2010年8月8日日曜日

常温核融合を騙るビジネス

Twitterで常温核融合関連のツイートを見ていて気が付きました。
柳田ファームのホームページにて、高嶋康豪氏が8月7日(土)に新潟県三条市で講演会を開くと告知されています。【2010-08-09追記】この講演会の模様は、「神流アトリエ日記(3) 微生物の世紀」に詳しくレポートされています。【追記終り】



この記事の中に以下のような記述があります。


■引用開始(赤字は引用者による)
【高嶋科学の真実】
複合発酵プラントでは、夢の物理学・常温核分裂・核融合・超伝導が行われており物質が消失しています。この科学を導入することにより、汚泥処理に要する費用が不要になると同時に、汚泥処理汚泥処分時に発生する二酸化炭素の大幅な消滅が図れ地球温暖化防止にも大きく貢献します。
しかも汚泥消失後の処理水は自然回帰を呼び起こし、多くの種類の生命が復活する、真に奇跡の水となります。
今回のプラントは従来の活性汚泥槽をそのまま利用した。どこの行政も取り組みやすい画期的方法なのです。皆様一日も早く貴方の市町村でこの方法のプラントを導入する事をお奨めするものです。
■引用終了

あたかも、常温核融合を応用してこの複合発酵プラントが作られているかのように記載されていますが、常温核融合分野の研究者として高嶋康豪氏の名前を見たことがありません。また、常温核融合がこのような形で実用化されたというニュースも聞いたことがありません。
おそらく、常温核融合の名前を単に借用して、素人に対して箔付けをして見せているだけでしょう。全く信用できません。

ちなみに、株式会社 地球環境秀明(ちきゅうかんきょうひでみつ)のホームページによると、高嶋康豪氏は、この会社の代表取締役のようです。



この企業名で検索して見つけた以下のニュースによると、高嶋康豪氏は今年2月に不法廃棄で逮捕されています。


■引用開始
油含んだ汚水を不法廃棄 産廃会社社長を逮捕 静岡県警
2010.2.11 16:43
油を含んだ工場排水を不法に下水道に捨てたとして、静岡県警沼津署は11日、廃棄物処理法違反容疑で、産廃処理会社「地球環境秀明」の社長、高嶋康豪容疑者(58)=同県沼津市=を逮捕した。
同署の調べによると、高嶋容疑者は同社社員ら3人と共謀し、昨年5月28日から6月25日の間、3回にわたり、岐阜市内の工業用ふきん洗浄工場から出た排水を、公共汚水槽に捨てた疑いが持たれている。
同署は今月8日、同社社員ら3人を逮捕。高嶋容疑者は11日朝、同署へ出頭した。会社ぐるみで不法投棄を繰り返していたとみて詳しく調べる。
■引用終了

また、以下のページには、高嶋康豪氏の履歴の中に世界初の環境微生物学博士の博士号をケンジントン大学から授与されたとの記載があるが、このケンジントン(ケンシントン)大学はディプロマミル(学位称号販売機関)だという指摘が載っています。このケンシントン大学は、ハワイ州政府に起訴され2003年に裁判所から閉鎖命令を受けています。これらの情報からも、高嶋康豪氏が常温核融合技術を使っているという主張は全く信用ならないものと考えます。

http://degreemill.exblog.jp/10759547/

国際学士院名誉博士号フェロー、ケンシントン大学認定境微生物学博士、逮捕さる



【2010-08-09追記】

「社団法人 全国水利用設備環境衛生協会」の「水に関するニュース&情報」のページに、「下水道に汚泥流す―「地球環境秀明」社員ら3人逮捕/静岡」という毎日新聞の記事が掲載されていました。これを読むと、もう少し詳しい事情が分かります。



■引用開始(赤字は引用者による)
逮捕容疑は、09年5月28日~6月25日にかけ計3回、清水町八幡にある秀明の営業所内にあるマンホールから汚泥を下水道に流したとしている。県警によると、3人のうち2人の容疑者は容疑を認めているという。
同課によると、秀明は浄化設備を岐阜県内の工場に納入したが、うまく機能せず、引き取った汚泥の処理に困り、下水道に流したとみている。この工場を経営する会社は「5年前に浄化設備の設置を依頼したが、契約通りの処理能力がなかった。裁判で損害賠償を求めている」と話したという。
■引用終了

技術を特長にしている筈なのに所定の処理能力も発揮できていないようです。

以下の記事によると、地球環境秀明の複合発酵技術を使った汚水処理プラントが兵庫県養父市の八鹿浄化センターに今年の1月から稼働しているそうです。使われている技術の説明が信用ならないのはともかく、バイオ式トイレでは実績もあるようなので、それなりに動作はするのだと思います。とはいえ、上述のような逮捕の容疑を知ると、うまく動くのかどうか心配ですね。


ちなみに、このプラントの導入にあたっては、養父市議会の会議録の「2009.09.17 : 平成21年第36回定例会(第6日) 本文」に以下のような議論が記録されています。


■引用開始(赤字は引用者による)
◯産建環境常任委員会委員長(竹浦 昭男) それでは、産建環境常任委員会の委員会審査の報告を朗読をもって報告といたします。
平成21年9月17日。
養父市議会議長、北尾行雄様。
産建環境常任委員会委員長、竹浦昭男。
委員会審査報告書。
平成21年9月1日、本委員会に付託された事件は、審査の結果、下記のとおり決定したので、会議規則第101条の規定により報告いたします。
記。
1、審査年月日。平成21年9月4日(金曜日)。
2、審査結果。議案番号、事件名、審査結果の順番に申し上げます。
議案第115号、八鹿浄化センター複合発酵増殖プラントの取得について、原案可決すべきものであります。
1ページめくっていただきまして、別紙であります。
産建環境常任委員会の審議内容等報告書を報告させていただきます。
議案第115号、八鹿浄化センター複合発酵増殖プラントの取得について。
増殖プラントは、1社だけしかやっていないということなのかという質問に対しまして、当局から、「今回購入しようとしている株式会社地球環境秀明の複合発酵増殖プラントというものは日本に1つしかない」という答弁でありました。
2番目に、保証期間は15年との説明であったが、汚泥がゼロに近づかなかった場合はだれが責任をとるのか。当局の答弁であります。「保証期間、耐用年数は15年となっている。最終的には、株式会社地球環境秀明が責任をとる」という答弁でありました。
3番目に、ある程度の試用期間をおいて、確証を得てから契約するべきものであり、安易に考えているのではないかという質問であります。これに対して当局は、「既に、長野県や静岡県の処理場で実証されている。今回のプラントを導入することにより、これまでかかった年間平均1,300万円の汚泥処理経費が、トータルで考えると1,000万円近く節約できる。安易な考えではなく、一般会計からの繰り入れをいかに減らしていくかということを考えた上での導入である」という答弁でありました。
そして4つ目の質問が、今の処理場で年間1,000万円の経費がかかるのか。当局答弁は、「電気代、薬品代等を含め、概算で年間1,300万円前後ぐらいの経費が平均的に推移している。10年に一度の機械の修繕等に500万から560万円ぐらいの費用が要る。この中で汚泥の処理経費が不要となり、最低の電気代等を差し引いても年間1,000万円くらいは節約できると考えている」という答弁でありました。
さらに質問で、21年度にプラントを設置して、菌が育つまでの汚泥・汚水に関してはどのように考えているのか。「設置後、菌が成熟するまでには3カ月かかる。12月に完成して3月までの間、今までどおり発生する汚泥は通常管理の形をとる。それ以降に汚泥等が発生すれば、事業者負担、売り主の負担ということで、設計書の特記事項に明記している」。
さらに質問で、直接契約すればもっと安くなるのではないかという質問に対して、当局は、「東日本は、株式会社地球環境秀明、西日本は代理店の株式会社システムリサーチということである。直接取引でも、代理店を通しても価格的には変わりはない」という答弁でありました。
最後に出た質問で、5,670万円以外に費用はかからないのか。「3カ月の発酵菌の安定期間も含めて資材費込みであり、今年度中のものはすべて事業者、売り主の負担である。22年度以降は、資材費が発生する以外はかからない」。
以上の報告といたします。
■引用終了

【追記終り】


【追記2010-08-22】

養父市の市会議員である水野雅広氏のブログに、今年の3月18日の市議会で、複合発酵増殖プラントの諸問題についての質問が予定されている事が書かれていました。残念ながら、この会議録はまだ公開されていないようです。

http://blog.livedoor.jp/mizuno8359/archives/50392872.html
水野雅広のなんやかんやブログ

■引用開始
先日、議運が開かれ17日、18日の一般質問の順番が決まりましたので、通告項目と合わせて報告します。
《中略》
3月18日です。
 7.西田雄一議員
   ・八鹿浄水化センター複合発酵増殖プラントの諸問題について
   ・22年度、市長市政方針について
■引用終了

また、「ネットゲリラ」の中に本件に関する詳しい記事が出ていました。

http://shadow-city.blogzine.jp/net/2010/02/post_9f4f.html
ネットゲリラ
2010/02/12 バクテリアと汚水の浄化について

【追記終了】


以上

JCMNS Vol.3 発行される

常温核融合は本当だった! その14」で知りました。

凝集体核科学国際学会」(ISCMNS)が発行する査読付きの論文誌であるJournal of Condensed Matter Nuclear Science (JCMNS)の第3巻(Volume 3)が公開されました。JCMNSのホームページで告知されているのですが、最終行にひっそりと書いてあるだけで全く目立ってません。

以下のURLからダウンロードできます。

http://www.iscmns.org/CMNS/JCMNS-Vol3.pdf

目次は以下のようになっており、論文の方はHagelstein博士の特集号みたいな感じになってます。

LETTERS TO THE EDITOR

Comments on Codeposition Electrolysis Results
Ludwik Kowalski

Comments on Codeposition Electrolysis Results: A Response to Kowalski
P.A. Mosier-Boss, L.P.G. Forsley, F.E. Gordon

REVIEW ARTICLE

Judging the Validity of the Fleischmann and Pons Effect
E. K. Storms, T.W. Grimshaw

RESEARCH ARTICLES

Simple Parameterizations of the Deuteron-Deuteron Fusion Cross Sections
Peter L. Hagelstein

Tunneling NeutronYield for Energetic Deuterons in PdD and in D2O
Peter L. Hagelstein

Secondary NeutronYield in the Presence of Energetic Alpha Particles in PdD
Peter L. Hagelstein

On the connection between Kα X-rays and energetic alpha particles in Fleischmann-Pons experiments
Peter L. Hagelstein

Terahertz Difference Frequency Response of PdD in Two-laser Experiments
Peter L. Hagelstein, D. Letts, D. Cravens

Analysis of some experimental data from the two-laser experiment
Peter L. Hagelstein, Dennis G. Letts

以上