2014年3月11日火曜日

板橋区ホタル生態環境館に迫る閉鎖の危機

今回は常温核融合にもナノ銀除染にも関係のない話題です。
ナノ銀による放射線低減現象を発見した阿部宣男博士は、板橋区のホタル生態環境館の館長を務めています。このホタル生態環境館に対して板橋区が廃止の決定をしたと聞いたので調べてみました。なお、本件については、阿部博士本人には取材しておらず、公開情報だけから記事を書いています。

板橋区では行政の施策の評価を毎年行なっているようで、平成24年度の評価結果は以下のページに公開されています。


ホタル生態環境館の廃止の決定を受けたという評価結果は「平成24年度板橋区行政評価結果 付:板橋区行政評価委員会報告書」(このPDFファイル)に載っています。
一覧表を見ると、P.28に「ホタル飼育施設管理運営」という名称で、ホタル生態環境館の評価が載っており、外部評価と二次評価ともに「休廃止」となっています。


この評価の経緯は、「板橋区施策評価表(平成24年度)」(このPDFファイル)に載っています。
ここに書かれている外部評価(行政評価委員会による評価)の内容は以下の通りで、評価として【休廃止】となっています。(引用の改行は引用者によります)
【今後のあり方の視点】 
施設の室内通路等が乱雑な状態で、予告もなく休館となる場合も散見され、公開を前提とした施設の体を成しているとは言い難い。 
ホタルの夕べでは、多数のボランティアや地域住民の協力もあり、かつ施設を評価している区民も多く存在することから、公共施設としての自覚を持ち、早急に改善を進めること。 
また、ホタルの生態に関する研究成果に対しては一定の評価ができるが、そもそも、区として研究のための施設が必要であるか疑問である。 
中長期的な視点に立てば、施設の老朽化や属人的な能力に依存した施設運営がなされていることから、建て替えを契機に廃止を検討されたい。
この指摘を読み解いてみます。1文目は「今後のあり方の視点」であり、休廃止の決定理由が今後の展望の問題にあると示しているようです。2文目は「施設の体を成しているとは言い難い」と運営の問題点を指摘していますが、3文目では「早急な改善を進めること」となっており、この問題点が休廃止の理由ではないと読み取れます。4文目では、「区として研究のための施設が必要であるか疑問」と指摘しています。しかし、ホタル生態環境館は「再び板橋区にホタルを呼び戻し、自然と共生する「エコポリス板橋」の実現」を目的としていて、研究と実践はそのための手段です。そもそも研究を目的とした施設では無いのですから、この指摘は的外れでしょう
要するに、2〜4文目の指摘は休廃止評価の理由ではありません。5文目に指摘された「施設の老朽化や属人的な能力に依存した施設運営がなされている」点だけが理由だと読み取れます。

ところが、5文目の指摘については、既に区側でも課題と認識していて、同じ文書の中で、解決に向けた検討状況を以下のように記述しています。上記の外部評価では、この検討状況に対する言及がありません。解決に向けた検討を無視しての「休廃止」評価は納得できません
4 今後の展開方針、課題・懸案事項
今後の事業運営スキ-ムについて、早急に検討を進める必要がある。
方向性として、これまで区が行ってきた事業を、NPO法人等に引き継げないか検討する。
また、現在のホタル生態環境館は、施設の老朽化が進んでいることから他施設への移転も含めて検討する。
さらに、上記の外部評価を受けて行われた区の二次評価(区の最終評価)の内容は以下の通りで、最終評価はやはり【休廃止】となっています。
施策実現手段としての必要性の観点と、厳しい財政状況及び施設の老朽化に鑑み、廃止の方向を含めた検討を進めること。
開設中にあっては外部評価での指摘を踏まえ、公開施設にふさわしい事業運営に心がけること。
この指摘を読み解いてみます。2文目は、「開設中にあたっては」とある通り、休廃止を決めた理由ではありません。理由は1文目だと考えられます。外部評価との関連付けは明確には示されていませんが、「施策実現手段としての必要性の観点」は外部評価で指摘された「区として研究のための施設が必要であるか疑問」を受けたものだと思います。しかし、これについては既に指摘したように、そもそも研究を目的とする施設ではないので、的外れな指摘でしょう。また、「厳しい財政状況及び施設の老朽化に鑑み」についても、既に指摘したように、区で行なっている検討を無視しての評価であり、休廃止の論拠としては不十分だと思います

行政評価の趣旨に立ち返れば、評価表に記された事務事業の概要(以下)に沿ったものになっているか否かが最も重要な評価観点だと思います。
区民に対し、緑と水辺の再生事業の一環として、環境指標昆虫であるホタルが生息できる環境をつくり、生育過程、成虫の飛翔等の公開を通じ、生きものとのふれあい体験の機会を提供や、ホタルを中心とした生態系や生物多様性の大切さを理解してもらうことで、意識啓発を行い環境意識向上を図る。
この点について、やはり評価表に記載されている「区民意見等の状況(アンケート調査や個別要望等)、類似・関連事業や他自治体との比較など」を読んでみましょう。この文章では、入場者の満足度は非常に高く、他自治体との比較でも貴重な施設との評価を受けています。(赤字は引用者による)
夜間特別公開実施時のアンケート結果では、入場者の43.5%が区内在住者で都内(板橋以外)37%他県19.5%となっている。入場者の91.1%が「大変よかった」と満足度は高く、92.3%がまた次回見たいとの感想を寄せている。他自治体との比較では、全国でも数少ない貴重な施設となっている
また、「有効性の視点による評価(手段の工夫・協働の取り組み)」を読むと、地域住民やボランティアと協働した運営を実践できており、むしろ、地域に支えられた良い運営ができているように思えます。(赤字は引用者による)
近年その機会が失われている生きものとのふれあいや、生態環境、生物多様性の大切さを体験できる施設として有効である。特別公開時などには、地域住民やボランティア等と協働した運営を実践している

この施設の存続/廃止を決めるのは板橋区民の皆様です。板橋区民ではない私が口を挟むのは僭越ですが、ここまで見てきた限りでは、ホタル生態環境館は運営に課題を抱えてはいるものの、入場者や地域の人々に対して満足の行くサービスを提供しているように思えます。採るべき道は廃止ではなく、存続させての運営改善ではないでしょうか?
おそらく、一旦廃止されて、ホタルの生息環境が失われてしまうと、再度の立ち上げは難しくなると想像します。その観点でも廃止の決定には疑問を持ちます。板橋区民の皆様、再度、考えなおされては如何でしょうか。

以上

12 件のコメント:

  1. "属人的な能力に依存した施設運営がなされていることから"とありますがこれは阿部前館長が公務員かつ館長という立場でありながらナノ純銀による放射能除染など非科学的な主張を行い、それに対するクレームも相当数あったことを暗に指しているのでしょう。

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  2. ついでに言うと阿部氏は「生まれた場所からわずか400m移動しただけでも、放たれたホタルは異変を来す」という学会では認められていない主張も行っておりましてホタルという自然からの使者的なものを背景にエネギッシュに語る姿は「水からの伝言」的様相を呈していたと言えるでしょう。(ホタルの異変云々はYouTube探せばでてくると思います)

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  3. 「属人的な能力に依存した施設運営」とは、阿部宣男博士がホタル飼育や淡水生態系の構築について非常に高いスキルを持っており、その献身的な活動がホタル生態環境館を支えている事を指していると思っています。
    ちなみに、ナノ銀による放射性物質低減現象(Abe-Effect)の発見は非常に重要で、追試を行なって更なる探求をすべきテーマだと思っています。本件の方が、むしろこのブログの主題であり、これまでの実験データ等へのインデックスは以下にまとめました。
    http://amateur-lenr.blogspot.jp/2013/06/blog-post_16.html

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  4. 私はホタルについては良く分かっておらず、その研究を深堀りして調べるつもりも無いので、学会での主流がどうなのかについては私見を持ちあわせていません。なので、この件についてはコメントできません。

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  5. 2月25日付都政新報(=文字通り、東京都の都政や区政に関する業界紙です)の1面コラム「都政の東西」がこの「ホタル生態環境館」問題を取り上げています。

    このコラムでも「誰が担当してもあつれきが生じる繰り返しだったのではないか」「二十年来の管理体制の不備」「(運営の検証が)遅きに失した感は否めない」という一方で「区民の評価が高い」「区のブランドの一つ」といささか捉え方に困っているようです。

    さて、「民主的かつ能率的に職務を遂行する」は公務の基本です。
    (職員の服務の宣誓に関する条例をご覧いただければ分かります)
    「属人的」なことは、その人が言うことがイチバン!なわけですから、民主的ではありません。また、「属人的」では担当者が変わったら運営に困るので、能率的でもありません。なので、「属人的」は行政においては相当ネガティブな評価です。

    良い施設なのかも知れないが、行政でやるには望ましくない、ということでしょう。

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  6. ホタル飼育のために、区が委託契約はむし企画なる事業者に年間1千数百万円支払っていたが、そのうち何割かは阿部氏に流れていた。その金で阿部氏はホタルを外部から買っていたようだ。これって詐欺ではないか。我々区民は、ホタル館で育ったものをして、毎年鑑賞会を楽しみにしていたのに!!!

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    1. すみませんが、「そのうち何割かは阿部氏に流れていた」というような事実認定はされていません。全くのデマだと考えます。
      とても適切とは思えない板橋区の懲戒理由でさえも、そのような指摘はしていません。

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  7.  板橋区ホタル生態環境館の前飼育担当職員(元職員)が3月28日付けで板橋区を懲戒免職になりました。
     懲戒の理由となったのは、①クロマルハナバチ販売 、②他自治体でのホタルの水路造営に関することで、いずれも板橋区に断りなく独断で他自治体に事業を持ちかけ、営利企業に便宜供与した事実が確認されたためです。

     ホタル館をめぐる数々の疑惑にはじめて決着がついたことになりますが、ホタルの闇はこれだけではありません。今回は懲戒理由のほかの問題について検討したいと思います。

     最大の問題は「ホタル館でほんとうにホタルを飼育していたのか?」という疑惑です。すでに2月19日の区民環境委員会では「ホタルの成虫を外部から持ち込んだ」という関係者の証言があったことが報告されています。今回の懲戒免職の処分理由には含まれていませんが、外部からの持ち込みがあったのか、どうか、をぜひとも解明しなければなりません。

     この問題を考えるうえで重要なのは、元職員がかかわっていた全国各地でのホタル放流イベントです。

     たとえば2012年6月4日、「ふくしま復興ホタルプロジェクト」 というイベントで、福島県いわき市でゲンジ300匹、ヘイケ400匹の幼虫を放流しています。このイベントは当時、マスコミでも大々的に報道されました。
     朝日新聞の「板橋のホタル 福島に里帰り」と見出しを掲げた記事では、放流したゲンジボタルは、「区のホタル生態環境館が、23年前に同(福島)県大熊町で採取した卵から繁殖を続けてきたものだ」と説明されています。

     しかし、この記事の中にはイベントに板橋区が協力、協賛したということがどこにも書かれていません。

     私はことし3月7日の区議会代表質問で「この福島県いわき市でのホタル放流イベントに板橋区がホタルの幼虫を提供した事実はあるか?」と坂本健区長に尋ねました。

     区長はつぎのとおり答弁しました。

     「福島県いわき市でのホタル放流につきましては、板橋区としての正式な依頼は受けてございません。

     また、ホタル生態環境館の担当者に確認をしましたが、板橋区のホタルを福島県いわき市に提供した事実はないとのことでした」

     一方で元職員は2014年3月19日、フェイスブック上に「(区長の快諾を得たうえで)板橋区ホタル生態環境館からいわき市ホタル復興プロジェクトへはゲンジボタルの4~5令幼虫約数百匹を移しました」 と書いており、区長答弁と対立しています。

     どちらが本当なのでしょうか?

     元職員は「区長の快諾」の根拠は、2012年5月11日、福島県大熊町の町長と議長の一行が、板橋区ホタル生態環境館 を見学したときの、区長と町長の会話のようです。じっさいにホタル放流イベントが話題になったとしても不自然ではありませんが、立ち話だけで「幼虫の提供」が決定されるはずはありません。

     区長自身が本会議場で答弁した「正式な依頼は受けていない」が事実でしょう。

     それでもいわき市で放流したホタルは板橋区ホタル館で飼育したホタルだと元職員が主張し続けるのであれば、元職員の独断によるものであり、区の財産の横領、または窃盗に近い行為だと言わざるを得ません。

     しかし私は、ホタル館のホタルを放流したとは、思っていません。

     いわき市に2012年6月4日に放流された幼虫は、7月21、22日には成虫となりホタル観賞会が予定されていました。

     一方、板橋区ホタル館では6月22~24日に成虫が公開されています。

     私が疑問に思うのは、7月に成虫になるホタル(元職員は「4~5令幼虫約数百匹」といっています)と、6月中に成虫になるホタルを、どうやって仕分けたのか? ということです。

     もちろん、ホタルの専門家であるなら、幼虫の大きさで成長の程度は見分けはつくでしょう。しかし、700匹のホタルをホタル館のせせらぎから捕獲し、選別するのは、時間も手間も人手もかかるはずです。

     そもそも羽化直前の時期にせせらぎに足を踏み入れて、ホタルに悪影響はないのか?心配するはずです。

    どんな作業をすれば、ホタル館で7月に成虫になる4~5令虫のみをゲンジ300匹、ヘイケ400匹も選別できるのか? 元職員に説明してもらわなければなりません。

     いわき市に大熊町由来のゲンジボタルを放流することについては、当時から「同じ福島県内とはいえ、ホタルの遺伝子の地域性を撹乱するもので、放流すべきではない」という批判がありました。

     元職員はこの批判に対して、自身の著書「ホタルよ、福島にふたたび」 などで、「東北のホタルは同じ遺伝子」など反論しています。

    そして、この著書のなかで、いわき市に放流したヘイケボタルは「21年前にいわき市から預かった成虫の卵を孵化させたもの」と書いています。

     いままで板橋区ホタル館のヘイケボタルは栃木県栗山町(現・日光市)で採取した卵を累代飼育をしてきたといわれてきました。

    いわき市由来のヘイケボタルを20年以上も飼育しつづけてきたという話は、このいわき市での放流イベントで、はじめて聞く話です。

     著書のなかにはさらに、「『生態環境館』では全国23か所のホタルさんを預かり、施設内で繁殖させているのですが、それぞれの遺伝子を保存し続けることにも配慮しています」と書かれています。

     インターネット上を検索してみると、たとえば2012年3月におこなわれた鎌倉市のある有名神社でのホタルの放流では、地元紙が「(鎌倉の)蛍の卵を東京都の『板橋区ホタル生態環境館』に預け、孵化・飼育させたもの」と報道 しています。

     私がことし3月に、神社に電話で確認すると、神社のホタル担当の方は「震災後に全滅のリスクを避けるため、神社で生まれた卵の一部を板橋区ホタル館に預けたことがある」と話してくれました。

    以上は区会議員の松崎いたる氏のプログより

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    1. 日本共産党の松崎いたる区議のブログからの転載のようですが、この方の出す情報については、様々な問題が指摘されています。
      また、印象操作としか思えない発言をされるので、内容については十分に吟味してから真偽を判断する必要があると思っております。

      問題指摘については以下を参照ください。

      http://hotaru-save.jimdo.com/%E6%9D%BE%E5%B4%8E%E3%81%84%E3%81%9F%E3%82%8B%E8%AD%B0%E5%93%A1%E3%81%AE%E7%96%91%E7%BE%A9%E3%81%B8%E5%9B%9E%E7%AD%94/

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  8. 松﨑いたる2014年5月5日 0:14

    「印象操作としか思えない発言をされる」っていうこと自体、ずいぶんな印象操作ですね。

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  9. 松崎様 あなたの発言、ネット上での書き込み及びリツィートはすべて根拠の無いものなんじゃないんですか?
    もし、正しいと主張したいのなら、すべての根拠を示せば済むことでしょう。見たところ全くそれが出来ていないね?
    因みに、今、ネットでの発言がかなり些細なことでも名誉毀損にあたると、テレビの法律番組でも良く放送されているのを知りませんか?気をつけた方が良いと思いますよ。
    正しい根拠が無ければ、インチキなどということば一つでアウト!名誉毀損だそうだ!

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  10. 因みに、区議会や委員会の発言、議事録はみんな十分な証拠になるだろう。
    区側の発言はほとんど証拠が無いという噂だ。自分のことを棚に上げて、批判ばかりしてないで、法律を勉強して、発言をチェックしたらどうかな。

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