2014年6月29日日曜日

Edmund Storms博士の新著が7月発売予定

常温核融合の研究者として著名なEdmund Storms博士の新著が7月7日に発売される予定とのこと。題名は「The Explanation of Low Energy Nuclear Reaction」です。日本語だと「常温核融合(低エネルギー核反応)詳説」といった感じでしょうか。

351ページで28ドルのようです。今のところ電子版はないようです(また積読になりそうなので、しばらくは買わないつもりです)。

紹介は以下に出ています。


以下から購入できるようです。


以上






JCF-14のプロシーディングスが公開されています

2013年12月7日(土)~12月8日(日)に東京工業大学で開催された日本常温核融合研究会(JCFRS)の第14回年会のプロシーディングスが公開されました(ここ)。合計14編の論文が収録されており、235ページのPDF文書となっています。

実験論文としては、北村晃博士らの「JCF14-1. Study on Anomalous Heat Evolution from H-Ni Nanoparticle System at Elevated Temperature with Mass-Flow Calorimetry」が相当な過剰熱を検出していて注目されるのではないかと思います(15Wを80時間、10Wを3週間など)。小島英夫博士の理論論文も面白そうなのですが、私の方に理解できる能力がないのが残念です。

ちなみに、JCF-4以降のプロシーディングスは、以下のページで電子的に公開されています。


以上

2014年6月15日日曜日

束縛状態ベータ崩壊での半減期の短縮とナノ銀との関係は?

前回の記事で紹介した本の第9節「New visions for handling nuclear waste (Accelerating radioactive decay)」で知った話です。

この中に放射性物質の半減期が短縮された(崩壊が加速された)例として、「束縛状態ベータ崩壊(Bound-state beta decay)」が挙げられています。この実験については日本語の文献にも記載されていたので引用します。

エキゾチック核の寿命と質量の精密測定」から引用。
通常原子核は中性で電子に覆われているため、ベータ崩壊では崩壊電子とニュートリノは核外へ放出される。ところが軌道電子をすべて剥ぎ取った状態では、崩壊電子にパウリ禁止律が働かず、電子はK殻にとどまりニュートリノのみが核外へ放出されるというエキゾチックな崩壊モード(束縛状態ベータ崩壊)が起こる。価数個分の電子の静止質量の変化に起因して崩壊のQ値が変わるため位相空間因子も変化し、例えば、中性な163Dy原子(安定に存在する)の半減期が 50日へと変化したり、宇宙時計として有名な187Reでは 5×10^9 年から9桁も速くなったりすることが報告されており、星の中心部に於ける熱いプラズマで起こる元素合成の理解に大きな影響を与えている。
4.重イオン蓄積リングを用いた不安定核構造の研究」から引用。
重イオン蓄積リングとは、加速した重イオンを入射し、一定の速さ(運動エネルギー)で閉曲線上に回し貯める装置のことです。ドイツのGSI(重イオン研究所)には世界で唯一不安定核分離装置と直結した重イオン蓄積リングESRがあります。ESRでは不安定核重イオンを相対論的エネルギーで入射、蓄積することができます。
相対論的エネルギーでは原子は周りの電子を剥ぎ取られてほとんど裸の原子核の状態になります。これにより通常の原子では見られない現象の研究が可能なのです。
我々のグループでは束縛状態β崩壊の研究を行っています。
これは、電子が完全に剥ぎ取られた原子核でのβ崩壊は通常の原子と異なり、ある確立でβ崩壊で放出される電子が直接娘核の原子内に取り込まれる、というものです。ある不安定核ではこの効果が大きく効き、その崩壊寿命が著しく変わる場合があります。特にこの効果は、銀河の寿命を調べる、宇宙時計に用いる不安定核(187Re等)では非常に重要になります。

上記では、163Dy(ジスプロシウム163)と187Re(レニウム187)の例が挙がっています。ジスプロシウム163は安定した原子で崩壊しない筈なのですが、全ての電子を剥ぎ取った状態では半減期50日(より正確には47日?)で崩壊するとのこと。もう一つのレニウム187の半減期はなんと約412億年という長期なのですが、この状態では半減期は約33年になったとのこと(Observation of Bound-State β− Decay of Fully Ionized 187Re: 187Re—187Os Cosmochronometry, Phys. Rev. Lett. 77, 5190 (1996).)。

この実験の事を知って気になるのがナノ銀による放射線低減実験との関連です。どういう仕組みなのか良く分かりませんが、ナノ銀粒子は銀イオンを放出すると主張されているようです。銀はイオン化傾向が低い(イオンになりにくい)原子なので、セシウムのようなイオン化傾向の高い(イオンになりやすい)原子に出会うと、セシウムから電子を奪って中性の銀に戻るのではないかと思います。さすがに、この反応で「全ての電子を剥ぎ取った状態」にはならないでしょうが、セシウム等の放射性物質をイオン化する事で半減期を短縮するような事が起こったりはしないでしょうか? 素人仮説に過ぎませんが、これまでのナノ銀による放射線低減実験でも水を付加する事で現象が進んだりしているのも、イオン化に関係あるのでは、と気になっています。今後の解明が進むのを期待したいと思います。

参考:

ジスプロシウム
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%82%B9%E3%83%97%E3%83%AD%E3%82%B7%E3%82%A6%E3%83%A0

パウリの排他原理(パウリ禁止律)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%82%A6%E3%83%AA%E3%81%AE%E6%8E%92%E4%BB%96%E5%8E%9F%E7%90%86

レニウム
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%83%8B%E3%82%A6%E3%83%A0

以上

2014年6月14日土曜日

書籍紹介:ナノテクノロジー時代のグリーンなナノエネルギー

面白そうな本を買ったのでご紹介します。
Green Nanoenergy Resources in the Age of Nanoscience Technologies: Green Nanoenergy Visions [Kindle版]という本で日本のAmazonで817円で売られています。残念ながら英語です(笑)。Kindleの普及でこういうマイナー?な洋書が日本でもその場で買えるようになったのは、素晴らしい変化ですね。


Amazonのページにあった目次の内容を末尾に載せました(赤字を付けたのは引用者です)。Kindle本としては作り方が不十分なようで、リンク付きの目次が無かったり、引用文献へのリンクが張られていなかったり、色々と不備があるようです。また、著者は「Jamal SHRAIR」という人で、Amazon上に表示されているのは別の人です(編集者?)。研究者は ここ で類似の論文を読めるのかもしれません。同じ著者のヘリカル・ユニバースという本については立派なプロモーションページもできています。

内容で私が興味を惹かれたのは、目次の中の以下の項目です。
9- New visions for handling nuclear waste (Accelerating radioactive decay)
この第9節には、放射性廃棄物を無害化する方法、より正確に言えば、高エネルギーを使わずに放射性物質の崩壊を加速する実験結果が紹介されています。放射性物質の半減期は(高エネルギーな放射線照射以外には)人為的には変えられないと考えられていますから、これまでにも色々と実験結果が出ていたと知ったのは驚きでした。残念ながら、ナノ銀による放射線低減現象については触れられていませんが、何か関連が出てくるかもしれないと期待を感じます。

本の題名からすると、筆者の観点はナノテクノロジーによって可能となるグリーンでナノサイズのエネルギー源です。これはまさに常温核融合の事を示していると思いますが、予想に違わず、末尾に挙げられた80編の参考文献のうちかなりの数は常温核融合関連でした。ただ、第9節以外は読んでいないので全体は評価できません。たぶん、上記の第9節以外は読まないで積読状態になりそうな気がしますが、私にとっては第9節だけでも817円分の価値はありました。

参考:目次
Contents

Part one: Overview and introduction of important fields in nanoscience technologies:

1- Nanomedicine
2- DNA motor
3- Nanoscience technologies will bring a new era of space exploration and space economic benefits to mankind

Part two: Application of Nanoscience Technologies in the Energy Industry:

1- The Global Energy Situation
2- Fossil fuels that can be enhanced through the use of nanotechnology
Geothermal energy, Natural gas, Methane hydrates, Coal and Carbon Sequestration
3- Nanotechnology Benefits for Developing Efficient and Cost-EffectiveSolar Power
4- Realization of the space energy dream
5- The Future of Nuclear Energy with the Application of Nanotechnology
6- Direct conversion of nuclear energy into electricity with new nanostructured materials
7- Small Scale Reactors
8- Small Size Thorium-fuelled ADS reactors
9- New visions for handling nuclear waste (Accelerating radioactive decay)
10- Nuclear Fusion
11- The History and Problems of Controlled Thermonuclear Fusion
12- New Concepts and Approaches Generating Fusion reactions in Laboratory
13- Pyroelectric fusion
14- Sonofusion
15- Focus fusion
16- How focus fusion is supposed to work
17- Solid-State Nuclear Fusion
18- Evaluations of the Research Activities Of Solid-State Nuclear Fusion....etc

以上