2014年1月12日日曜日

劣化ウラン弾は常温核融合技術で核反応を起こしているか?

正月休み中に、元旦早々、驚きの講演動画を見てしまったので紹介します。

3つの「劣化ウラン弾」の秘密 - 出版記念講演 (Emilio Del Giudice 編).mp4
http://www.youtube.com/watch?v=EtdM8xIR9JI

米軍が中東等で用いた「劣化ウラン弾」は、深刻な被害の元凶として批判されています。「ウラン」と言っても、核分裂を起こすウラニウム235を取り去った後のウラニウム238が主成分なので、核反応は起こさないと考えられています。弾頭として用いられるのは、その比重の重さと硬さから、他の金属よりも貫通力や燃焼力に優れているからだと言われています。

ところが、この講演では、劣化ウラン弾を使用した跡地から、通常よりも高濃度なウラニウム235が検出されたり、弾頭の燃焼とは考えにくい戦車の溶解(たいへんな熱量が必要)の残骸が発見されている事から、実は、核反応が起こっているのではないか、つまり、劣化ウラン弾とは超小型の核爆弾ではないのか・・という疑惑について説明しています。かなり陰謀の推理の要素がありますし、この講演の中ではエビデンスとなる資料が示されていないので、鵜呑みにしない注意は必要ですが、非常に興味深い仮説です。

かなり長いイタリア語の動画に日本語字幕をつけてくれたネメシスさんの努力は素晴らしく、たいへん感謝します。どうもありがとうございました。ただ、私は、リチャード・コシミズ氏の主張する陰謀論は支離滅裂で論じるに値しないと思っており、そのブログのコメント欄に紹介を載せておられるのは残念です。信頼度が傷つくのが勿体ないと思います。

さて、動画の中身ですが、本の共同執筆者であり、イタリアの常温核融合研究者でもあるエミーリオ・デル・ジュディチェ博士が、核分裂爆弾の持つ「臨界質量」の制約に縛られず、小型化を可能とするために「常温核融合」技術がどう使われるのかの仮説を説明しています。

前半は、(一部を除いて) 分かりやすい常温核融合の説明になっています。フライシュマン博士やプレパラータ博士の業績や追試のポイントなども、比喩を使って素人向けに語ってくれています。後半が、常温核融合で使われる水素吸蔵のテクニックをウランに対して使ったのではないかとの疑惑の説明です。このような可能性の示唆を見るのは初めてですが、説得力があります。また、この軍事利用技術を隠すために、常温核融合が非難されるように仕向けられてきたのではないかとの疑問についての言及も興味深い指摘です。

以下、内容についての簡単なメモです。興味のある方は、是非、動画の方を視聴していただければと思います。

  • パラジウムなどの金属に重水素を吸収させて常温核融合反応を起こすと、過剰熱と同時にヘリウムが発生する事が知られている。
  • この時、パラジウム原子と重水素原子の比率が1:1程度になるまで重水素を吸蔵させるのがポイント。この密度を超えるあたりから常温核融合反応が始まる。
  • パラジウムと重水素で常温核融合を起こした際には、重水素だけでなく、パラジウムの側にも変化が起こっている。事後にパラジウム電極の元素を分析すると、ニッケルが検出される。パラジウムの原子番号は46、ニッケルの原子番号は28。だいたい半分くらいにパカッと割れてニッケルになった感じ。激しいエネルギー放出を伴わないので核分裂というより、核分割という表現が相応しいだろう。
  • このパラジウムの核分割はエネルギーを食う反応。つまり、重水素が融合してヘリウムに変わる時に放出するエネルギーを減じる方向に作用する。
  • ここで、パラジウムの代わりにウランを使ったらどうなるだろうか? 実は、ウランは優秀な水素吸蔵金属である。そして、パラジウムとは逆に、核分割の際には膨大なエネルギーを放出する。常温核融合反応が起こる寸前まで重水素を吸蔵させておき、着弾した時に何らかの刺激で反応を起こす仕組みが作れれば、ライフル弾の大きさで大砲の威力を持つ兵器が作れるのではないか。
  • 湾岸戦争の跡地では、ドロドロに溶けた戦車が見つかっている。通常兵器では、このような高い熱量は生み出せない。ここで説明した超小型の核爆弾が使われたのではないか?
  • 「劣化ウラン弾」と言われているが、これは三種類の効果を持つ弾頭ではないか。一つ目は、ウランの硬度を活かした表向きの看板通りの劣化ウラン弾。二つ目は、原子炉などから出る「使用済み核燃料」を使用して、放射性の微細粉塵で環境を汚染し病気を引き起こす「汚い爆弾(ダーティー・ボム)」。そして、三つ目が高エネルギーを発する「超小型の重水素ウラン核爆弾」である。

さて、関連する論文を探すために、Lenr-Canr.orgのライブラリをUranium(ウラニウム)のキーワードで検索すると11件の論文がヒットしました。この中で、ICCF-17で発表されたSongsheng Jiang博士(所属は中国の原子力研究所らしい)の論文が重水素を吸蔵させたウラニウムからの中性子バーストについて述べています。

Jiang, S., et al.
Neutron burst emissions from uranium deuteride and deuterium-loaded titanium.
in 17th International Conference on Cold Fusion. 2012. Daejeon, Korea.

ICCF-17の予稿が以下にあったので見てみると、重水素を吸蔵させたウラニウムからの中性子放射を調べたとあります。
http://newenergytimes.com/v2/conferences/2012/ICCF17/papers/Jiang-Neutron-Burst-Emissions-ICCF17-ps.pdf
We have measured the neutron random and burst emissions from the uranium deuteride and deuterium-loaded titanium samples at room temperature.
実験の詳細は不明ですが、結果については、明らかに中性子バーストが断続的に起こっているとしています。
The result clearly shows that anomalous neutron bursts occur intermittently in the uranium deuteride and deuterium-loaded titanium samples.
また、「cascade neutron bursts」が観測されたと考えてる、との主張があります。たぶん中性子放出の連鎖反応が起こっていると言ってるのだと思います。これまで、常温核融合反応では、ねずみ算式に連鎖拡大するケースは見つかっていないと理解していたので、驚きでした。劣化ウラン弾の正体に繋がるかどうかは分かりませんが、軍事的な用途への展開も含め、非常に凄い事を言ってるのではないかと思います。
This paper reports a new result of neutron burst emission from deuterium-loaded metals. In addition to neutron bursts induced by cosmic-ray spallations, the cascade neutron bursts are observed occasionally for uranium deuteride and deuterium-loaded titanium samples. After accidental artifact noise and cosmic-ray source are ruled out, we suggest that the cascade neutron bursts are correlated with the deuterium-loaded metals and may originate from nuclear reaction occurring on the metal surface with a micro-nanometer size [5, 13], but do not occur in the bulk materials and whole surface.
以上

自分のためのメモとして、ライブラリでUraniumのキーワードにヒットした論文の一覧を挙げておきます。

2002
Dash, J., et al. Effects of Glow Discharge with Hydrogen Isotope Plasmas on Radioactivity of Uranium. in The 9th International Conference on Cold Fusion, Condensed Matter Nuclear Science. 2002. Beijing, China: Tsinghua Univ. Press.

2003
Dash, J. and D. Chicea. Changes In The Radioactivity, Topography, And Surface Composition Of Uranium After Hydrogen Loading By Aqueous Electrolysis. in Tenth International Conference on Cold Fusion. 2003. Cambridge, MA: LENR-CANR.org.

2000
Dufour, J., et al. Hydrex Catallyzed Transmutation of Uranium and Palladium: Experimental Part. in 8th International Conference on Cold Fusion. 2000. Lerici (La Spezia), Italy: Italian Physical Society, Bologna, Italy.

2000
Dufour, J., et al., Hydrogen triggered exothermic reaction in uranium metal. Phys. Lett. A, 2000. 270: p. 254.

2001
Dufour, J., et al., Experimental observation of nuclear reactions in palladium and uranium -- possible explanation by hydrex mode. Fusion Technol., 2001. 40: p. 91.

1998
Forsley, L., et al. Analyzing Nuclear Ash from the Electrocatalytic Reduction of Radioactivity in Uranium and Thorium. in The Seventh International Conference on Cold Fusion. 1998. Vancouver, Canada: ENECO, Inc., Salt Lake City, UT.

2007
Hora, H. and G.H. Miley, Maruhn-Greiner Maximum of Uranium Fission for Confirmation of Low Energy Nuclear Reactions LENR via a Compound Nucleus with Double Magic Numbers. J. Fusion Energy, 2007. 26: p. 349-355.

2008
Hora, H., G.H. Miley, and K. Philberth. Radiochemical Observations for Comparison of Uranium Fission with Low Energy Nuclear Reactions LENR. in American Physical Society Meeting. 2008. New Orleans.

2012
Jiang, S., et al. Neutron burst emissions from uranium deuteride and deuterium-loaded titanium. in 17th International Conference on Cold Fusion. 2012. Daejeon, Korea.

2009
Miley, G.H., et al., Radiochemical Comparisons on Low Energy Nuclear Reactions and Uranium, in Low-Energy Nuclear Reactions and New Energy Technologies Sourcebook Volume 2. 2009, American Chemical Society: Washington DC. p. 235-252.

1998
Monti, R.A. Nuclear Transmutation Processes of Lead, Silver, Thorium, Uranium. in The Seventh International Conference on Cold Fusion. 1998. Vancouver, Canada: ENECO, Inc., Salt Lake City, UT.

2 件のコメント:

  1. 中国の物理学レター誌に論文が出ているようです。

    Jiang Song-Sheng et al 2012 Chinese Phys. Lett. 29 112501
    Anomalous Neutron Burst Emissions in Deuterium-Loaded Metals: Nuclear Reaction at Normal Temperature
    http://www.lenr-forum.com/showthread.php?749-Anomalous-Neutron-Burst-Emissions-in-Deuterium-Loaded-Metals

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  2. ネメシス (nemesis3112011)2014年4月2日 4:26

    初めまして。ネメシスと申します。

    私の拙い訳の動画をご紹介頂きまして、
    どうもありがとうございました。

    自分は昔、一応理系を目指したものの、途中で挫折した者でして、
    そうかといって語学や翻訳などの専門家でもなく、
    本当に全くの趣味でやっているだけの素人です。

    御覧になられてお分かりのように、
    途中の「量子論」の部分などグダグダで、
    理論はもとより、正直言って、単語ひとつを取ってみても、
    どうやって訳したら良いのか解らないといった感じでした。

    まあ、この部分だけ省くという選択肢もありましたが、
    この動画の内容の社会的な重要性を考えると、
    解らない部分は正直にそのまま提示し、
    識者の添削を受けたほうが、視聴者の為になるのではと思い、
    恥ずかしながら、あの様な形でのアップロードとなりました。


    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    リチャード・コシミズ氏の陰謀論には、賛否両論ありますが、
    私は彼の言説、すべてをそのまま信じている訳ではありません。
    しかし大筋のところでは、かなり本質を突いているのではと思っています。
    (つまりいわゆる根本的なところでの「ユダヤ陰謀論」として・・・)

    まあ、彼のトレードマークともいえる 「純粋水爆」、
    つまり WTCビルの崩壊に使われたとされるレーザー起爆による水爆は、
    その存在を確認出来るだけの具体的な証拠は
    自分としては、正直言ってまだ掴めてはいません。

    しかし、ビルの建材のパウダー化や、
    事件後、何ヶ月もの間存在した地下の溶解した鉄のプールなどから、
    核兵器の使用は疑いようも無く、その裏付けの「証拠探し」の途中で、
    この常温核融合の動画にぶち当たったのです。

    この中で、デル・ジュディチェ博士が、
    「常温核融合に伴って起こる核分裂では、(プライマリーの)
    放射性降下物が殆ど出ない・・・」と仰るのを初めて聴いた時、
    「な、なんだってー!」と思わず文字通り、叫んでしまいました。

    これこそが、長い間捜し求めていた、
    あの不可解なビル崩壊を説明出来る明快な回答だと思ったからです。

    もちろんリチャード・コシミズ氏の、あの「頑固な」性格からして、
    この自分の説が、そう簡単に取り入れられるとは思っていませんが、
    まあ、彼の「クリーンな核兵器」という説が最初に前提として在ったからこそ
    辿り付けたものとして、彼には本当に感謝しています。

    ということですので、まあ、そこのところはお互いに、
    自分の信じるところで宜しいのではないかと・・・


    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    さて、動画は一般市民や読者を対象とした講演会の録画ですので、
    言葉遣いや喩え話も、ごく平凡で判り易く
    (だからこそ自分のような素人にも、ある程度、翻訳出来たわけですが)
    仰るとおり、論文などの客観的資料に欠けているのは事実です。

    自分は今申したとおり、この分野の素人ですし、
    英語に至ってはイタリア語よりも遥かに下手糞ですし、
    あまり有効な手助けは出来ないかも知れませんが、
    一応、この「握り潰された 『41番報告書』 (pdf)」を挙げておきます。

    というのは、いまだに「再現性がどーのこーの・・・」といった批判が
    常温核融合関連動画のコメント欄などで見受けられるからです。
    その他、かなり古い映像なのですが、
    常温核融合の黎明期に於ける歴史的な記録映像と言う意味でも
    これらの映像を挙げておきます。

    「あー、あのフライシュマンが喋ったり動いたりしている!」
    「プレパラータ教授って、こういう喋り方してたんだ・・・」


    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    97年頃のイタリアにおける常温核融合研究の実態 (1997年放送)

    REPORT (24.09.1997) ''TROPPO BELLO PER ESSERE VERO'' (伊語)
     http://www.report.rai.it/dl/Report/puntata/ContentItem-888554f8-73be-4e45-8ef4-08dbefd05f95.html#

    フライシュマン博士が、南仏にあった
    トヨタの子会社の研究施設からの研究契約から離れ、
    ミラノのプレパラータやデル・ジュディチェたちと共に、
    再び基礎研究をしていた頃の映像。


    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    イタリアに於ける常温核融合研究の顛末
     -隠蔽されたENEAチームの研究成果「41番報告書」- (2006年放送)

    Report 41 (19 ottobre 2006) (英語)
     http://www.rainews24.it/ran24/inchieste/19102006_rapporto41-eng.asp
     http://www.rainews24.it/ran24/inchieste/video/18102006_rapporto41_eng.wmv ←動画

    Il Rapporto quarantuno (19 october 2006) (伊語:元ページ)
     http://www.rainews24.it/ran24/inchieste/19102006_rapporto41.asp


    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    握り潰された 「41番報告書 (pdf)」
     EXPERIMENTAL EVIDENCE OF 4HE PRODUCTION IN A COLD FUSION EXPERIMENT (Report 41)
     http://www.rainews.it/ran24/inchieste/documenti/Fusione_Fredda.pdf

    イタリアのENEA(新技術エネルギー環境機関 )の
    研究チームが行った、常温核融合に関する研究論文。
    ここで彼らは2002年の段階で、
    常温核融合が本物であることを証明し、
    その追試(再現)の為の条件を明らかにした。
    しかし、その成果は無視され、
    論文が学会誌に発表されることもなかった。


    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    あ、そうそう、
    以前、私の連絡先を探されていたそうですね。
    遅くなってしまい、申し訳ありません。
    まだ御必要とあらば、こちらのアドレスにご連絡ください。

    nemesis311@live.it

    ただ、ときおり時期によっては(特に夏季など)、
    インターネット回線に繋ぐ電話代すら捻出できない月もあり、
    2~3ヶ月、音信普通になることもありますが、
    その時はご容赦をお願いいたします。

    ではまた。


    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    P.S.
    もしかしたら、多分、もう御存知かもしれませんが、
    エミーリオ・デル・ジュディチェ教授は、去る1月31日に
    亡くなられていたそうです。
    自分は全然知らなくて、(ちなみに家にはTVが無いもので)
    つい最近になって客から聞かされてびっくりしました。
    本当に残念です・・・

    最近の彼は、凝集性量子論(?)を
    「水の記憶」に代表されるホメオパシーなど他の分野にも拡げ、
    彼独特の人柄も相まって、多方面から慕われていたようです。
    合掌・・・

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