
4.重イオン蓄積リングを用いた不安定核構造の研究」から引用。
重イオン蓄積リングとは、加速した重イオンを入射し、一定の速さ(運動エネルギー)で閉曲線上に回し貯める装置のことです。ドイツのGSI(重イオン研究所)には世界で唯一不安定核分離装置と直結した重イオン蓄積リングESRがあります。ESRでは不安定核重イオンを相対論的エネルギーで入射、蓄積することができます。
相対論的エネルギーでは原子は周りの電子を剥ぎ取られてほとんど裸の原子核の状態になります。これにより通常の原子では見られない現象の研究が可能なのです。
我々のグループでは束縛状態β崩壊の研究を行っています。
これは、電子が完全に剥ぎ取られた原子核でのβ崩壊は通常の原子と異なり、ある確立でβ崩壊で放出される電子が直接娘核の原子内に取り込まれる、というものです。ある不安定核ではこの効果が大きく効き、その崩壊寿命が著しく変わる場合があります。特にこの効果は、銀河の寿命を調べる、宇宙時計に用いる不安定核(187Re等)では非常に重要になります。

上記では、163Dy(ジスプロシウム163)と187Re(レニウム187)の例が挙がっています。ジスプロシウム163は安定した原子で崩壊しない筈なのですが、全ての電子を剥ぎ取った状態では半減期50日(より正確には47日?)で崩壊するとのこと。もう一つのレニウム187の半減期はなんと約412億年という長期なのですが、この状態では半減期は約33年になったとのこと(Observation of Bound-State β− Decay of Fully Ionized 187Re: 187Re—187Os Cosmochronometry, Phys. Rev. Lett. 77, 5190 (1996).)。

この実験の事を知って気になるのがナノ銀による放射線低減実験との関連です。どういう仕組みなのか良く分かりませんが、ナノ銀粒子は銀イオンを放出すると主張されているようです。銀はイオン化傾向が低い(イオンになりにくい)原子なので、セシウムのようなイオン化傾向の高い(イオンになりやすい)原子に出会うと、セシウムから電子を奪って中性の銀に戻るのではないかと思います。さすがに、この反応で「全ての電子を剥ぎ取った状態」にはならないでしょうが、セシウム等の放射性物質をイオン化する事で半減期を短縮するような事が起こったりはしないでしょうか? 素人仮説に過ぎませんが、これまでのナノ銀による放射線低減実験でも水を付加する事で現象が進んだりしているのも、イオン化に関係あるのでは、と気になっています。今後の解明が進むのを期待したいと思います。

参考:

ジスプロシウム
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%82%B9%E3%83%97%E3%83%AD%E3%82%B7%E3%82%A6%E3%83%A0

パウリの排他原理(パウリ禁止律)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%82%A6%E3%83%AA%E3%81%AE%E6%8E%92%E4%BB%96%E5%8E%9F%E7%90%86

レニウム
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%83%8B%E3%82%A6%E3%83%A0

以上