問題は、原発をなくした後、代替となるエネルギー源をどう確保できるかです。しかし、3〜4年先を考えれば、この問題に対する答えは明らかです〜常温核融合技術がその答えです。
常温核融合は少量の燃料(水素やニッケル)から多量のエネルギーを取り出せます。この性質は、従来の原子力(核分裂・核融合)と同じですが、有害な核廃棄物や中性子線は発生せず、発熱モジュールを小型化できる点が今までとは全く異なります。常温核融合技術の登場で、エネルギーコストが従来の十分の一以下に下がり、どの国でも燃料を得られる状態になれば、我々の世界は今とは全く違ったものになるでしょう。
日本にとって問題なのは常温核融合が認知されるまでのこの1〜2年だと思います。常温核融合が認知されれば、それだけで原油の価格は下がるでしょう。なぜなら、誰も石油の枯渇を心配しなくなり、いずれE-Catと同程度のコスト競争力を持つ価格に下がると購買者が期待するからです。一日でも早い認知拡大が日本の国益にもかなうのではないでしょうか。
常温核融合は、今では、低エネルギー核反応(LENR: Low Energy Nuclear Reactions)や凝集系核科学(Condensed Matter Nuclear Science)と呼ばれています。
1989年に、マーティン・フライシュマン博士とスタンレー・ポンズ博士が、この現象を発見したと発表しましたが、追試の失敗が続いたことから発見は間違いだったというのが一般的な見解となりました。
しかし、この不思議な現象に魅せられた一部の科学者(日本・米国・イタリア・ロシア等)は研究を続け、実験の再現性や理論仮説の精度を高めてきました。今日では3000本以上の論文・レポート等が集積され、 研究者の間では「常温核融合現象に定性的な再現性はある」とされています。日本でも高橋亮人博士、小島英夫博士、水野忠彦博士、荒田吉明博士、北村晃博士など著名な研究者が活躍されており、工学社から書籍も発刊されています。
とはいえ、2010年末までは、まだまだ実験室レベルで再現性を検証している状況でした。ところが、2011年1月に米国在住のイタリア人エンジニアであるアンドレア・ロッシ氏が、ニッケルと水素を反応させる常温核融合装置「E-Cat」のデモをイタリアのボローニャ大学で行ったことで状況は大きく変わりました。これは数キロワット以上の熱を発生できる「実用的な」常温核融合装置だったのです。
ロッシ氏は、2012年末には家庭用のヒーターとして商用化し、大量に販売すると宣言しています。ギリシアでは、当初ロッシ氏と提携していたデフカリオン社が同じ方式に基づくと思われるHyperionという名前の常温核融合装置を商用化しようとしています。他にもライバル企業が現れる兆しも出てきています。
ECATの公式ホームページである http://ecat.com/ に今冬発売開始予定のECAT Homeの開発状況が公開されています。少し抜粋して紹介します。
http://ecat.com/news/andrea-rossi-ecat-march-update
- ロッシ氏は家庭用のECAT Homeを新しいデザインで再設計しており、大きさは33cm x 33cm x 6cmで縦置きも横置きも可能。重量は10 kg。
- ECAT Homeは、2つの単純な接続インターフェースを持っている:水の入力と出力だ。入力エネルギー(電力)の6倍のエネルギー(熱)を取り出せる。
- 法律に従い購入者は満足しなければ60日間は返品できる。レオナルド社は法律で要求される保証を提供する。
- 建設中の新工場の生産能力は、年間100万台である。
- 水素のための容器は不要になった。安全上の理由から水素は固形材の中に格納される。
- UL認証を取得中。
- 放射線はECATの外部では検出されていない。
- ECATの販売ライセンスは既にライセンシーに提供されているが、まだ公開していない。いずれライセンシーの全ネットワークを公開する予定。
また、E-Catは1MWの熱を発生するプラントを既に商品化して、昨年11月末に初出荷しています(ロッシ氏によると)。このプラントは52台の小型E-Catを1台のコンテナに集積したもので、その写真が以下に公開されています。既に軍事関係の顧客から10台以上の追加注文を受けていると言われています。
http://ecat.com/ecat-products/ecat-1-mw
ギリシアのデフカリオン社は、より詳しい情報を提供しています。以下がHyperionのプレ商用版のデータシートで、昨年11月にデフカリオン社のホームページに公開されました。
http://www.defkalion-energy.com/files/HyperionSpecsSheetNovember2011.pdf
HYPERION KW SERIES SPECIFICATION DATA SHEET- PRELIMINARY
以下、このスペック表からの抜粋です。1モジュールで5kWの発熱を行い、温度は185〜285度。効率は25倍以上で、燃料交換は半年に一回といった大まかな仕様が読み取れます。
Thermal source: Chemically Assisted Low Energy Nuclear Reaction (CALENuR) Ni-H
Thermal power (measured at external heat exchanger outlet)
- Range: 5-11kW
- Max Output temperatures (measured at external heat
- exchanger outlet)
- Series A: 285度
- Series C: 185度
- Hyperion Weight ≈19,5 kg
- Maximum electric energy consumption per hour at ON
- mode <200Wh
- Hydrogen can recharge every 6 months
- Powders renewal every 6 months
- COP Better than 1:25
残念ながら、Hyperionについては、まだ公開実験や第三者検証が実施されたことがありません。要は実働することが証明されていないのです。これに対して、デフカリオン社は去る1月23日に第三者検証者を公募すると発表しました。プレスリリースは以下にあります。
http://www.defkalion-energy.com/files/2012-01-23_Independent_Testing_on_Hyperion_Reactors.pdf
この後、Pure Energy Systems NetworkをやっているSterling Allanさんのデフカリオン社訪問記事が掲載されました。
http://pesn.com/2012/02/13/9602039_Hope_from_Athens_found_in_Cold_Fusion/
この記事でデフカリオン社の言葉を伝えているのですが、それによると、先ほどの第三者検証では少なくとも7つの組織が検証を予定しているとのこと。最初の18社とのライセンス契約を近々発表予定で、ライセンスコストは40.5Mユーロ(約40億円)だとも言っています。ライセンス契約を結んだ会社は年間30万台のユニットを生産する工場を設立する所が多いそうです。
更に、デフカリオン社はこの第三者検証を2月24日から開始し、一番手はギリシア政府とも言っていました。その後、とてもポジティブな結果を得たとの速報が2月28日にフォーラムに投稿されました。
http://www.e-catworld.com/2012/02/defkalion-reports-successful-conclusion-of-tests-with-government-officials/
残念ながら、その後、デフカリオン社はフォーラムでの情報発信をやめ、正式な広報のみにすると宣言。他のグループによる第三者検証が続いている筈ですが、残念ながら、その後の情報は得られていません。
デフカリオン社の言葉を信じるならば、この強烈なコストパフォーマンスを持った発熱装置の生産ラインが世界中に揃いつつあることになります。
常温核融合が実現されれば、我々の社会や生活に大きな変革が訪れます。本当に変革は始まるのか否か、認識を深めたいと思う方は是非調べてみてください。
【参考文献】
http://www.lenr-canr.org/BookBlurb.htm
http://lenr-canr.org/acrobat/RothwellJmiraiokizu.pdf
未来を築く常温核融合
Jed Rothwell著
常温核融合関連論文の図書館とも言うべき http://www.lenr-canr.org/ を管理されているJed Rothwellさんによる常温核融合の解説書です。常温核融合を知る上では必読書といえるでしょう。
http://jcfrs.org/file/CFfrontier2011.pdf
常温核融合フロンティア 2011
高橋 亮人(大阪大学名誉教授、(株)テクノバ)著
常温核融合研究全体の最新状況を専門的に解説した本です。非常に専門的で難しい内容ですが、素人にも雰囲気は味わえるかと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=-j2dLk4g5ZY&cc_load_policy=1
常温核融合がもたらす5つの利点を簡潔にまとめた動画に日本語字幕をつけました。科学技術の話題よりも、その社会的な影響に重点があります。
http://www.facebook.com/groups/209258969132018/
Facebookの「常温核融合グループ」です。素人が集まって議論していますので、興味のある方は是非ご参加ください。
以上