2014年2月23日日曜日

ナノ銀による放射性セシウム汚染土壌の放射線低減現象の報告について

以前にも報じた通り、去る1月30日に、高エネルギー加速器研究機構(高エネ研)で行われた研究会「放射線検出器とその応用」 (第28回)で、岩崎信博士がナノ銀による放射線低減現象の報告が行われました。(発見者の阿部宣男博士の名前からこの現象は「Abe-Effect」と命名されています)
題名は、「4-5 nm粒径銀粒子による土壌中セシウム放射線低減現象 −初期の線量計測定データを中心に−」でした。

前回は予稿集もPDFで公開されていたのですが、今回はまだ公開されていないので、紙で貰った予稿集の内容と聴講した時の記憶にしたがって記事を書いています。

このブログでは既に何度も紹介していますが、ナノ銀粒子(平均4〜5nm)を担持したコラーゲン液を土壌に噴霧・滴下すると土壌中の残留ガンマ線量が直接的にかなりの程度に低下するという未知の現象についての探求の報告です。前回の研究会で衝撃的なデータが報告されましたが、今回もその改良版の実験結果について軽く報告がありました。以下、予稿集から引用します。

■引用開始
2013年7月に別の密封対照試料を用いた検証実験を終え、肯定的結果をある論文誌速報に投稿し、掲載可の連絡を12月に受けている。その主眼は、前報の主としてU9容器を用いた土壌実験の若干の懸念、即ちセシウム線源分布の試料内変動、体積変化、自己遮蔽効果等が示す見かけのγ線強度の変化(低減)の大きさを、できるだけ厚さの薄い密閉容器にして最小化し、かつ毎回試料容器を上下反転させた一組:表(蓋が上の通常位置)/裏(底が上の上下反転位置)の測定をして上記の諸効果の最大値を見積りながら、これらを平均して相殺させ、殆どあり得ない容器外への揮発・飛散効果の最小化も目指した。その上で、ナノ銀担持あり・なしのコラーゲン液滴下による対照試料実験にて有意な差を確認した。
■引用終了

昨年、岩崎先生にお会いして話を伺った際にも、「こういう放射線計測では上下反転が意外に影響を与える。そういった考慮まで含めて実験の精度を上げたい。」という趣旨の発言をされていたので、まさにそういった改善を施した実験を行われたのだと思います。論文の掲載が楽しみです。

さて、上記も重要な話題なのですが、今回の報告の中心は2011年5月から11月にかけて阿部博士が行った放射線量の測定値に対する考察でした。阿部博士は、この不思議な現象に気付いた後、3種類の土壌に対してナノ銀滴下実験を行なっており、実験体系や測定に課題はあったものの、今では計測できない非常に貴重なデータとなっています。

測定方法

  • 土壌は3種類:(A)はホタル生態環境館の雨樋下の土壌、(B)と(C)は福島県内の同じ自治体内の別の場所の土壌。
  • 土壌を約20グラムにとりわけ、均一になるように撹拌し、市販ポリエチレン製円筒形タッパー(容器外形54mm)に入れ、ならして蓋をして計測対象とする。
  • 最初に初期値を測定。
  • (A)、(B)には、20ppmのナノ銀コラーゲン溶液を噴霧。
  • (C)には、ナノ銀担持タルク水(UFS-TP300)20ppmを噴霧。
  • その後、毎日ほぼ定時に一回、線量を測定、記録。

課題

  • バックグラウンド放射線を測定していない。
  • 対照系を測定していない。
  • 測定時点では放射性セシウムだけでなく、半減期の短い放射性ヨウ素の減衰があった可能性がある。


この測定結果が以下のグラフです。

如何でしょうか。
縦軸が対数軸になっている事にご注意ください。ある程度で減衰が緩やかになるようですが、前半部分はかなり綺麗な指数関数的な減衰傾向を示しているように見えます。また、特に(C)試料では、減衰率が非常に大きく、当初の100分の1以下まで減衰しているのも興味深い点です。最近の土壌実験では、ここまで減衰していない事から、セシウムが土壌成分と結合しない間の方が減衰効果が大きいのではないかと思えます(私見)。
幾つか課題のある測定だったので、この値を正しいとして定量的な評価をするのは不適当ですが、それでも本来非常に長い半減期を持つはずなのに、急速に減衰している様子は大きな意味を持つと思います。

何度も書いていることですが、これらの実験結果は学術的にも重大で、しかも我々の環境から放射性物質を少なくするのに使える可能性を持っています。この結果を見て興味を持たれた研究者には、是非追試をお願いしたいと思います。

以上




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