2010年2月14日日曜日

岩手大学の常温核融合研究について

平成20年度の「電気関係学会東北支部連合大会」という学会で、岩手大学の山田弘博士の研究チームと思われる方々が常温核融合関連の研究発表をされていました。その発表論文(A4一枚)が公開されていたので、末尾に一覧を示します。論文は1枚にまとまっているので、素人にも取っつき易いものです。

常温核融合現象というと重水素を使った過剰熱発生の実験ばかりが注目されるきらいがありますが、常温核融合現象の面白さはそれだけではありません。実験の中でヘリウム以外の様々な元素の生成が観測されており、理論は構築されていないものの、常温でも多種多様な元素変換が起こるらしいのです。

この学会での5つの発表は、元素変換やその過程での荷電粒子放出に着目して、生成された元素や荷電粒子を報告しています。

以下、発表の題名リストを示します。余計なお世話ですが、自分の理解のために勝手に私がまとめた内容を数行付加しています。★をつけた文は私の感想です。

目次は以下で参照できます。
http://www.jstage.jst.go.jp/browse/tsjc/2008/0/_contents/10/-char/ja/

<プラズマ・放電 (2)>
8月21日(木) 10:30~12:15
座長:向山 政治(岩手大学)

■Li2SO4軽水電気分解法による各種陰極表面元素分析
http://www.jstage.jst.go.jp/article/tsjc/2008/0/338/_pdf/-char/ja/
*馬場 秀晴, 長尾 慎也, 曽根 悌輔, 成田 晋也, 山田 弘

以下の条件で軽水電気分解を49日間行ったところ、35日目の陰極表面にAl(アルミニウム)、Ga(ガリウム)、Na(ナトリウム)、K(カリウム)を検出(TOF-SIMS分析)。
陰極:Pd(パラジウム)
陽極:Pt(白金)
電解液:Li2SO4(硫酸リチウム)を超純水で希釈
電流:約3mAの定電流
★長い期間実験すると現れる、という不確実性が面白いですね。これが常温核融合現象の特徴だと思います。


■高気圧軽水素透過法によるPd表面の元素分析
http://www.jstage.jst.go.jp/article/tsjc/2008/0/339/_pdf/-char/ja/
*三原 崇史, 佐々木 皓成, 佐々木 智世, 佐藤 大輔, 飯田 恒司, 大畑 秀壮, 成田 晋也, 山田 弘

Li2SO4溶液の電気分解によりPd表面にLiを添加。
H2(軽水素)ガスを1MPaの圧力で2週間透過。温度は120度。
未透過試料では質量数27、28近傍の2つのピークが存在するが、透過試料では新たに質量数23、32、39にピークが現れた。
特に質量数23及び28のカウント数の増加が顕著である。
これらのピークに対応する元素はそれぞれ23Na(ナトリウム)、27Al(アルミニウム)、28Si(ケイ素)、32S(硫黄)、39K(カリウム)と考えられる。
★「軽水素」透過での元素変換現象の確認である所が新しいとの事。


■重水素透過法による質量数137元素の変換生成
http://www.jstage.jst.go.jp/article/tsjc/2008/0/340/_pdf/-char/ja/
*飯田 恒司, 佐藤 大輔, 大畑 秀壮, 佐々木 皓成, 三原 崇史, 佐々木 智世, 成田 晋也, 山田 弘

CaO層(厚さ2nm)とPd層(厚さ18nmと40nm)を交互に5層堆積。電気分解によって表面にCs(セシウム)を添加。Cs添加面からD2ガスを透過させる。透過は10日間行い、その間試料台を70℃に保つ。
結果として141Pr(プラセオジム)の生成は確認されなかったが、質量数137付近にピークが観られた。
★質量数137というとバリウムでしょうか。


■薄膜パラジウムからの重水素放出過程における核反応事象の探索
http://www.jstage.jst.go.jp/article/tsjc/2008/0/341/_pdf/-char/ja/
*福田 義朗, 高橋 達郎, 永井 浩貴, 成田 晋也, 山田 弘

水素吸蔵合金であるPd(パラジウム)箔に、Pd、Au、CaOなどを片面または両面に修飾。この試料に重水素を加圧吸蔵(10気圧、20時間)し、吸蔵率を計測。その後、試料を真空内に設置し、電流印加によって脱蔵。その際に発生する荷電粒子を計測。
実験の結果、表面の修飾によって吸蔵率が異なること、試料からの突発的な重水素放出(脱蔵)時に荷電粒子が生成されたことを観測。


■金属複合膜陰極を用いた重水素気中放電における核現象の検証
http://www.jstage.jst.go.jp/article/tsjc/2008/0/342/_pdf/-char/ja/
*檜山 伸也, 鳴海 純也, 村上 達政, 成田 晋也, 山田 弘

Pd/Au試料およびPd/CaO多層膜試料を陰極に用いた重水素気中放電を行い、陰極試料への重水素照射の際の核変換生成物について調査。Pd/CaO試料では、Mg(マグネシウム)、Al(アルミニウム)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)、Ga(ガリウム)、Zr(ジルコニウム)、Hg(水銀)が、Pd/Au試料では、Mg、Al、Mn(マンガン)、Hgが検出された。


以上

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